園児ですげーむ

鐘上菊

いちわめ!すなばわきけんがいっぱいです!(1)

 パンッという乾いた銃声音が幼稚園のグラウンドに木霊する。


打たれた本人は脳天から真っ赤な血を噴き出しながらその場に倒れこむ。


 デスゲームの敗者には死を。痛みはないただゆっくりと、その場に倒れこむ……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 幼稚園児の脳内ではいつもどんな場所どんな物でも遊び道具へと早変わりする。


幼稚園児にとって世界はすべてなのだ!


 そしてここにも一人すべての遊び場をデスゲーム仕様へ変えてしまう少年がいる。

名を竹谷たけや文也ふみやというこの少年が今作の主人公でありデスゲーム企画者兼プレイヤーである。


 今日もまた暗く泥臭いですげーむが幕を開ける。


 これは数々のですげーむを経験し成長していく子供たちの物語である。


「せいれーつ、しょくん!なまえとばんごうをいいたまえ!」


 両手を腰に当て大きく胸を張って整列した四人の幼稚園児たちに声高らかに呼びかけているのは同じ幼稚園児の竹谷文也だ。


「あやと、いちです。」


 最初に声を上げたのはとても綺麗な姿勢で気を付けをしている東条とうじょう彩人あやとという幼稚園児だ。


「あやかです。にーです。」


 二番目に声を上げたのは彩人の園児制服の袖を右手で少しだけ掴んでいる少しおとなしめな女の子、彩人の妹の東条とうじょう彩香あやかだ。


「てっぺい!さんばんだぜ!!!」


 人一倍声の出ているこのとても元気な男の子はいかり鉄平てっぺい、負けず嫌いではあるが負けたことに関しては素直に認める男の子だ。


「くるみですよ。よんなのです。」


 最後に声を上げたのは鳳城ほうじょう胡桃くるみだ。鳳城グループと呼ばれる日本トップの一流企業の一人娘でおっとりとした性格の女の子だ。


「ごばんめ、ふみや!よ~しぜんいんいるな~きょうはすなばであそぼうとおもう。」


『おお~』


 一斉に同じ反応をする。なぜ同じ反応をしたかと言えば幼稚園の砂場はいわゆる激戦区というやつだ。


 運動場の一区画にある決して大きいとは言えない砂場。園児だけでも十人は入れるかどうかであるためいろんな幼稚園児が外遊びのときはその場所を占有して遊んでいる。


 そんな場所を今回の遊び場にしたのだから感嘆するのも無理はないだろう。今回の砂場遊びのために文也はいろんな園児と交渉をして今回の占有権を獲得したのだ。


「ふふ~ん、それでね、こんかいはすなしろこうげきげーむをしていこうとおもいます!」


 砂城攻撃ゲームそれはいたって簡単、砂の城もとい砂の山を築き棒を立てるいわゆるやまくずしの要領だ。それの派生ゲームだと考えればよい。


 ルールはシンプルで相手の砂山の棒を倒せば勝ちと言うゲームだ。


 まず準備として人数分の砂の山を築き棒を立てる。この時相手とは約歩幅三歩分離さなければならない。


 今回は五人なので円状に砂山を築き、各城間に三マス分の円を描く、そしてその真ん中に大きな円を描くそこから各砂山の方向に三マス分の丸を書き、そして各プレイヤーは自身の守る城に一番近い三つの円のどれかに入り準備は終了。


 ルールは五人でじゃんけんをする勝った人は一歩前の円に進むもしくは攻撃か、自身の城を補強するかを決める。ただし補強の場合相手の城の攻撃した回数分しか補強はできない。


 そしてまず初めに目指すのは左右の城か真ん中の大きな円。


 左右の城であれば二勝で相手の城の手前まで行くことができ三勝で相手の山を攻撃することができる。ただし攻撃の場合両手ひとすくい分しかしてはいけない補強もまた同じ。


 そして次に真ん中の円に行った場合真ん中の円に入った状態でじゃんけんに勝てば好きな城の攻撃が可能であり、一気に城を崩すことができる。


 ただし各円には一人しか入ることができずもし円に複数人入った場合その入った人たちだけでゲームが始まる。


これは先に円にいた人選択制であり基本的にはその場でできるものなら何でもよい。


そして勝てばその場に残り負ければ最初に選択した三つの円の場所にもどり一ターンゲームをお休みしなければならない。


 いかに勝負に勝利して城を崩すかがこのゲームの肝である。


 すべての城を崩して最後まで生き残った者がこのゲームの勝者だ。


「もちろん、はいしゃにはもんどうむようでしんでもらう!いわゆるですげーむだ!」


ゴクリと彩香ちゃんの唾を飲む音が聞こえてきた。


「はいしゃのしょけいほうほうは?」


 腕を組みながら尋ねてきたのは彩人だ。


「う~ん……なにがいい?」


 最初に声を上げたのは鉄平だ。


「くるまにおしつぶされる!」


「さいよう!」


「えっとではじゅうでうたれるというのはどうでしょう。」


 二つ目の提案をしてきたのは胡桃ちゃんだ。


「それもさいよう!」


「えっと、えっとねすなばからおさかなさんがでてきてたべられちゃう……。」


 オドオドしながらも提案してきたのは彩香ちゃんだ。


「うん!さいよう!」


 文也は辺りを見渡し「これくらいでいいかな」っと告げると大きな声で宣言した。


「ただいまより、ですげーむすなしろこうげきをはじめようとおもいます!!!」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る