らすとげーむっ!えんじとですげーむ(2)
「ここは……」
ここに飛ばされた内調の五人は辺りをキョロキョロと見渡していた。
『皆様ごきげんよう!このゲームの司会進行を務めさせていただきます。アイと申します。よろしくお願いします!』
その声は
『まず最初にご説明します。このゲームには観戦者がおられます。皆さまからはお見えできないと思いますが
話を聞いてやる気を出す園児たち五人。
『ではゲームの説明を始めます。このゲームは五人VS五人でおこなわれる一対一のチームバトルです。ゲーム内容は今回のゲームに参加する参加者各自一人一人に決めてもらい、その中からくじで選ばれたゲームを二人で行い最終的に多く勝利を勝ち取ったチームの勝ちというゲームです。では皆様に一枚の紙を配ります。皆さまはその紙に自分の行いたいゲームをお書きください。書き終わりましたらその紙を破り捨てることでゲーム確定とさせていただきます。』
各々は各自貰った紙に自分がしたいゲームまたはチームに有利なゲームを書いていく。園児たち五人は早々に書き上げて全員破り捨てている。
それに比べて内調の五人はゲームというものが中々思いつかず悩んでいる。それもそのはずこの五人は仕事一筋で遊びなどをここ最近できていなかったがため全然思いつかないでいる。
それを見かねてか、アイが制限時間を設ける形となったため急いで書いて破り捨てていた。
『では、準備が整いましたのでゲームを始めさせていただきたいと思います。今から各陣営を陣地エリアまで飛ばします。酔いなどの症状が出る恐れがありますのでジャンプの際は目をつぶってください。』
そのアイの言葉に続き各参加者の体が光りだしたため各々目をつぶりジャンプに備えた。
『ジャンプが完了しました。今いるそこが皆様の陣地エリアです。』
アイの完了の合図を聞いて目を開ける一同。そこにあったのはソファーや椅子や机、菓子類と一際目立つ青い円がある部屋へと飛ばされた。
『皆様の一番の疑問であろうこの青い円は参加者をゲーム会場へ飛ばすためのワープリングです。ゲームに参加する参加者を一人決めそこに立ってもらえればゲーム会場へご案内させていただきます。またゲームの観戦はワープリングの反対側の巨大スクリーンに放映しますのでそちらからご観戦ください。ここまででご質問などがございましたらお聞きください。その場で発言してくれればお答えします。』
アイの発言を聞いて
「このえんにふたりはいったらどうなるんだ?」
『ただいま鉄平様からご質問ありました、円に二人で入った場合ですね。もちろん可能です。ただし参加者のゲーム参加回数は一回です。もし参加者がいないゲームでは不戦勝で相手の勝利となりますので複数参加はよく考えて行ってください。』
「私からもいいですか?」
『黒川様ですね、どうぞ。』
「今回のゲームはデスゲームなのですか?」
『ただいま黒川様からこのゲームはデスゲームなのかとの確認が入りましたが答えはそうです。計五回のゲームを行いますが五回の内の敗者には重い罰、死が確定します。』
そのアイの発言に内調の三人が騒ぎ出す。
「ど、どういうことですか?」
「デスゲームって、死ぬって聞いてませんよ!?」
「部長そんな話聞いていません!違いますよね!?」
部長に当たるように話す三人。それを
「そんな話聞いてないだ~?この部署に配属された時から死ぬときは死ぬってわかり切ってたことだろう。それにもう参加しちまったんだから覚悟を決めろ!もう退路は断たれているんだぞ」
「お、横暴だ!」
「そうだ!そうだ!」
「生きて帰れたら給料上げてくださいよ!」
「子供みたいなことを言うな!それと給料アップの件は帰ったら考えてやる。」
「わーい!」
「おっし!お前ら頑張るぞ!」
「「「おー!!」」」
「調子のいい奴ら目……」
『他にご質問などはございますでしょうか?―――特に無さそうですので質問の時間は終了としますね。一応ゲーム中などにご質問がございましたら随時お受けできますのでお聞きください。それでは最初のゲーム参加者をお決めください。時間は五分ほどお与えします。』
最初のゲーム参加者を誰にするのかで内調は少しもめていた。
