第4話 見定

 言いたいことを言ったのち黙々と食事をする相手に、デイヴィッドは唖然とするしかなかった。確かに彼の論理に間違いはない。自分を黙らせる初めての相手にデイヴィッドは興味が湧いてきた。

「僕の名前は既に知っているようだが、君の名は何というんだ?ジョニーだったかな?」

昨日の中庭で彼とメンターとの会話を耳にしているのにも関わらず、デイヴィッドは敢てその名を口にした。

「ジョニーって呼ぶな!」

視線を尖らせてジョナサンは言った。だが、一瞬だけ顔を赤らめて下を向き、改めてデイヴィッドに視線を戻すと、礼儀正しくこう名乗った。

「ジョナサン・レッドシールド。それが僕の名前だ」

全てが腑に落ちてデイヴィッドは苦笑した。

「ふん、世界一の金持ち一族、レッドシールド家の息子か。噂には聞いたことがある。巨大な資産に胡坐をかいていれば良い君ならば、その傲慢な考え方も納得がいくよ」

言い負かされた悔しさに、デイヴィッドは嫌みを言って返した。

「傲慢なのは君の方だろうデイヴィッド君。マサチューセッツ工科大学での物理の博士号、そしてここ、ケンブリッジでナノ材料化学習得。己に自信を持つのはわかるが、考え方が一方的なのは否めないな。そもそも何を渇望して異国の地に来たんだい?一般的な人生を送るためだけならば、充分な学びを君は既に済ませているはずなんだがな?」

「物理だけでは作りたいものが完成しない、ただそれだけさ。英国に来た理由は自分でも良くわからない衝動だったけれどね。君こそわざわざ大学になど来なくても、そもそもレッドシールド家にとっては既に学位など無意味だろう?所詮、金持ちの暇つぶしでしかないのならば、僕の時間をこれ以上奪うのは止めてくれると助かるね」

デイヴィッドは真直ぐジョナサンの瞳を見つめて言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る