にわめ!どっちどっちげーむ(2)

「じゃあはじめましょうか~ふみやくん、どのようなもんだいでもかまいませんよ~」

「よ~し、やるぞ!!」


 文也ふみやが乗れそうな台座をどこからか持ってきてその上に乗ったとき、声がかけられた。幼稚園の先生、明美あけみ先生だ。


 千条せんじょう明美あけみ先生、年齢は二十四歳独身で先生歴三年の女性だ。


「みんな~何をしているの?」

「あ~あけみせんせいだ~えっとね~いまからどっちどっちげーむするんだ~」


 文也が得意げに明美先生に報告する。


「どっちどっちゲーム?それはどういったゲームなの?」

「えっとね~おれがもんだいだしてせいかいをどっちかえらぶげーむだよ。」

「へ~先生も参加していいかな?」

『いいよ~』

「ありがとね。よ~し先生も頑張って当てちゃうよ~」


 この時私はこのゲームに参加をしたことを後悔した。まさかあんなことが起きるなんて……。


「じゃああけみせんせいもくわえてみんなでやろ~」

『おー!!』

「あ、ちょっとまってね。」


 そう言うと文也はどこかに行くとどこからか棒のようなものを拾って戻ってきた。そしてそれを自身が乗っていた土台の真ん中に置き二手に分けた。


「えっとみぎがまるひだりが×ばつね。」

『はーい』

「じゃあはじめまーす!!もんだいをだします!」


 文也がそう言うとどこからかジャジャン!!というクイズ番組定番の音が流れてきた。


「もんだい!パンはたべものである!〇か×か」


 文也が自分の口でチクタクチクタクと言いながら体を揺らしている。ただ簡単な問題だ、すぐにみんな移動した。移動場所は全員〇だ。


「せいかいは~〇!!みんなせいかい!!」

「かんたんすぎです。もっとましなしつもんをしてくれませんか?」

「あけみせんせいもいるからまずはかんたんなもんだいをだしたんだよ!!」


 文也と彩人あやとがバチバチと睨みあっているのを「まあまあ」と明美先生がなだめている。するとパンパンという手を叩く音が聞こえみんなが叩いた方を見ると胡桃くるみが手を叩いていた。


「おふたかた、そこまでです。はやくつづきをはじめましょう。」

「は~い。じゃあきをとりなおしてはじめるよ~もんだい!これはですげーむである。〇か×か。」


 明美は驚いたまず問題が問題だ。


(デスゲーム?え?デスゲームってマンガとかで見る死んじゃうゲームのことだよね?う~んでもこれはただ遊びのゲームなわけだしデスゲームってわけでは無いわよね?じゃあ今回はバツが正解かしらね?う~んでも今回も簡単な問題だしまた彩人君とケンカしないか心配ね。)


「はあ~ふみや、どうしてそうかんたんなもんだいしかださないのですか?」

「そうだゾ!」

「だってまだはじまったばっかじゃん!」


(また始まっちゃった。やっぱり簡単すぎちゃったもんね。……え?)


 彩人や鉄平てっぺいたちは文也とケンカしながらも〇のエリアへと歩いていく。四人全員〇に移動した。


(え?どうしてみんな〇の方に向かったんだろう?答えはバツじゃないのかしら?答えは〇なの?う~んまあでも私は×に行こうかな?)


 幼稚園組は全員〇、明美先生だけは×へ向かった。


「あけみちゃんはバツでいいのですか?」


 胡桃が首を傾げながら訪ねてくる。


「えっとそうね、私はこっちが正解だと思ったからこっちにするね。」

「いいんですね。あけみせんせい!」

「ええ、大丈夫よ。文也君。」

(まあもし間違えちゃったとしてもこの子たちが楽しんでくれればいいかな。)

「では、せいかいをはっぴょうします!せいかいは~」


 文也が口でドゥルルルルとドラム音を刻みながら自分の手をグーにして胸の前で音に合わせて可愛らしく振っている。そしてバンッという音と共に振っていた手を正解の方に向ける。


 〇の方へ両腕を向けた。


「バンッ!せいかいは~〇!よにんともせいかい!あけみせんせいざんねん!!」

「あちゃ~外れちゃったか~」


(このゲームはデスゲームって設定だったのね。やっぱり子供って発想が奇抜というか、大人の度肝を抜いてくるわね。)


「じゃあはずしちゃったあけみせんせいにはばつげーむをうけてもらいま~す!!」

「罰ゲーム?」


 そう言うと文也は少し考え込む素振りを見せる。


「う~ん……なにがいいかな~」


(罰ゲームか~とくにそう言った話は聞かなかったけど、どんなのが来ちゃうのかしら……?)


「ふみやくん、さきほどできなかったバツゲームはいいかでしょう~?ほらさかなの。」


 胡桃が微笑みながら文也に告げる。


(さかな…?どういった罰ゲームなのかしら?)


「う~ん……うん、そうだね!みんなはとくにない?」

「いぎな~し!」

「だいじょうぶだとおもうです。」

「ふむ、じぶんもいいとおもいます。」

「さんせいたすう!じゃあばつしっこ~う!!」


 文也がそう言うと明美先生の周りから人差し指くらいの大きさの小魚が視界を覆うほどの数地面から突如現れた。


「キャアアアーー!!!」


(いや、なに、え?なになになに!?なんでいきなり魚が!?)


 いきなり現れた小魚は明美先生の周りをぐるぐると取り囲むように周り機をうかがっている。


(どこからこの魚は現れたの!?魚……魚……そう言えば文也くんと胡桃ちゃんがさっき魚の罰ゲームとか言っていたよね……)


「ふ、文也くん!この魚たちってもしかしてあなたが呼んだの!?」

「う~ん、たぶんそう!」

「じゃ、じゃあ早く消してくれないかな?先生とても怖いのだけれど…」

「う~ん、ごめんなさい。どうけすかわからないしばつげーむだから……」

「え!?」


「ね、ねぇ―――」そう言いかけた瞬間、明美の体に大量の小魚が食らいついてきた。普通の小魚には生えていないようなとても鋭い牙が明美のあまり筋肉の付いていない華奢な体に喰らいついて噛み千切っていく。


「ひぎっ!?い、痛い!痛い!痛い!ひぎゃ!ぐわ!ひたい!」


(な、なんで私がこんな目にあっているの!?)


 魚は容赦なく明美の体に喰らいついていく。小魚の数が多く全身に受ける理解ができないほどの痛みと苦痛そして生きたまま小魚に食べられる恐怖に明美の意識は落ちていく。


(助けて……痛い……イタイ……いた……い)


 ショック死というものだろう。生きたまま食われる苦痛にただ明美は死を選んだ。


 小魚はといえば相手が死のうが関係なく明美の死体を容赦なく食いちぎり肉の一片まで残さず食いきると小魚はまた地中へ消えていった。小魚が消えたそこにはただ明美だった骨だけが残っていた。


「ありゃりゃしんじゃった。」

「まあですげーむですからね。」


 文也と彩人が二人で明美だったものをしゃがんで眺めている。


「ささ、つづきをはじめましょ~まだにかいしかげーむをおこなってませんよ。」

「はいは~い。じゃあみんな~はじめるよ~」


 文也は胡桃に言われまた台の上に登って問題を考える。


 ゲーム開始二問目、死亡者千条明美。ゲームはまだ始まったばかりだ。


 

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