ろくわめっ!さつじんきからにげろっ!(1)
私、
この世界にはごくたまにではあるが特殊能力を持っている人たちがいる。特殊能力は生まれてすぐ持っている人もいれば普通に暮らしていていつの間にか手に入れる人もいる。その人数は極めて限られるが私たちはそう言った特殊能力を持った人たちの確認監視、そして管理を行っている。
そして私が調査している園児もまた超能力を持っていると思われている。その特殊能力とは幻術系であると言われている。
正直ここしばらく監視もとい確認作業を行っていて接触もしたのだが未だに超能力らしき現象を目撃できずにいる。ただ確認できていないだけで能力は作用している傾向があるため仮説として彼が幻覚のような能力者なのではないのかと考えた。
そして今回は思い切って彼に接触をし、能力の有無を確認する。危険度は離れて監視する以上に跳ね上がるが仕方ない。幻術系の能力は自身が受けなければわからないような能力になるため接触する以外に確認する方法がない。
これは最終手段で使いたくなかったんだけどな……
はあ、とため息をつきながらも気持ちを切り替える。
弱音はここまで!覚悟を決めろ黒川百合。
「さて、しょくん!きょうはなにしてあそぼうか?」
「おにごっこ!」
「てっぺい、それはきのうしたでしょう。」
「だからりべんじまっちだよ!ふみやとくるみにまけてくやしいんだよ!!」
「わたしはてっぺいくんをまかしたおぼえはないのですが~」
「オレはまけたとおもってるんだよ!」
「まあまあ、きょうはきのうよりすくないからそれもこうりょしてやろっ!」
今日は昨日いた女の子たちがおらずいるのはいつもの五人と男メンバーの
「にんずうはきゅうにんですか。ふつうにてっぺいくんのいけんでわたしはいいとおもいますよ~」
「おにごっこか~まあいいとおもうよ!」
「おっし!じゃありべんじまっちだぜ!」
わいわい話し合いながら今回のゲームの内容を話し合っていると一人の黒服をきた女性が
「こんにちは~キミたち今から何かして遊ぶんだよね?お姉さんも遊びに入れてくれないかな~?」
『……』
黒川が話しかけると一同は集まってヒソヒソと話し出した。
「だ、だれ?」
「さあ?ぼくはしらないです。」
「わたしもしらないですね~」
「オレもだゾ。」
「いつきたちは?」
「おれらもしらないよ。」
「しらない人にはなしかけられたときはむしをしてはなれるべきです。」
「でも、どこに?」
「おれらとあそびたいだけなんじゃないのか?」
「でもきけんすぎません?」
「きいてみようか、」
「え?」
そう言うと文也はお姉さんに近づき、
「おねえさんはおれたちとあそびたいの?」
っと首を傾げて直接聞いた。
黒川は一瞬ターゲットに話しかけられてビクッ!と体をこわばってしまったがすぐに意識を集中して話を切り出す。
「ええ、あなたたちのことはここを通るとよく見かけていたの。今はお姉さん暇だし遊んでくれないかな~と思って話しかけたの、びっくりさせちゃってごめんなさいね。」
そう話すと文也は再びみんなのところに戻ってヒソヒソと話を始める。
「ああいってるけどどうする?いれる?」
「でもですね。しらない人を入れてあそぶのはやはりあぶないかなとぼくはおもうのですが…」
「……わたしは入れてもいいとおもいますよ~」
「え?どうして?」
「ここはおひるのこうえんですからね~なにかあればおおごえをだしてちかくのおとなにたすけをもとめればだいじょうぶだとおもいますよ~」
「たしかに!さすがくるみ!」
「いえいえ~」
「じゃあどうします?」
「はいってもいいよってつたえてくるね~」
「あ、ちょ、ふみや!」
黒川は走ってくる文也に対して警戒をしつつも彼の目線に合わせて腰を低くする。
「それでどうかな?私はあなたたちの遊びに入ってもいいかな?」
「うん!はいってもいいよ~」
「ありがと。」
黒川はまず怪しまれはしたが彼らの言う遊びに参加できたことに内心ガッツポーズを決める。
