ろくわめっ!さつじんきからにげろっ!(2)
「ぬお~!!ぬけだせない~!!どうなってるんだ~!?」
文也が転移した場所は運が悪かったのか非常用シャッターがある窪みに挟まる形で転移しておりそこから抜け出すため体を右に左にと曲げながら脱出を試みているが中々抜け出せずにいた。
「くそ~!いまおにがきたらやばいっ!ぜったいころされる~!」
う~ん、う~んと唯一出ている手を使い壁を押して出ようとするが中々出られない。
「まじでどうしよう……だれかちかくにいないのかな……?」
開始の合図から三分ほどずっと壁と格闘していたため疲れて力が抜け壁にぶら下がっている状態になっている。
「だれか~たすけてくれ~!」
助けを呼んでみたが誰かくる気配はない。はあ~とため息をついてまた壁と格闘しようと両手に力を入れようとしたとき聞こえた。ギ―ギ―という金属を擦る音と足音、文也は本能的に悟った、鬼であると。
(やばい!やばい!!やばい!!!どうしよう、どうしよう、かくれられないしにげられないしてかでられないし!どうしよう!)
文也は焦りでその場から何とか出ようと試みるがびくともしない。
その間も鬼の足音は徐々に徐々に近づいてきている。そしてついに耳元近くまで鬼の足音が近づいてきたため文也は両手で口を押えて息を殺した。
ギ―ギ―。文也の視界真横に長包丁を引きずる鬼が現れたとき心臓の音で周りの音が聞こえないくらいうるさくなっていた。
(しんぞううるさいっ!おねがい!とおりすぎて!)
文也は自分の心臓の音を聞きながら願った。バクンッバクンッバクンッ心臓の鼓動が激しくなりその音で見つかってしまうのではないか。そう考えもしたが鬼は文也に気づくこともなくその場をゆっくり歩いて通り過ぎていった。
鬼の足音が完全に消えたとき文也は大きく息を吐き安堵した。
「はああぁぁぁ~~!!!たすか~た~!!ぜったいしんだとおもった!ほんとうにいきてる~!」
若干涙目ながらも助かったことに安堵して肩の力を抜く。張りつめていた空気が和らぐのを文也は肌で感じていた。
コツコツコツ右側で階段を下りてくる音がする。
緊張が解けてすぐの出来事に顔を強張らせる。
(またおにか!?これはぜったいはちあわせする!!や、やばい!)
文也はまた壁を押して抜け出そうとするがやはりびくともしない。
もう無理だと悟った文也は先ほどと同じように両手で口をふさいでなるべく見つからないように静かにした。
コツコツコツ、ただ下りてきた人物の声は聞き覚えのある声だった。
「あら~ふみやくん、そんなところでなにをしているのですか~?」
「く、くるみ!よかった~」
「ほんとうになにがあったのですか~それにうまってませんか~?」
「えっとじつは――――」
「ぬけないのですか……すこしこちらからもひっぱってみましょうか~」
そう言うと胡桃は文也の脇に両手を回し思いっきり引っ張った。
「いったたたたた―――!!!いたい!いたい!いたい!」
「う~ん?ぬけませんね~」
「やっぱりだめか~どうにかしてぬけないかな~」
二人でう~んと唸りながらどう出るか考えているといつも開始の合図などで聞く機械音音声が文也たちに話しかけてきた。
『文也様申し訳ございません。こちらのミスでそこから動けないバグのようなものが発生しておりました。』
「ば、ぐ?てのはわからないけどぬけだせるの?」
『ええ、すぐに実行しますね。』
そういうと挟まっていた空間が文也を中心に円状にポッコリと穴が開いて文也が顔から落下した。
「いったい~!!!もうちょっとやさしくおろしてよ!」
『申し訳ございません。では私はこれで失礼します。残り二十六分頑張ってください。』
「行ってしまいましたね~ふみやくんだいじょうぶですか?」
「だ、だいじょうぶ。」
「なみだめでいわれましてもせっとくりょくはないですね~」
「う、うるさい!」
胡桃は手を伸ばして文也を立ち上がらせる。
「ありがとう。」
「ふみやくん、ぶじでられたわけですが~これからどうしますか?」
「やっぱぶきをさがしにいくにきまってるじゃん!」
「そうですか~わたしもついて行ってもいいですか~?」
「いいよ~」
「ありがとうございます~ではまずどちらにむかいますか~?」
「う~ん?くるみはどこにありそうだとおもう?」
