よんわめっ!うみのまもの!(4)

 海から何とか這い上がることができた文也ふみや、八百屋さんのある市場までは残り半分というところまで差し掛かる。


「ふ~ふふん~ふふ~んふん~」


 鼻歌を歌いながら白線を歩きコロコロを引きながら横断歩道の白線部分を飛び移動しまた白線を進むことをくり返すこと三十分。


 ついに目の前にお目当ての八百屋さんが見えたとき問題が生じた。


 白線が八百屋さんのある市場の道に無いのだ。


「ど、どうしよう……」


 う~んと文也が唸っていると周りを歩いていた女性が話しかけてきた。


「ぼく~どうしたの~?」


 いきなり話しかけられビクッ!とする文也、そんな文也に女性は話を続ける。


「だ、だいじょうぶだよ。なにか困ってることがあるのならお姉さんに話してくれないかな?私に手伝えることなら手伝うよ。」

「え?えっと~あの、げ、げーむしててむこうにいきたいけどいけなくて……」

「うんうん。」


(う~ん、何を言っているのかわからないな~ゲームをしてて向こうに行けない?どう言うことなんだろう……?)


「あのね、もうちょっと詳しく教えてもらってもいいかな?」

「えっとね、いまね、このしろいせんだけをあるくっていうげーむしているの!だけどねむこうにしろいせんがないからいけなくて、」

「あ~そう言うことね。」


(あ~白線か~ゲームってそう言うことね。普通に渡っちゃえばいいとは思うんだけど、子供って意固地になりやすいから、あ!そういえば。)


「ねえぼく~?白線しか歩いちゃダメなのよね?じゃあこの先を右に行って少し行けば横断歩道があって白線だから渡れると思うのだけどどうかな?」

「うん!!」


 文也は白線を歩きながら女性についていく、するとすぐに女性が言っていた横断歩道が目の前に見えた。


「ああ~やった~わたれる!!」

「ふふ、よかったわね。」

「ありがとう!おねえさん!」

「いいえ~」


 文也はお姉さんにお礼を言うとジャンプで横断歩道を渡り八百屋さんへ向かった。


「いらっしゃい!」


 文也はなんとか白線だけを歩き八百屋さんへつくことができた。


 文也は腰にあるポーチからお財布と紙を取りだした。


「えっとおじさん!このかみにかかれているやさいをくださいな!」

「あいよ!えっと、なになに大根とピーマンとにんじんだな。準備するから待ってな坊主!」

「うん!」


 八百屋で働いているおじさんは自分が売っている野菜の中から質のいいものを選び文也の手にあるコロコロに袋に詰めた野菜を置いて紐で固定してくれた。


「はいよ!坊主!金もしっかり足りたしこれで落ちないだろう!気をつけて帰れよ!」

「うん!ばいば~い!!」


 文也はおじさんに手を振って白線の上を歩いて帰る。帰るまでゲームは終わらない。


「ただいま~!!」

「おかえりなさい、文也。しっかり買ってきてくれたかしら?」

「うん!」

「しっかり買えてるわね!お疲れ様、ありがとうね!早く手を洗ってきなさい!」

「うん!」


 先ほど文也を手伝った女性が一人、文也が野菜を買った八百屋さんにいる。


「おじさん、さっきの子供はよくここにお使いに来るのですか?」

「ん?ああ、よく来るよ。いつもお母さんの手伝いでよくこの市場に来るんだ。」

「へ~そうなんですね~」

「はいよ!二千三百九十円ね」

「はい、」

「ちょうどだね、まいど」

「……あの子があの話に出てきた。」


 文也の知らないところでまた一つ物語が始まっている。

 

 


 

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