第42話 不審

 手元にある試験管の数を数えながら、私は最近自分の手元に戻った弟のことを考えていた。

 私と血がつながっているだけあって、精神的な攻撃に彼は強い。

 試せる薬はありとあらゆるものを使った。

 彼は全て耐えた。その顔を青ざめさせ、強い青い瞳で私をにらみつけてくる。

 あぁ、なんて美しいのだろう。


 一番嫌がるのは媚薬のようだ。媚薬を与えた時には普段とは様子が一変する。

 目尻が赤くなり、青い瞳はゆらめき、私の指先や舌の動きに耐えるように口を引き結ぶ。その口を強引に開くのも楽しい。


 彼が愛しく思っている少女の身体を持ったアメリアが見ていると、羞恥心から、強く抵抗をする。私は彼にあちこちかじられ、爪で引っかかれる。その行動がもたらす痛みに、私はとても高揚する。


 だが、このところ彼の様子が変わってきた。今までより精神的な回復が早いように感じる。以前は前日の痛みが残っているかのようにフラフラな状態で私の元に来ていたのが、前日のことなど忘れたかのように振る舞う。


 アメリアの様子もおかしい。

 時折、私と彼の行為から目をそらすことがあるし、話しかけても、反応が以前よりも遅いように思う。

 アメリアに自動人形になる前の記憶がよみがえるはずはないが、私の命令に背きかねない行為は見過ごせない。


 刺激が単調になり、慣れが生じているのだろうか。できることなら、彼の中にいるはずのあの娘を引きずり出して、餌にできればいいのだが、眠っていてやり取りができないという。それはそれで娘の事を心配しそうなものなのだが、それもない。私には、彼の言い分を確認する術がないのが痛い。


 ・・・回復が早いのなら、もっと強い刺激を与えてもよかろう。

 私は手元に媚薬の試験管だけを持ち、カミュスヤーナとアメリアを呼び出した。

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