第4話
朝
駅のホーム
三毛猫が走って来る。
女、思わず声が出そうになるが堪える。
三毛猫電車に乗り込む。
電車内
女、キョロキョロしながら席に座る。
相変わらず、背筋は固めたまま。
恐る恐る壁に触ってみる。
ふわふわで気持ち良い手触りに吐息が漏れる女。
壁に頬擦りする。
周りに居た人達が離れる。
女、三毛猫電車に夢中。
工場の更衣室
中から女性の叫び声がする。
女、急いで駆け付ける。
ドアを開けると、丸めたチラシを持ってひっくり返っている先輩。
女
「どうしたんですか!?」
先輩
「出た!出たのよ!」
先輩が指差す先には、人差し指くらいの黒ウサギ。
先輩、震えながら叩こうとする。
女、先輩を押し退ける。
女
「ダメっ!」
女、黒ウサギを庇う。
黒ウサギ、ぴょんぴょん逃げて壁の隙間に入る。
先輩
「何なの!?」
女
「酷い事しないで!可哀想じゃない!」
先輩
「はぁ?私、腰打ったんだけど!」
女、我に返る。
女
「すみません、つい。」
先輩
「……貴方が退治してよ。」
先輩、勢い良くドアを閉める。
女、力が抜ける。
工場
種類豊富な猫とふよふよ飛んでいる小さなウサギ。
女、ウサギを捕まえては幸せに浸る。
よく見ると確かに赤目。
女の様子を遠巻きで見ている面々。
上司と同期が何やら話している。
同期、遠巻きから離れる。
上司が女に近づく。
上司
「……大丈夫?何だか顔色良くないみたいだけど。」
女
「え?普通ですよ。」
上司
「そう。」
女
「どうしたんですか?」
上司
「いや…‥。何か困ってる事があったら言ってね。」
女
「……はぁ。」
上司、遠巻きの方を見る。
同期がやって来る。
同期、首を横に振る。
上司、ぎこちなく笑って去る。
工場の更衣室
同期と女が着替えている。
同期、何処かぎこちない。
女
「……私、何もやってないからね。」
同期、表情が一瞬強張る。
同期
「え?」
女
「何か疑ってるんでしょ?」
同期
「いや、そんな事……。」
女
「何かさぁ、鞄の位置がズレてる様な気がするんだよね〜。」
女、笑顔で同期を見る。
同期、息を呑む。
同期
「……気のせいじゃない?」
女
「そうだよね。」
同期
「皆、味方だから。何かあったら……」
女
「何もないよ。」
ロッカーの横から、二匹のウサギが飛び出す。
どうやら番いらしい。
同期、思わず大声で叫ぶ。
女、優しく手で包む。
女
「そんなに大声出したらびっくりしちゃうよ。」
同期、息が荒くなる。
女
「どうしたの?」
同期
「……え、いや。」
同期、ゆっくりと、しかし駆け足で去る。
女、首を傾げながらウサギ達を窓の外に放つ。
ウサギ達、壁伝いに居なくなる。
女、爽やかな笑顔。
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