「どうしますか?相手はこのゲームを知り尽くした子供たち、対して我々は子供心を忘れてしまった醜い大人。最初のゲームは負けちゃう率高すぎませんか?」
「変な言い方するなよな。でも相手は子供だぜ?大の大人に勝てる通りなんてあるのかよ?」
「じゃあお前が行けよ。俺は一番最初なんて絶対に嫌だぜ。」
「おお、いいぜ。俺が行ってやるよ。」
「おい
「へいへい、わかってますよ部長。子供相手だからって手加減なんて一切しませんよ。」
「でもこっちが勝っちゃうとあの子たちの誰かが死んじゃうことになりますよね?」
「おい!黒川止めろ!やっとやる気を出した謙吾を思いとどまらせるような発言をするんじゃねえ」
「あ、ごめんなさい。」
黒川の発言を長谷川は止めるが一足遅かった。謙吾をうつむき暗い顔をしている。
「そうだった、そのことをすっかり忘れていた……てか部長ひどすぎませんか?そのことを俺に伝えないの!もし俺が気持ちよく勝って目の前で子供が死んだとかなったら罪悪感で自殺ものですよ?」
「悪い悪い。ただ黒川の話を聞いた限りではここで死んでも戻れば全員何もなかった状態に戻るっていう話だからお前は何も考えず勝ちに行け!自分の命のことだけ考えておけ!」
「……わかりました。行ってきます。」
そう言って謙吾はワープリングの上に立とうとした時だった。
「あ、謙吾さん待ってください!」
「どうしたの?百合ちゃん」
「もしも敵があの園児たちではない場合、私たちの武器も術も一切通用しないものと考えてください!!」
「え?どういうこと?」
「その、私もあまりわかっていないのですがもしゲームのルール説明で例えばおにごっこで園児ではなく鬼は別にいた場合逃げてください!絶対!」
「鬼が別の場合?何かわからんがまあわかったよ。」
「絶対ですよ!武器も術も鬼には通用しないですからね!」
「わかったって。」
黒川の言葉に呆れながらリングの上に立つ。
『出場者が決まりました。ただいまより転送を開始します。』
ジャンプが終わり目を開けた謙吾の目の前に広がっていたのは一面の森林地帯だった。
「なんじゃこりゃ……?これが
『転送が無事完了したためただいまより第一ゲームかくれんぼを始めたいと思います。』
「かくれんぼ……?」
『かくれんぼのルール説明を始めます。フィールドはこの森林地帯、鬼はこちらが用意します。参加者の皆様は鬼に見つからないように隠れてください。見つかって鬼に殺されてしまった場合敗北とします。制限時間はございません。どちらかが死ぬまでゲームは続行とします。また鬼に攻撃はできませんのでご理解ください。ご質問などはございますでしょうか?』
謙吾が手を上げてアイに質問する。
「はい、聞きたいんだけど俺の対戦相手は誰なんだよ?」
『対戦相手はこちらの
そう言ってアイはテレビの画面のようなものを謙吾の前に出し彩香のリアルタイム映像を映し出す。向こうの彩香にも謙吾のリアルタイム映像が流れている。
「これ、このお嬢ちゃんとお話しすることはできないか?」
『できますよ。回線を繋げます。……繋がりました。』
そうアイが言うとリアルタイム映像の横にマイクアイコンが表示された。
「あ、あ~聞こえるかな?胡桃ちゃん?」
話かけると画面の向こうでビクンッ!と体を強張らせてキョロキョロする彩香が見えた。
「あ~えっとこっちこっち。この画面!」
「あ、えっと……」
「ごめんね。怖がらせちゃって!それでね提案したいことがあるんだけどこのゲームを棄権してくれないかな?」
「き、けん……?」
「そ、棄権。自分から負けを認めてほしんだよね。」
「……い、やです。」
「大丈夫だから!この僕が君を死なせないように守ると約束するよ。このゲームは殺されることが前提のゲームになっている。だから君を死なせたくないんだ!今君がここで棄権してくれれば君の命は助かるんだよ!?」
「ご、ごめん……なさい……。」
その一言を残して画面がプツンっと消えた。
「くそ!説得はダメだったか。鬼がどんなのかはわからないが子供が死ぬのは後味悪すぎるからな……探しに行くか……アイ質問なんだが対戦相手の子の場所を知る方法はあるのか?」
