第9話
未来といちゃいちゃしていると、ぐぅーと俺のお腹が鳴った。
時計を見ると、もう昼の3時になっていた。
「あ、そういえば未来は何か食べれるのか?」
幽霊は幽霊の食べ物しか食べれないみたいな事を聞いた事がある。
もしかしたら未来も特別な物しか食べれないかもしれない。
そう思い聞いてる見ると、何でもない様子で答えた。
「あぁ、私は大丈夫ですよ。お腹も減りませんし、多分食事が必要無いんじゃ無いんですかね。」
そう言うと、未来は何かを思いついた様な様子でポンっと手を打った。
「そうだ! 私が家事をやりますよ! 私は疲れとかもないし、眠くなったりもしないので先輩が寝てる間に家事を全部やっておけばいいんじゃないですか!? ご飯もどうせ先輩は適当なものを食べてるんでしょう?」
「いや…………それは嬉しいんだが…………。」
寝てる間に未来に家事をやって貰っていれば大分楽だろう。
だが、それは本当にいい事なのだろうか。
何だか、未来だけが辛い思いをしてる様で少し…………いや、かなり嫌だ。
俺はそう思い、その旨を未来に伝えた。
「あ、いや、私だけが辛い思いを、してる訳じゃ無いですよ? だって私は学校に行く必要が無くなったじゃないですか。あ、勿論先輩には着いていきますけどね。それでもあの面倒くさい課題をやったり、真面目に授業を受けなくても良くなったんですよ? ものすごく楽になったんですから、それくらいはやらせてください。」
「…………本当に良いのか?」
「いいに決まってるじゃないですか! もしや、私に家事がこなせないとでも? ふんっ、見くびらないでください。闇の女王である私に不可能はありません!」
バーンとでもなってるかのような仁王立ちで未来は胸を張った。
「ははっ、別にそんな事思ってないよ。じゃあ、頼むよ。未来は本当に可愛いなぁ。」
そう言い、頭を撫でてやると、「ふふん。もっと褒めてください!」と、とても嬉しそうにしてくれた。
「じゃあ、早速もう少し遅いですけど、お昼ご飯を作ってあげますよ! 私の絶品料理にひれ伏して貰いますよ!」
そう言って、未来は勢いよく冷蔵庫を開けた。
「…………あれ?」
「いや、なんかすまん。」
冷蔵庫を開けた先にあったのは、飲み物しか入っておらずガランとした空間だった。
「…………先輩。まさか自炊してない感じですか?」
「…………うん。」
「じゃ、どうやってご飯を?」
「…………これを見てくれ。」
そう言って俺は1枚の写真を見せた。
「これは…………泥?」
「いや、違う。ハンバーグだ。」
「ええっ!? これが!? ただの泥じゃないですか!? どうやって作ったんですかこんなの!? 肉の代わりに土でも入れたんですか!?」
「うぅ、これで分かっただろ? 俺の料理の出来なさが。これを親に見せたら、食事代をかなり多めに貰うことに成功したんだ。だから今は適当にスーパーでお惣菜を買って食べてるんだ。」
「では安心してください! これからは私が毎日美味しい料理を食べさせてあげますから!」
なんて嬉しい事なんだろうか。
だって考えても見ろよ。
健全な男子高校生が好きな人と同居の上、ご飯まで作ってくれるんだぞ?
もう、これ以上無いほどの幸せだ。
「そうと分かれば早く買い出しに行きましょう! 何か作るにしてもこんな有様じゃ何も作れませんよ!」
「あぁ、分かった。」
そう言われたので、俺は適当な服に着替え始める。
着替えていたら後ろから未来の声がした。
「…………先輩。」
「うわぁっ!? ちょ、着替えは見ないでくれよ恥ずかしい!」
「あっ、ごめんなさいごめんなさい。」
流石に裸を見せるのはまだ抵抗がある。
けど、ゆくゆくは…………。
そんな事を考えながらズボンで体を隠して未来がどこかに行くのを待つが、中々どこかにいってくれない。
「えっと、未来?」
「なんですか?」
「もうそろそろ一旦部屋の外に出て貰えると助かるんだが…………。」
「あぁ、うぅん、ええっと、へ、部屋の外には何故か出られないんですよねぇー。あははぁ、不思議ですよねぇ。だから、先輩の着替えを見ているしか選択肢は無いんですよ。」
うん。絶対嘘だ。明らかにしどろもどろになってるし、目も泳ぎまくってる。
「うん。嘘だよね?」
俺はじとっとした目で未来を見つめる。
「う、嘘なんかじゃ無いですよ!? ほんっとに、先輩は私の言うことを信じませんねぇ。」
未来はやれやれとした。
いや、やれやれとしたいのはこっちなんだがな?
「って言うか、出れないにしてもあっちの方向いてればいいんじゃないか? そうすれば着替えを見なくても済むんだが…………。」
「いや、けど、そのぉ。」
未来はあたふたしてるだけで、一向に後ろを向いてくれない。
はぁ、少し恥ずかしいが諦めよう。
「…………エッチ。」
「はうぅっ…………。」
俺はそう言って少しでも恥ずかしさを抑えるために後ろを向いた。
そして、無言で着替えていく。
後ろでは「はうぅっ。」とか「こっ、これは刺激がっ。」とか何とか聞こえて来たが、無視して着替えていく。
そうして、俺が着替え終わろうとしている時、未来が耳もとで囁いた。
「あ、そういえば、これが初デートですね。」
「!?」
俺は自分が持ってる一番オシャレな服に着替えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます