第44話 反撃

 カミュスヤーナとアメリアが顔を突き合わせて、何か話をしているように見える。

 私の位置からは、アメリアの後頭部が見えるだけで、2人の表情は全く分からない。


 まぁ、簡単に事が済むとは思っていなかった。

 この後、2人はこの局面をどう切り抜けるのだろう?


 その内、アメリアの身体が、カミュスヤーナの方へぐらりと傾いだ。

 カミュスヤーナが、傾いだ身体を受け止めている。

 次の瞬間、アメリアの背中に白い翼が現れた。


 翼・・だと?

 私は腰かけていた椅子を引いて、その場に立ち上がる。

 彼女の目の前にいるカミュスヤーナは驚いてはいないようだ。意識がない様子のアメリアを横向きに寝台に寝かせている。

 アメリアの身体は、あの娘の身体だ。

 翼が現れたということは、あの娘も天仕の血を引いているということか?


 アメリアを一瞥した後、カミュスヤーナはこちらを睨みつけた。

 右の瞳だけ色が赤くなり、髪の色は私が奪う前の色、プラチナブロンドに戻っていた。

 魔力が完全に回復している。なるほど、アメリアから魔力を奪ったのか。

 アメリアは魔力を奪われて、意識を失ったのだろう。翼が現れたのは、翼を身体の中に収めておくのに魔力が足りなかったからだ。

 もしかしたら、あの娘の魂も、アメリアの方に移っているかもしれぬ。


 アメリアは意識を失ってしまったから、この余興の続きはできないが、このまま、カミュスヤーナを抑えこめば、こちらの都合のいいように進められそうだ。

 私は、カミュスヤーナが、あの娘の魔力を大部分取り込んだという事実を軽く考えていた。

 天仕の血を引いている娘だ。魔力が少ないわけがなかった。


 カミュスヤーナが私に向かって、野獣のように吠えた。そこから跳躍し、私に向かって飛びかかってくる。

 気が付いた時には、私の身体はカミュスヤーナに押しつぶされ、床にたたきつけられた。

 私が先ほどまで腰かけていた椅子も、その衝撃で、部屋の端まで吹っ飛んで、破壊された。


「ぐぅっ・・。」

 強い衝撃に息が止まる。彼は私の身体の上にのしかかり、圧を加えてくる。左手は自由になったので、彼の頭に向けて、衝撃波や熱波を打ち込んだが、まったく効いている様子がない。


 彼は私のむなしい抵抗を見て、にやりと笑むと、私の口元に右の掌を押し当てた。

 唇に硬い感触があたる。

 そして一気に魂や魔力が口元に当てられた掌の方に引きずられた。

 彼は私の魂や魔力を奪おうとしているのだ。その力はすさまじく、抵抗できない。

 彼は、私が意識を失うのを、その赤と青の瞳で言葉なく見つめていた。

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