『ございません。合流を考えていらっしゃるのなら自力での捜索をお願いします。ただし警告です。これはゲームかくれんぼです。隠れずにいるとすぐに鬼に見つかってしまいますよ?』
「へいへ~い、わかりましたよ。」
『……それでは五分の隠れる時間を与えますので各々隠れてください。右手に残り時間を表すタイマーをつけましたのでご確認ください。』
そう言ってアイの声は消えた。右手の手のひらを見ると光るタイマーが手についており、五分のカウントダウンを始めている。ただ謙吾は気にすることもなく隠れずに彩香を探し回っている。
「全然いねえな~」
五分間探し回ってはいたのだが全然発見できない謙吾。そしてとうとうタイマーが残り十秒を切った時アイのカウントダウンが始まった。
『カウントダウン五秒前、四、三、二、一……ゲームスタートです。』
スタートの合図がかかり、ゲームは始まったが謙吾はまだ彩香を探していた。
「あやかちゃ~ん!どこに隠れているのか、教えてくれないかな~!!」
……
「う~ん、返事は無しか~そこに隠れたんだか……」
はあ、とため息をつきながらも再び彩香のことを探そうとした時自分を囲むようにして周囲から一斉に視線が向けられた。
「……ッ!?」
バッと急いで腰にある拳銃を抜き取り構える。
視線がする方向に銃口を向けていくが視線の正体もつかめないし木に隠れるにしてもこの視線の数は以上だ。
何なんだ。何が起きている……
警戒を強めていると複数の視線が一瞬で消え静寂が訪れたのだ。
何なんだ、このとてつもない嫌な気配は……
気配を探り頭を動かさず視線だけで敵を探っている時だった。ガサガサガサと上の木々が大きく揺れバッ!と拳銃と共に上を見上げた。
「……ッ!?」
そこにいたのは木の上でぶら下がったりしている石オノのようなものを手に持ったサルの群れが目を光らせてこちらを見ていた。
「な、に……。」
サルの数は数十以上いる。
これは……やばい……!
本能でそれを感じた謙吾は急いで来た道を全速で走って戻る。
サルは逃がさないと言わんばかりに木々をつたい謙吾との距離をどんどん詰めていく。
「はあ……はあ……はあ……くそっ!!」
パンッ!乾いた銃声が森林に木霊する。
威嚇射撃で一発サルの群れにお見舞いした。ただ、それは時間稼ぎどころか開戦の合図を知らせるための発砲となってしまった。
サルどもは右手に持っていた石オノを謙吾に向かって投げ飛ばしていく。
「くっ!くそっ!このままじゃやべえ!!」
謙吾はもう一発、今度はサルの脳天をぶち抜くために狙いを定めて発砲した。
パンッ!乾いた銃声は聞こえるがサルどもの悲鳴も死体が落ちてくることもなかった。
「外したのか!?」
謙吾は信じられない、といった顔で引き続き今度は三発撃ち込んだ。
結果は当たらなかった。いや、当たったであろう弾はサルの肉体をえぐることもなくそこには元から何もなかったかのように貫通した。
「おいおいおい!まじでどうなっているんだよ!!??」
ここで黒川の言葉を謙吾は思い出した。
(謙吾さん!鬼には、私たちの武器も術も一切通用しないものと考えてください!!)
通用しないってこういうことかよ!
謙吾はとにかく走った。その間もサルからの強襲は止まることなく続いている。木の上からサルが降ってきて攻撃してくるサルまで現れた。
そしてとうとうその時が来た。
謙吾は必死にかわしてはいたがサルたちもただ闇雲に襲っていたのではなく特定の場所まで誘導された。
謙吾はそれに足を踏み入れた瞬間に気づいたのだ。地面がぬかるみそこに足を踏み入れた瞬間底なし沼のように足がどんどん飲み込まれていきもう靴は見えていないということを。
「な!?」
逃げ出そうと足を動かすたびどんどん沼底に沈んでいく。
そして岸にはサルが大量にこちらを見て笑っていた。
「くそー!死にやがれ!くそ猿どもが!」
残っていた弾をすべて打ち込むがすべてサルを貫通して後ろの木々に当たる。
「ちくしょう。」
その言葉を最後に謙吾は沼底に沈んでいき五分後ゲーム終了の宣言がアイから告げられた。
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