第2話 完璧と秀才と謎と

2020年10月31日13時24分。神奈川県鎌倉市の上空で原因不明の亀裂が発生。現場の混乱の鎮静及び原因の究明のため、超能力者、最相 色和を派遣。


「そうですね、面白いやつですよ。彼は。ええ、あいつにも紹介してやりますよ。おそらく彼は二「先輩?」失礼、また掛け直しますねね。」

「すみません」

神楽は目を擦った。

「いや、別にいいよ。耀稀は?」

「まだ寝てましたよ」

「そ」

「準備しましょうか。耀稀のことおこしに行ってもらっていいですか?」

「了解」

夜澄は大きく伸びながら欠伸をした。


ピ、ピ、ピ、ピ、ピンポーン。

神奈川県鎌倉市のある町の住宅街。呼び鈴が何度も軽快に鳴った。

「早く起きろー、お寝坊さん」

「やだ...」

「なんで起きないんだよ...」

少年は暗証番号を入れ始める。

「いつの間にか世話係に認定されてるし...」

番号を入れ終わると、ドアが解錠された音が聞こえた。

「入るぞドアホ」

「入るなあ...」

扉の向こうから聞こえる声を潔く無視し、靴を脱いでリビングのドアを開けた。

「なんで起こすのぉ...」

_____無賀輪 凛勝。

「学校に遅れるからだよ」

_____有羅川 勝夜。

有羅川は冷蔵庫を開け牛乳を取り出し、机に置き、引き出しからシリアルを取り出した。

「もういい加減布団に丸まらないで外に出ろ!」

「無理ぃ...」

有羅川が無賀輪に近づき、布団を引っ張ろうとするが、体をうねらせてなかなかに難しい。仕方なく、有羅川は無賀輪の上に勢いよく乗った。

「ぐえっ」

「起きろって言ってんだろ!!!!!!」

現在時刻8時30分。余裕で遅刻である。これで116回目だ。


「あ”あ”ぁ”!!!!さいっあくだ!!!」

「ええ...?そんなに走る?」

「お前は黙れ!!!」

俺はお前よりも運動神経が悪いんだよ!!というつぶやきはしんどすぎて消えた。


9時。1年1組にて。

「遅れました...」

「はいよ、お疲れ様。遅刻扱いにはしないからな」

「ありがとうございます」

有羅川はふらふらとした足取りで席に着き、カバンを置いた。

「大変だね、毎日」

_____邪羅 楽良。

「大変どころじゃない...。ネクタイちゃんと結んだんだけど?」

「うわーお、ぼろぼろ。まあでも仲が良いことはいいことじゃん?」

「そういう問題じゃねえんだよな」

アイツは俺の0歳からの幼馴染だ。幼稚園、小学校、中学校、高校とすべて同じ学校、同じクラスだ。ふわふわな髪の毛と、クソ長いまつ毛、いいくらいのふっくらした唇、きれいな奥二重、182cmという高身長、程よい筋肉、程よい低音の声、そして勉学、運動も完璧、というこの世のモテる男はこんな感じ、と全世界に発信できるのではないか、と思ってしまうほどだ。ここまでこれば遅刻魔、早起きが苦手というところも「キャー!ギャップ萌えー!」である。うらやましい限りである。それに比べて俺は...、という自虐はしたくない。今も慰めに女の子たちが集まっている。

「気持ち悪いほどモテるな」

_____花果寺__。

「お前は興味ないんだな」

「だってアイツ口を開けば勝夜、勝夜だぜ?嫌になんだろ」

「ははっ」

花果寺はそういうやつだ。小中高と一緒の学校で、男勝りな女子だ。ちなみに握力はこいつのほうが強い。

そんなことを考えているといつの間にか1時間目が始まろうとしていた。


「勝夜、屋上でご飯食べよう」

「花果寺、食べるか?」

「いや、今日はいい」

「そっか、珍しいな」

「今日はなんか嫌な予感がすんだよ」

「嫌な予感?」

聞き返したがあいまいに笑われてごまかされた。

「凛勝」

「...いこっか」

「おう」

いつものように凛勝は手をつかんできたが今日はいつも以上に力が強かった。

「凛勝、痛い」

「ダメ」

横を見ると今までに見たことがないほどに眉を顰め、目を細めている凛勝がいた。その顔を見るとなんで、という疑問の声を上げることができなかった。そのまま凛勝は何も発することなく屋上へ俺を引っ張っていった。屋上につながる階段を上っていくにつれてつかむ強さが増していった。あと2、3段で屋上、というところで痛みが限界を迎えた。

「凛勝、痛い、凛勝!」

「勝夜、俺が逃げろって言ったら絶対に逃げてね」

「何言って」

「いいから」

「はあ!?ふざけたこと言ってんじゃあねえぞ!」

「言う事を聞け!」

「!?」

何、俺、凛勝に怒鳴られた?なんで?

「あ、え、?」

「ごめん、怖がらないで」

衝撃を受け、浮遊感を感じたところで俺の意識は切れた。







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ディスオーダー すべてはあの超能力者に操られていた cran @cran0424

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