いちわめ!すなばわきけんがいっぱいです!(2)

 各園児たちが各々の砂山の前に立つ。


 文也ふみやは真ん中の円に向かう砂山正面の位置に文也と同じ位置取りをしているのは二人。一人は鉄平てっぺい、文也にとっては右斜め前にいる位置取りだ。そしてもう一人は胡桃くるみちゃん文也の右にいる。


 そして文也とは違った位置取りをしているのが二人。一人は彩人あやと、文也の左に構え文也の城へ近い円に位置取っている。そして妹の彩香あやかちゃんは文也から左斜め前に位置取り鉄平の城の方へ足を向けている。


「さ~いくよ!!」


 文也の掛け声で一斉に手をグーにして前に突き出す。


『さ~いしょ~はグーじゃ~んけ~んぽん!!』


 一斉に手を出す五人最初に勝ったのは二人、彩香ちゃんと鉄平がグーをだして勝利した。


 このゲーム最初のじゃんけんは何人勝とうが勝った人は全員行動することが可能である。


「よっし!!おれはまえにすすむぜ~」


「わたしもまえにいきます……。」


「さ、つぎつぎ~ちゃっちゃとやっちゃおー」


 文也の急かす声にみんな一斉に手をだす。


『さ~いしょ~はグーじゃ~んけ~んぽん!!』


 皆がバラバラな手を出しあいことなった。


『あ~いこ~で~しょ!!』


 今度の勝者は三人、鉄平と文也と胡桃ちゃんがチョキを出して勝利した。三人とも前進を選び、鉄平は大円まであと一歩のところまで差し掛かる。


 次の結果は二回ほどあいこが続き三回目の勝負で鉄平の一人勝ちでとうとう中央の大円までたどり着いてしまった。


「やばいな~」


 文也はポロッと独り言をつぶやいた。そのつぶやきに気づいたのか、鉄平が文也に対して煽りを加える。


「へへ~ん、もうやばいんじゃないかふみや~つぎかったらおまえにこうげきするからな~」


「まだはじまったばっかりだろ!」


 バチバチと文也と鉄平が睨みあっていると横から胡桃ちゃんが割って入ってきた。


「はいはい、まだしょうぶがついたわけではないのですからはやくやりましょ。」


 二人は間に入った胡桃をみて一度落ち着くと再びじゃんけんを再開した。


 次の勝者は彩人と鉄平と彩香ちゃんだ。


「うっし~やりっ!!おれはふみやにこうげきするぜ。」


 そう宣言すると鉄平は文也の砂山に近づき両手でおもいっきり砂山の下の方をごっそりと持っていった。


文也の棒が少しだけ左に傾いてしまい次の攻撃で倒れてしまいそうになっている。


「うわ~~!!しろのかべが~~!!!」


文也の砂で作った砂山の城壁が一回の攻撃で全壊した。あと残すは城下町とだけだ。


「へへ~ん、あといっかいでおわりだなふみや~」


「ぐぬぬぬぬ~」


『さ~いしょ~はグーじゃ~んけ~んぽん!!』


 今回の勝者は彩人と胡桃そして彩香だ。


「うおっ!!あやかがもうおれのしろのめのまえにいるんだがしかもくるみまで!!」


「てっぺい、それよりもやばいのはふみやくんではないでしょうか?」


 そんな胡桃の言葉に文也が悔しそうに唸っている。


「ぐぬ、ぐぬぬぬぬ」


「ふふふ、しめんそかですかねふみやくん。」


「「しめんそかってなに?」」


 いきなり彩人の口からでてきた四面楚歌という難しい言葉に鉄平と文也が首を傾げる。


「しめんそかとはてきにかこまれているといういみです。」


「「へ~」」


「ささ、はじめましょうよ。」


 彩人の急かしで再びゲームに戻る。


『さ~いしょ~はグーじゃ~んけ~んぽん!!』


 今回の勝者は文也と鉄平そして胡桃だ。


 胡桃が勝利したことにより同じ円中央の円に二人が入ったため二人の勝負が始まる。選択権があるのは鉄平だ。


「よ~しくるみがはいってきたことだししょうぶのじかんだな。じゃあしょうぶはておしずもうだ!!」


「じょせいとのしょうぶでそれはひどくないですか~」


「へへ~ん、もんくはなしだぜ~」


「はあ~しかたありませんか……」


 そうして二人は手押し相撲を開始した。手押し相撲のルールは簡単、押せるのは相手の手だけ、両足をくっつけて一歩でも足が動いてしまった人の負けだ。


「じゃあふみや~しんぱんおねが~い」


「わかった~じゃあよ~いスタート~」


 文也のスタートの合図とともに押し合う二人ただ、男と女単純な力勝負ではどうしても鉄平の方に軍配が上がってしまう。


 懸命に避けたりして鉄平のバランスを崩そうと粘っている胡桃ちゃんではあるが鉄平の強い押し出しが胡桃ちゃんの手にあたってしまい大きくよろけて尻餅をついてしまった。


「やりぃ~くるみはもどっていっかいやすみな~」


「は~い」


「よっし!!じゃあおれのこうげきのじかんだ!!もちろんふみやだ!!」


「や、やめてくれ~」


 文也が鉄平に対して懇願するもその願いは聞き入れられることはなく…


「へへ~ん、じゃあいくぜ~」


 そういって鉄平は両手でごっそりと文也の砂山砂の城を崩壊させ、とうとう文也のが崩れ落ちていった。


「あ、ああぁぁ……」


 棒が倒れた瞬間それを合図だと言わんばかりにパンッという乾いた銃声音と共に文也が、頭から血を噴き出しながらその場に倒れこんだ。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る