(よっし!何とか入れた!これで彼が能力者か否かを確かめることができる。)
ただ、黒川は甘く見ていた。黒川はこれまで幻覚系の能力者を十人ほど見てきた。が、それのどれも体の一部だけが見えずらくなるいわゆるマジックのようなレベルのものしか見てきていないためである。文也の幻術?とは雲泥の差の能力しか見てきていなかったため黒川は一人でも対処できると考え応援を呼ばなかった。これがのちの後悔へとつながる。
「まずは入れてくれてありがとう。それで聞きたいのだけれどこれから何をして遊ぶの?」
「えっとね!おにごっこ!」
「おにごっこ?あのタッチされたら鬼が変わる遊びだよね?」
「うん!けどね、こんかいはちょっとちがうかんじにしようかなってかんがえてて~」
文也は今回のゲームの説明を始めた。ゲームのルールは鬼の変わらない鬼ごっこ、鬼に捕まると殺されてしまうこと。特別ルールとしてタッチされても捕まらなければ逃げてもいいというルール。制限時間は三十分。鬼は文也が決めたものとする。といった具合の説明だ。
(殺される。ずいぶん物騒というか、危険な遊びを考えるのね、最近の子供って……)
「ばしょは~どこにしようかな?……あっ!がっこう!おには~おにのかめんをかぶったひとにします。」
「質問していいかな?」
「どうぞ!」
「えっと、場所が学校ってどういうことなのかな?それと鬼のこともそうだけど……」
「う~んと、それはあとでわかるから!」
「……?」
「じゃあつくるね~」
「え?作るって―――――」
そう言って文也は手をパンッと打ち付けると辺り一面を光が覆い反射的に手で顔を覆う。いくらか時間が経ち目を開けるとそこは先ほどいた公園ではなく学校の中だった。
「え!?どうなっているの!?」
黒川が驚きを隠せず辺りを見渡すがそこには誰もいなくなっていた。
「あの子たちはどこに?まさか……」
悪い予感が頭をよぎりそれを口から出す前に機械音の音声が遮った。
『みなさま、ようこそ!ここはゲーム会場学園跡地です。参加者のみなさまにはこのフィールドで三十分間鬼から逃げていただきます。鬼の見分け方は簡単です。鬼は鬼のお面を付けており、また三十センチほどの長包丁を所持しています。そして文也様の特別ルールとして鬼は特別な武器以外での殺傷はできません。その特別武器はこのフィールドのどこかに三つご用意させていただきましたので武器を探し鬼を倒すもよし、三十分間隠れるもよしです。では只今からゲームを始めさせていただきます。……あっそうそう残り時間は各教室の時計をご確認くださいね。それではスタートです。』
黒川は一人今の現状を考えていた。
ここはあのターゲット、文也君の能力の中?やはり彼は能力者で間違いなかった。それもこんなレベルの幻術……幻術なのか?正直ここは先ほどいた公園とは違いすぎる。さっきまではお昼だったのに今は真っ暗気温も明らかに違う。痛みは、ある。ほっぺがひりひりするということは夢という線もない。窓や廊下の触り心地、歩き心地は普通の校舎とほぼ同じ、どうなっているの………?
黒川はそう言えば、と胸ポケットを漁る。するとそこから黒いカプセルを取り出しその中身である錠剤を二粒取り出しそれを服用した。
黒川が服用した薬は対能力者幻術対策用の錠剤で自身にかかるタイプの能力に対して無効にする効果がある。これを服用することによりここから出られないかと考えた黒川だが当てが外れたようだ。服用してもここから出られずにいた。
「どうなってるのよ~、それともこれが効かないくらい能力が強いってことなのかしら……はあ~辺りを捜索しましょうか。もしかしたらあの子たちの誰かに会えるかもだし。」
会ったらここのこととか聞いてみようそう決心したその時だった。
ギ―、ギ―っと廊下を何か金属を擦るような音と足音が自分の真後ろから聞こえてきた。
バッ!と振り返るとそこには般若のお面をかぶった身長二メートルほどの体格的に男が歩きながら近づいてきていた。
「……ッ!?」
あれが、鬼!
