第3話

女の部屋

女、ドアの鍵を開けて入る。

髭面、リビングで寛いでいる。


「やぁ。」

「……夢の住人じゃなかったんだ。」

「そんなファンシーな感じじゃないよ。」

「そうね。」


髭面、少し不服そう。


「その後、どうよ?」

「人生が豊かになった!」


髭面、更に不服そう。


「怖くないの?俺の呪い。」


女、髭面の様子を見て態度を変える。


「……実は、ちょっと怖いんだよね。」

「おっ!」

「猫の中に入るなんて気持ち悪いじゃん。中も猫っぽくて怖いの〜。」

「そうだろ、そうだろ!」

「職場も猫だらけだけど、私だけしか見えないみたいだし……。」

「はーっはっはっは!もっと困らせてやろうか?」

「え?」

「もっと呪いを掛けてやるよ。」

「もう良いよー。」

「遠慮するなって。」


髭面、またも女の話を聞かずに呪いを掛ける。


「……何したの?」

「虫がウサギに見える呪いだ!しかも、高確率で赤目のウサギ。」

「えっ……。」

「赤は血の象徴。赤目のウサギは不幸になるぞ〜!」

「何でそんなに私を陥れたいの!?」

「何となく。」

「もう止めてよぉ!」


女、両手で顔を覆い、うずくまる。

髭面、満足そうに去る。


ドアの閉まる音。

女、高笑い。

その横を指の第一関節くらいのウサギが耳をパタパタさせて飛んでくる。

女、両手で包む。

柔らかな笑顔で優しく撫でる。

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