第10話


俺は未来と手を繋いで歩いた。


耳にはイヤホンをつけて、あたかも通話をしながら歩いているような格好を醸し出す。


傍から見ると俺はただ一人で歩いている高校生だが、俺からすればこれは立派なデートだった。


俺はかなりガチガチに緊張しながらもスーパーへと歩いた。


それを見た未来は大爆笑していたが、その未来も緊張しているのか、顔を真っ赤に染めながら歩いていた。



「あ、先輩着きましたね。」



気付いたら俺たちはスーパーに着いていた。



「先輩の好きな食べ物は確か、ちゃんちゃん焼きでしたよね?」


「おぉ、よく覚えているな。」



未来と昔に話した時にそんなような話をした記憶がある。話されるまでそんな事思い出せなかったのに、そんな事を思い出せるなんて。



「当たり前ですよ! 私は先輩が話した事で重要なことは全部メモしているんですから。見ますか?」


「いや…………いい。」



俺は未来の愛の重さに若干ひきつつも、愛されている事が嬉しくて、にやけてしまう。



「そうと決まれば今日はちゃんちゃん焼きです! 私持ってきますね!」



そう言って未来はカートを押し出した。



「ちょ、ちょっと待て! お前それ、傍から見るとポルターガイストだぞ!?」


「あ、そっか。じゃあ、先輩が押してください!」



そう言って未来はカートを俺に渡してくる。


やれやれ。何かあって除霊でもされたらどうするんだ。


未来は霊的な存在だから、そんな事されたら本当に祓われる可能性がある。


まぁ、そんな事俺が死んでもさせないけどな。


スーパーの中へ入っていくと、何故か未来が俺の中に入ってきた。



「ん? どうしたんだ? ってあれ、体が思うように動かない!?」



未来が入ってきた瞬間、俺の体が思うように動かなくなった。


まるで俺の体は動こうとしてるのに何かがそれを拒んでいるような…………。



「ふっふっふー。驚きましたか!? これが私の闇の力です!」



頭の中で未来の声が響いた。


相変わらず可愛らしい声だ。


本当に可愛すぎてやばい。



「ちょ、先輩、何考えてるんですか!?」



ん? どういうことだ?



「えっと、今私は先輩の体の中に入ってるんですけど、簡単に言うと二重人格みたいな感じになってるんですよ! こうすることで私は先輩の体を動かす事ができるようになるんですけど…………なんか、先輩の考えも分かるようになっちゃってるみたいなんですよね。」



そ、それはまずい! それじゃあ、いつも未来の事が可愛いと思ってることで思考のほとんどが埋め尽くされてたり、未来がピーーでピーーになってピーーーーーーーーー。



「ぎゃああああ。な、何考えてるんですか!? 先輩のエッチ! 変態! 人でなし!」



くっ、そんな事言われたって…………というか人でなしはお前だろ。幽霊なんだし。



「そういう事じゃなくてですね…………。と、とりあえず買い物をしましょう!」



そう言って未来は俺の体を動かし始めた。


余談だが、話してる途中で未来から「そんな先輩でも私は大好きです!」だったり「先輩となら私は…………。」とか言う声が聞こえてきた。


これは俺の思考が未来に伝わるだけじゃなくて、未来の思考も俺に伝わるようだ。


未来の可愛い本音聞きたいし、伝えないでおこう。



「えええぇぇぇっ!? わ、私の思考も伝わるんですか!? それにその言葉って…………。は、恥ずかしいっ! 1回出ます!」



そう言って未来は俺の体から出ていった。


勿体ないな。


未来は顔から湯気を出す勢いで顔を真っ赤にし、そっぽを向いた。



「というか、未来が俺に取って欲しいものを指示すればいいんじゃないのか? 言ってくれれば俺取るぞ?」


「そ、そうですね…………はぁ、最初っからそうしていれば良かったですね。これまぁまぁ疲れるんですよ。」


「なら尚更だな。買うものを言ってくれ。」



未来は料理まで作ってくれるのに、それに追加して疲れることはない。


俺は未来の指示を聞いて食材などをカゴに入れた。


そしてレジに並んでいると、俺の後ろに居た未来が見えない他のお客さんが俺との間を詰めて、未来にぶつかった。



「きゃぁっ!? 気持ち悪いっ!」



俺の後ろに居た女の人は悲鳴をあげて座り込んでしまった。



「あ、あの、大丈夫ですか?」



俺は慌てて女の人に声をかけ、手を差し伸べる。


未来が少しムッとした顔をしたが、これに関しては仕方がない。



「はぁ、ありがとうございます。なんだったんだろう。」



その女の人は身体中をぺたぺたと触っている。



「あの、どうしたんですか?」



俺は思い切って聞いてみる。



「いやー、なんて言ったらいいんでしょうね。なんか身体中を電流が流れて何かを吸い取られるような感覚がしたんです。」


「そうなんですね…………まぁ、お身体を気をつけてくださいね。」


「はい。ありがとうございました。」



女の人は一礼してから列に戻った。



「ほら! 言ったでしょう? 先輩以外の人は私に入られたら気持ち悪くなっちゃうって!」



うん。未来が言ってた事は本当だったんだな。



「まぁ、これからは気をつけてくれよ? 俺が疑われてもやだからさ。」


「むむむ。分かりましたよ。」



その後未来はちゃんと気をつけて歩いてくれているようだった。


そうして、買い物が終わった俺たちはいえに帰った。

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