黒川は慌てて右腰に装備していた対能力者ように改造された拳銃を抜き構える。
すると向こうもこちらに気づいたのか雄叫びを上げて突進を仕掛けてきた。
(焦っちゃダメよ、わたし!もうちょっと、もうちょっと……)
普通の拳銃であれば遭遇時の一本通路の廊下であれば打ててはいたが対能力者用のこの拳銃はいろんな機能なりを載せたため飛距離が落ちており精密性も落ちているため、なるべく近づいてうち対象を無力化させなければならない。ただその分威力は保証されており玉に当たると外傷と着弾時の電撃、対象の能力の無力化が可能であり相手を殺さずに捕縛することに特化してると言える。
(いまだ!)
パンッ!という乾いた銃声が学園内に木霊する。が、対象は無力化できなかった。いや、玉は正確に相手の胸元目掛けて着弾した。ただ、当たらなかった。幽霊に向かって発砲したように弾はそのものを通り抜けていった。
「な!?うそでしょ!?」
黒川は驚きはしたがはっと我に返ると急いでもう一度発砲するためすかさず構えたが引き付けすぎたこともあり鬼はすでに目の前まで迫り、長包丁は振られれば黒川の左横腹に直撃する距離まで迫られていた。
(やばいっ!)
鬼は容赦なく長包丁を横に振り払い黒川の左横腹に打ち付ける。その長包丁は黒川の腹部を抉るものかと思っていたが黒川の来ているスーツが対能力者用で普通の刃物程度であれば斬ることすらできない特別製であったがため鬼の真横への振り払いの勢いのまま真横の窓を突き破り外へ放り出されてしまった。
「かはっ!」
(た、助かった。頭からなら即死だった。急いでここから離れないと!)
ゴホッゴホッと中の内臓が衝撃で傷ついたのか血を吐きながらも立ち上がり急いでその場から離れるためグランドと思われる場所を走った。
幸い鬼は廊下から飛ばされた黒川を追ってこようとはせずまた校内を散策しに行っていた。
「はあ、はあ、ゴホッ、はあ、痛ッ!このスーツのおかげで外傷は防げたけどさすがに衝撃までは殺してくれないか。ゴホッこの感じ内臓とあとはあばらが数本折れている感じかな。……もう!なんなのよ!あいつは!?」
叫んでその衝撃で内臓に痛みが走りそのせいで悶えている黒川。痛みが治まるとゆっくりと深呼吸した。
「すーはーすーはー、ふ~まずは現状の確認をしましょうか。」
今私はあの園児、
鬼の情報。私が見た限りでは武器はあの長包丁と大きな肉体。正直捕まると逃げるのは困難と考えるべき。遠距離に対して攻撃する手段はなく長包丁もしくは手が届く範囲に入るまでは突進してくること。
そして目は多分悪い。あの一本道の廊下で私との距離で約二十五メートルぐらいまで近づいてようやく走ってきた。そのことをふまえるとやはり目はいい方とは言えないのではないか?それと何故か深追いしては来なかった。目が悪いことと関係しているのかそれとも追撃はしない主義なのか。
私の情報。あばらが数本折れており内臓も損傷、外傷は弾き飛ばされたとき、割れたガラスの破片で頬を切った程度、軽傷。鬼に対しての有効手段なし。スーツは外傷を防ぐという面では有効、ただし衝撃は防げないためもって二、三回が限度か。
他の参加者、つまり園児たちの情報について。今のところ特になし。ただなるべく早めに見つけるべきか。
「っと、ここまでの話を整理するなら私が今からやらなければいけないことは鬼に対抗するための特別な武器と呼ばれる物の捜索、そして他の園児たちとの合流。今のところやらなければいけないのはこの辺りか。そのついででターゲットの能力の調査。これが全部彼の能力の影響なら能力は最高クラスだ……ふ~よし!行くか!」
黒川はその場から立ち上がり軽く体をほぐす。途中痛みが襲い蹲りはしたが立ち上がり衣服や装備を整える。
「準備は万端、まずはすぐ近くの体育館へ向かう。大丈夫、大丈夫よ、黒川百合。自分を信じなさい。あなたは絶対に生き残れる。うん!よし!行くぞ!……いてて。大声は控えましょ……」
黒川は歩きだす。目指すは目の前の体育館だ。
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