初っ端から妹に嫌われているみたいなんだが

ウィーーーーーン、と大きな排気音を出しながら朝の五時と言う早い時間帯から俺は部屋の片付けをしている。

こんなに朝早く起きて掃除をしないといけなくなったのも、全て前日に親父が言うからだ。



親父は昔からマイペースで、大事な事もよく前日にいきなり言う等と言う事はよくあった。

だが再婚したのも事後報告でしかも新しい家族が増えるのですら前日に伝える親父。



親父のことを考えるだけで今は拳が震えるくらいストレスだ。

俺は眠気で重い瞼を手で擦り、何とか起きてはいるがこれだと昼まで耐えられるかどうか。



親父によれば再婚相手の家族は9時に荷物を持って俺の家に来るそうだが、俺の睡魔はどうなるんだろう。

因みに再婚相手の家族は俺らの家で暮らすことになった。


自分で言うのも何なんだが親父は日本有数の大企業に務めており、その中でも重役を担っているそうだ。

そのため稼ぎは正直めちゃくちゃ良く、かなり裕福ではあり、家は中々の豪邸ではある。



部屋も多くが余っており、正直親父と俺の二人暮しではオーバースペックも中々いいところだった。

それでも五人家族。余っている部屋は両手で数えても足らないため、狭苦しくなる事はない。



それから自分の部屋を綺麗にすると俺は廊下、そして何年も使われておらず埃まみれの部屋を一つ一つ掃除しておく。

親父にも手伝えと言いたいところだが、いつも仕事に追われ今日は折角の休日なため、流石の俺でも叩き起こす事は出来なかった。



そして家の中央部に位置する二十畳程の和室に、仏壇がある。

俺は普段通りに線香に煙を立たせ、そして手を合わせた。

母の遺影は、今日もいつも通り笑っている。



掃除が終わり自室でゴロゴロしていると気がつけば窓から日光が差し込んでいるのに気づいた。

時刻は八時を回ったところだろうか。



今のところ、親父が起きてくる気配はない。

一応約束の時間の一時間前には起こしておくべきだろうと考えた俺は親父の部屋まで足を運ばせ、親父を叩き起こした。



親父は起きてからめちゃくちゃ焦りに焦り、何でもっと早く起こしてくれなかったんだと言っていたが自己責任だろう。

俺はそんな親父を横目にカップラーメンにお湯を注ぎ、麺を啜り朝食をとった。








時刻は九時になる前だった。

インターホンの鳴る音がリビングに響き渡り、来客が来たことを示した。



俺と親父は目を合わせ、親父が玄関まで向かい扉を開く事になった。

俺はリビングでスマホに指を滑らせて新しい家族が来るのを緊張しながら待っている。



少ししてから親父と若そうな、透き通った女性の声が楽しく談笑するのが廊下から漏れ出ており、それが一層俺の鼓動を速くした。

リビングの扉が開放され、親父は声高らかに言うのだった。


「ようこそマイホームへ!!」

と。






ははははは、と笑いながら茶髪のロングヘアーの三十代位の女性が親父の後ろにいた。

俺を認めると、直ぐ様口を動かす。


「おはよう康太くん。今日からよろしくね」


「あぁ、よろしくお願いします」


緊張のせいか少し返答に時間がかかってしまった。

そんな俺を見透かしてか再婚相手は少し微笑んでから、続けた。


「そんなに緊張しなくてもいいのよ。これから同じ屋根の下で共に暮らす事になるんだから」


「確かにそうですね。よろしくお願いします」


「あらあら敬語なんていいのに。あ、早く三人とも挨拶しなさーい」


そう再婚相手が大きな声を発したことで俺はハッとする。

俺の視線は再婚相手ばかりに向かっていたため、三人の妹の存在を一時期忘れていた。



三人は既にリビングに入っていて、ソファーに腰を下ろし親父と何やら話しているみたいだ。

だが再婚相手の声掛けにより、三人の視線は一気にこちら側へと飛ぶ事になった。



俺も三人の方に目線を向けたのだが、俺は思わず目を見張った。

それは俺だけじゃなく、相手もそうだった様で、目が丸くなったのが俺からでもわかる。


「転校生の──」


「同じ班の──」


俺と神楽美咲はほぼ同じタイミングでそう言葉を放った。

まさか転校生が俺の妹?



目の前に広がる光景に俺は頭がクラクラする様な衝撃と共に、強い不安が募る。

俺はあの転校生......神楽美咲から冷たい態度を取られた人物。



少なくとも好かれてはなく、そんな奴と家族になったのだ。

しかも学校側も掌握していないのか同じクラスになっている。

こんな事が有り得ていいのか。


「あらー二人とももしかして顔見知りかしら? 同じ学校だもんねー無理はないかしら」


「......お母さん、私嫌だ」


「お姉ちゃん家族相手にそれは失礼だよ? 良好な関係を築く為にもそんな態度取らずにさ」



美咲の隣に座っていたツインテールの美少女は、そう優しく声をかけていた。

俺は少しばかりの心の傷が癒され、また少し安堵もする。



まともな人がいてくれてまだ何とかなりそうだ、と。

だが美咲の目は確実に俺を睨み、敵対視していた。

俺は何もやっていないはずなのだが......。


「そーよ美咲。雪の言う通りだわ。そんな態度とってたら嫌われるわよ?」


「......別にあんな奴から嫌われても害ない。それより私の部屋は? 早くここから抜け出したい」


「そんな事言わないの。ごめんね康太くん。少しでも場を和ませる為に自己紹介でもしましょうよ」


「そ、そうですね......」


俺はこれからどうしていけばいいんだろうか。

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3人の義理の妹が全員闇持ちで毎日大変なんだが @zokuzoku

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