第7話



「お前が自殺した原因って…………あのお前をいじめた奴らじゃないのか?」


「まぁ、そうって言っちゃあそうなんだけど、半分くらいは私たちのせいっていうかなんて言うか…………。」



もしかして耐えられなかった私が悪いとかそういうやつだろうか。


耐えられなかった方が悪いなんてそんなおかしなことはあるはずが無い。


いじめは被害者にも非はあるとか言ってる人も居るが、そんなはずは無い。いじめは絶対的にいじめた方が悪い。


よってたかって一人の人をいじめるなんて、正しいはずが無い。


俺がそう言おうとすると、未来は慌てたように言い直した。



「あぁ、別にあの子たちを庇って言ってるわけじゃないですよ? 少なくとも私にもあの子たちには恨みがありますからね。」


「じゃあ、なんで…………。」


「それは…………自殺の原因が私の勘違いだったからなんです。」



それから、未来は自殺してしまった経緯を語り始めた。



「あの日はいつも通り学校に行ったんです。そこでいつも通りあの子たちに絡まれました。けど、別にいじめってレベルじゃなくて、ただのいじり程度だったんだと思うんです。それもそんなに悪意も無かったと思います。ただ仲良くなりたくて話し掛けてただけという感じでした。それでも、あの煌びやかな雰囲気には着いていける気がしなくて、正直少し辛かったんです。」



ん? どういう事だ? いじめじゃなくていじりだった?


とりあえず俺は話を聞く事にした。



「あの日は、私の髪が少し飛んじゃってたんです。そして、私はこう言われました。「そんなだらし無くしてたらさ、あの凛斗先輩に嫌われちゃうかもよー」って。私は焦ってトイレに駆け込みました。けど、その日は何故か、髪の毛がずっと飛び跳ねて直らなかったんです。」



そう言うと、自分の髪をサラッと撫でて、「今はびっくりするくらいととのってますけどね。」と言った。



「私は焦りました。先輩に嫌われたら嫌ですし、

授業中も先生に注意されるくらいに髪を櫛でとかしていました。それでも一向に直る気配が無かったのです。」



未来は髪の毛の先をクルクルしている。



「あの時の私の思考は本当に訳の分からない感じになっていました。そして、私はこの姿を絶対に先輩に見せられないと思って、何を思ったのか屋上へ向かいました。そして、私でも分からないんですが、何故かこんな姿を見せるくらいなら死んだ方がマシだって思ってしまったんです。」



なんだろう。何か妙な感覚だ。


その時の未来の思考は明らかにおかしいのに、何故かその気持ちがよく分かってしまう。



「普通に考えて、さっさと家に帰ってお風呂にでも入ればいい話なんですけど、その時はそれを分かっていながらも何故かその選択が出来なかったんです。そして、私は飛び降りてしまいました。その時やっと正気に戻りました。よく考えたら先輩には寝癖のある姿なんて何回も見せているし、その度に特に気にしてる様子は無かったので、見せた所で嫌われるわけ無いじゃんってそこで初めて気づいたんです。」



未来の寝癖か。


はっきりいって俺は物凄く気にしていたぞ?


だって、めちゃくちゃ可愛いんだもん。


今までは自分を抑えてこの感情を出さないようにしていたから気づいてなかったが、俺は未来の寝癖を見る度に、心が躍って仕方がなかった。


だから、それを見て嫌う訳なんかない。


と言うか逆にちょっとドジな所を見て好感度爆上がりだ。



「じゃあ、なんのために私はこんな目にあわされているのか。私はスローモーションになった世界で考えました。やっぱり、私の死ぬ理由が分からない。…………死にたくない。その気持ちでいっぱいになりました。私はまだ先輩とやりたい事がもっともっとあったし、欲を言えば先輩と…………。けど、それも全て叶わなくなる。」



俺は息を飲んだ。



「私は相当先輩と一緒が良かったんですね。気付いたら私はこの姿になっていたんです。これはやっぱり私の闇の力効果ですね!」


「いや、それは違うと思うが…………。けどなんだかちょっと…………愛が伝わってきて嬉しいんだが。」



今こうやって説明を聞くと、余計に未来の「俺と一緒に居たくて幽霊になっちゃった」と言う事が未来がどれだけ俺の事を好きなのかを如実に表している事が分かる。



「いや! これは…………って、もう誤魔化してもしょうがないですよね。なんか変な事言って消えちゃったりしたら嫌なので何も言わないですけど…………この格好が答えです。」



そう答える未来に俺はもうなんだか、勝てる気がしなかった。

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