「そうですね~わたしはたいいくかんあたりがあやしいのではないかとおもうのですがそれはたぶんあやとくんらへんが行っているとおもうので~わたしたちはこうちょうしつあたりに行ってみませんか~?」
「こうちょうしつってどこにあるの?」
「さんかいのおくのへやだとおもいます~あるいていて、このがっこうのちずを見つけましてそこにかいてあったのでたぶんあってますよ~」
「そうなんだ!じゃあこうちょうしつ?にいこう!」
胡桃が下りてきた階段を使い上に上る二人、目指すは校長室、場所は今二人が上っている階段の一番上の階まで行き左突き当りにある。
「あ、ありましたね~あのつきあたりがこうちょうしつです~」
「あそこか!よし!いこう!くるみ!」
文也が胡桃の手を取って走り出す。
「あっ!ちょっとまってください、ふみやくん!」
「どうしたの?」
文也は手を掴んだままその場に立ち止まる。
「おとがしませんか?」
「え?おと?」
文也が耳を澄ますとギ―ギ―といういつか聞いた金属を引きずる音が聞こえた。
「こ、これ!おに……」
「いそいでかくれましょうか~」
胡桃と文也は鬼に気づかれる前に横の教室に入る。
「どこにかくれましょうか~」
「あそこのおおきいつくえのしたにかくれよう!」
「わかりました~」
二人は大きな机もとい教卓の中に身を隠す。二人とも体育座りで身を寄せる。
隠れてすぐくらいだろうから再び聞こえ出す金属を引きずる音と教室の扉を開ける音が聞こえてきた。
扉を開けてからしばらく音が消えていたためどうも各教室内を見回っているらしい。
「ここにいてだいじょうぶかな?」
「あぶないとおもったらゆっくりといどうしましょう~」
「わかった。」
小声でヒソヒソと話していると、とうとうこの教室に鬼が来た。
ガラガラガラ~トッ、トッ、トッ、教卓の隙間から鬼の靴が見える。鬼は辺りを見渡したあと、自分たちのいる教卓を無視して教室を出ていった。
「「はあ~~」」
「なんとかしのげたね。」
「ええ~しんぞうがすこしうるさかったです~」
「おれも~」
「「ははっ」」
二人でひとしきり笑うと立ち上がり教室を出た。
「だいじょうぶですか~?」
「うん。もういないかな。いまのうちにいそごう!」
「はい~」
二人で走りなんとか校長室の前にまでたどり着き扉を開けた。
そこには豪華なソファーやテーブルなどの家具。戸棚の中には資料や高級そうなカップなどがありその中でも一際豪華な校長室の机の上に銀色に輝くアタッシュケースが置いてあった。
「やっぱりありましたね~あれがやはりぶき、なのでしょうか~」
「そうだな!たぶんあれだね!みにいこう!」
二人が近づき気づいた。届かない。で、届かないので高級そうな椅子の上に二人で乗って確認するとアタッシュケースに鍵が付いていた。
「かぎ、ですね~」
「だね~……どうしよう?」
「このケースをもってあるくのはわたしたちではむりですね~ふつうにかぎをさがしましょうか~」
「そうだね~でもどこにあるんだろう?」
「う~ん、うん~?これは~」
胡桃が手に取ったのはアタッシュケースの真横に置いてあった紙だ。
そこには”鍵はとある場所三か所にある。一つ目は龍が昇る陽の中に、二つ目はゴールの上、三つ目は空に一番近い場所にある。”そう紙には漢字にルビを付け書かれていた。
「りゅうがのぼるひのなか?それにごーるのうえとそらにちかいばしょ?わ、わからん!」
「この中だとたぶんですが~わたし、りゅうがのぼるひの中にあるとかかれているかぎのありかはわかるとおもいますよ~」
「ほんと!?」
「ええ~わたしがさいしょにとばされたいっかいのおうせつしつをでたところにそのようなえがあったはずです。」
「じゃあそこにいこうか!そしてかぎをみつけてここにもどってこよう!」
「わかりました~ではいきましょうか~」
二人が一階の応接室がある場所、今いる場所がA棟なら応接室がある場所はA棟の横にあるB棟で来客者用入り口がある場所入ってすぐ横に応接室がある。そこに向かうため扉の前に立った時またあの機械音音声が学校中に響き渡る。
『ただいまを持ちまして残り制限時間が二十分になったことをご報告します。残り二十分を過ぎたため新しく鬼をもう一人追加します。この追加により鬼は二人です。頑張ってください。』
その機械音は無慈悲に鬼の追加を静かに告げた。
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