ディスオーダー すべてはあの超能力者に操られていた

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第1話 出会い

2020年10月31日。渋谷などでは大いに盛り上がる中、徳島の人気の少ない路地裏で連続殺人が発生。悪魔による犯行であるとみて超能力者、夜澄 空理を派遣。


「はあ...なんでこれがオレなんだ?」

超能力者、夜澄 空理。

「仕方ないでしょう?」

超能力者、神楽 游一。

「手が空いているのが先輩しかいないんですから」

現在地、大阪府大阪市淀川区 ディスオーダー待機ビル

「はあ...憂鬱だ」

「そんな真顔で言われても信憑性がまったくもってないですよ」

先ほど夜澄がつけたテレビにはこれから夜澄が行かなければならない事件についてのニュースが流れていた。

「負傷者100名...結構大ごとじゃあないですか」

「そうか?前は1000人だったけど」

「それはあなたに回される任務がおかしいだけです」

「ふーん」、と言って夜澄がソファーに寝転がろうとする。が、神楽に止められた。

「何」

夜澄が不快そうに目を細めた。

「何、じゃないですよ。あなた、徳島に行かないとまずいですよ」

「行かなきゃダメ?」

「だめです。あなたこういう時にかぎって頑固ですよね」

「人間は一番面倒くさい、という感情に正直なんだよ」

「地味に納得してしまいそうな屁理屈はやめて行ってください。今日はあなたが運転するんでしょう」

「俺16歳なのにねー」

そういいながら神楽にぐいぐいと押され、締め出された。


この世には超能力が存在する。正確には、日本にだけが存在する。超能力は人によってさまざまで、書物には書き記されているがきちんと確認できていないものなど、未だはっきりとしていない。しかし一つ、研究者たちが確信していろ事柄がある。それは、超能力が「悪魔に対抗するため」に作られたものである、ということだ。

悪魔とは、書物によるとそれは人々の油断、それによる失敗を餌にする人外である。どこから発生しているのかなど、ほとんどがはっきりしていない。


「ここかー」

シャッターで締め切られた店、がたついたレンガの道、傾いた古い木造の家、すべてが陰の空気を醸し出している。そしてその中でも顕著なものが匂いである。

「死臭だ」

そう、四方八方から死臭が漂っているのだ。

「24人じゃないだろ...」

背後からの殺気。

「あー...ここら辺にいるってことね」

国が管理しているからか、ここでは異質のきちんとまっすぐ建った電柱に乗ったまま言った。先ほどまでいたところには丸い鉄製のもの。そう、手榴弾である。

「あー、あらかじめ止めてもらっておいてよかったー」

手榴弾が光を放ちながら大きな音を立てて爆発した。当然、先ほど立っていた電柱も少し悲惨な状況である。夜澄は耳に詰めた耳栓を外した。

「さてと...そろそろかな」

その瞬間、天から黒い物体が降ってきた。否、悪魔である。

「はあ...今日でどれだけオレを飛ばせる気なの?」

また、先ほどまでいたところは木端微塵であった。

「ねえ、お前が犯人?」

沈黙である。

「ねえー、早く答えてよ、殺すよ」

夜澄はうっすらと笑った。

「んじゃあ仕方ない、実力行使だ」

夜澄は悪魔にゆっくりと近づいていった。


悪夢。

「死ねやゴミ」「君の兄のほうが...」「あいつやっぱ変だぜ」「どうしてこんなことができないの!?」「関わるな!!」

うるさいうるさいうるさい!!

俺にどうしろっていうんだよ!

俺が何をしても「異常」だといわれる。

「じゃあ俺を普通にしろよ...」

最悪だ。何も覚えてないのにこういうクソみたいなことだけは何で...!!!

少年は路地裏でしゃがみこんだ。


「オレの超能力は時間を操ることができるんだよ」

夜澄は悪魔に触れた。

「つまり、お前ごときなら、「無」に還すことができるってこと」


超能力『生者必滅』


悪魔は氷から水に溶ける動きと同じように液体になり、そして消えた。

「まあ...昔は苦労したけど。異常だろ?だって」

少年は息をのんだ。

「んで...さっきから何」

少年は暗い軒下から出てきた。

「あの、さっきの教えてください!!」

「は?」

「だから、さっきのやつです!」

「は???」

「さっきのやつです!!」


「んで、圧で連れてきてしまったと」

「仕方ないでしょ...」

「あなた、お名前は?」

「阿須川 耀稀です!」

超能力者、阿須川 耀稀。

「左様ですか...失礼、空理さんを借りますね。少々お待ちください。」

神楽は夜澄の手首をつかみ、部屋から連れ出した。しばらく廊下を歩き、ある部屋の前で立ち止まり、ポケットから鍵を取り出した。

「どうぞ」

神楽は鍵を閉めた。

「空理、どういうこと」

「そのまんまの意味」

「はあ...阿須川 耀稀、15歳、男性。国籍は日本。出身は徳島県鳴門市。これしかわからなかった。どう考えてもおかしいだろ」

「だからこそ」

神楽は眉をひそめた。

「だからこそ確保しておく必要がある。日本で発生する犯罪の85%は悪魔が何かしらの形で関与している。そして情報が出ない理由が悪魔が関与しているのは確実だ。超能力があるからな」

「でも...!」

「あいつはオレが詳しく知らない超能力をもっている可能性が高い」

「は??お前が詳しく知らないって...」

「だから、そばに置いておく必要があるんだよ」

「逆にあぶないんじゃ」

「それでも外に置いておくよりかはましでしょ」

神楽は黙り込んでしまった。

「明日に入学式をずらしたのはわざとなの?」

「さあ」


「お待たせしてしまい申し訳ありません。早速ですがあなたはディスオーダーに通ってもらいます」

阿須川は首を傾げた。

「ディスオーダー?」

「詳しいことは明日の入学式で説明します。では明日は早いので寝ましょう。よろしいですか、耀稀君」

「あ、はい」

阿須川は流れるままにうなずいた。

「では先にお風呂を。案内しますね」

そうして、神楽は夜澄を部屋に置いたまま、出て行ってしまった。

「さて...校長ー」

「なんだい?」

「どうせ盗聴器で聞いてたんでしょう。あなたは昔からそういう人だから」

「さすが、君は本当に何でもわかるね」

「何でもはわかりませんよ」

夜澄は何もない壁に向かって話しかけている。

「そんなに謙遜はしないでくれ給え」

「それで?要件は」

「あの子、どうするつもりだい?」

「保護します」

「未知なものを近くに置いておくとは、なかなかに面白いことをするね」

「...人は好奇心の塊ですよ」


「電気消しますよ」

「はい!」

「はー...」

夜澄は返事をする前に寝てしまった。

「もう寝てる...」

「早いですね」

部屋は閉め切ったカーテンから微量の月光だけが灯りになった。

沈黙が続く。

「寝る前に一つ聞いていいですか?」

「何ですか?」

「なぜ先輩に飛びついたんですか?」

「そう...ですね。引かれるかもしれませんけど」

「何です?」

「星の声が聞こえたから、ですかね」

神楽は眉をひそめた。

「暗い所にいるときにだけ、頭のどこかから声が聞こえてくるんです。だから、星の声」

「なるほど?...まあいいです。寝ましょうか、明日のためにも」

夜澄はうっすらと笑みを浮かべた。


以上が2020年10月31日の夜澄 空理による記録である。


夜澄 空理

年齢:16歳 

身長:178cm 

生年月日:2004年4月24日 

血液型:O型




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