第8話


未来は抱き着きながら色んな事を話してくれた。


まず最初にこれからやりたいこと。


未来は俺といわゆるデートというものをしたいみたいだ。


遊園地に行ったり、水族館に行ったり、映画館に行ったりしたいらしい。



「そんな事でいいのかん」


「そんなことってなんですか!? 私はずーっと前からやりたいなーって思ってたんですよ!?」


「え、けど、2人で映画館行ったりは何回かしただろ。」



緊張で映画の内容が分からなかったという事を覚えている。



「えーっと、分からないんですか? やっぱり私の力で先輩の生気を吸収…………。」


「おーい、トリップしてるぞー。」


「はっ、あの、理解力の無い先輩の為に説明しますと、先輩と私の関係は1歩進んだ訳ですよ。その状態で一緒にいくってことはつまり…………そういう事ですよ。」



そうか。前までは友達同士で遊びに行く程度のデートだったが、今は恋人同士のデート…………。


つまりはイチャつけるという訳だ。



「分かった。今すぐ行こう。」



俺は立ち上がり、出かける準備をしようとする。



「ストッープ! 今日は行きませんよ!? だって先輩絶対疲れたまってますから、今日はゆっくり休んで、明日以降行きましょうよ。」


「でも…………。」


「今いったら…………怒りますよ!」



そう言って頬を膨らませる未来が可愛すぎて、俺は止めざるを得なくなってしまった。


未来は俺を心配したのか、様々な決め事をした。


まず最初にしっかりと休むこと。


一緒に出掛けたくても疲れている時は絶対に休むこと。


未来は幽霊だから特にやる事も無いため、いくらでも時間はあるんだから何時でも行けるからもっとゆっくりと付き合って行こうという事だった。


まぁ、休まず遊んでいたら疲れで最大限楽しめないかもしれないし、それには賛成だ。


だが、俺はここで1つ悪戯を思い付いてしまった。



「なぁ、未来。お前、俺がお前と遊びたくて遊びたくてしょうがないと思ってるのか? ちょっと…………自意識過剰?」


「ふえぇっ!?」



俺がそう言うと、未来は顔を真っ赤にする。


やべぇ、可愛すぎかよ。


もちろん本当は遊びたくてしょうがないが、この反応を見る為ならその感情を一時だけ押し殺す事など容易い事だ。


未来は恥ずかしそうに目を泳がし、上目遣いで、こちらを見た。



「先輩は私の事が…………そこまで好きじゃないんですか? 私と、遊びたくてしょうがないんじゃないんですか?」



未来は今にも泣き出しそうな顔でこちらを見つめる。


うおぉ、背徳感がやべぇ。


俺は未来の頭を優しく撫でる



「ごめんごめん。ちょっとからかっただけだよ。本当は遊びたくてしょうがないよ。」


「で、ですねよ!」



未来は顔を明るくさせ、明らかに喜んでいる様子だ。



「もうっ、そんな先輩はこうだっ!」



未来は俺の体にスーッと手を入れていく。



うわっ、何だこの感覚!?


体の中を撫でられてる様な、とても不思議な感覚だ。



「どうですか!? 気持ち悪いでしょう!? これがされたくなかったらもうからかうことはやめて…………。」


「いや、なんか気持ちいいんだが。」


「ええっ!? 嘘っ!?」



なんか、新感覚のマッサージ的な感覚で俺は正直気持ちよかった。



「嘘でしょ、他の人達には私の闇の力が効いたのに先輩には効かない…………やっぱりこれは愛の力!?」



また未来が変な感じになってしまいそうだったので、慌てて話を戻す。


次に話されたのは、学校にはしっかり行くことだ。


未来と遊びたいが為に人生を棒に降らないで欲しいとの事だった。


だけど、俺は別に人生を棒に振ろうとも未来と遊びたいと言うと、未来はため息をついて諭すような口調で話し始めた。



「やっぱり先輩はちょっと頭が悪いですね。ちゃんと長期的な事を考えてください。私は良いですけど、先輩はお金が無いと生きていけないんですよ。ずっと一緒に居たいのに、お金が無くて死んじゃったとかだと最悪ですから! 私の闇の力がもっと強ければ先輩は働かなくてもいいのですが、この世界に生まれた時に私の闇の力は弱まってしまって…………。」


「分かった分かった。学校にはちゃんと行くって。いつまでその設定やってるのかわかんないけど、痛いぞ? まぁ、嫌いじゃあ無いけど。」


「設定じゃないです! 今は力が弱まってるだけで本当に!」


「あーはいはい分かったよ。」



正直未来が言ってる事が本当なのか嘘なのかは分からない。


だって実際幽霊になっちゃってる訳で、そう言うファンタジーな事が起こってる可能性だってある。


まぁ、俺はただの厨二病なだけだと思うがな。



「本当に…………。話を戻しますけど、先輩には幸せになって欲しいんです。だからちゃんと仕事をして、お金を稼いで不自由の無い暮らしをして欲しいんです。先輩が他の人と一緒に居たいって言うんだったら私は居なくなりますし…………。」


「いや、それは無い。」


「うっ、そ、そうですか。」



いちいち照れるの可愛いな。



「とにかく、幸せになるにはある程度のお金は必要なんです! だからしっかりと勉強してください!」


「…………分かった。」



未来の言葉は全て俺を気遣ってのものなんだろ。


あぁ、幸せだ。


確かに未来の言う様に、幸せにはお金が必要だ。


俺は未来が居るならそれでいいんだが、その為には俺が生きなければいけない。


…………しょうが無い。未来の言うとうりにしよう。



「あ、けど、今はまだお金ありますよね?」


「あぁ、特に趣味も無いからな。結構溜まっているぞ。」


「じゃあ…………ちょっとの間は一緒に遊んびませんか? 私もずっと遊びたかったので…………。」



あれだけ俺に説教した手前、堂々とという事を言えないのか、モジモジしながらそうお願いをしてくる未来に勿論と返事をし、俺は本当に幸せだと思った。

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