第91話 ワールドエリアボス4

―― キュィーンッ、キュイーンッ、ギュイーンッ


「ちょっ、なになにわん?」


 回転音は更に勢いを増している。


◯[足の後ろの車輪がくっそ回ってますね]

∈[あの球体もなんにゃ? くるくる回ってるニャ]

◆[銀色の丸いドローン? 1、2、3、三つもいつの間にか浮いてるし]


 踵の車輪の回転による土埃にまぎれて銀色の球体がボスの周りをゆっくりと旋回していた。


「これは、距離はありますが様子見にひと当てしてみますかのう……ウォーターアロー!」


 様子を見ていた考老来ころらさんが魔法を放つ。


―― パシュッ


 距離があるため緩やかに放たれたウォーターアローは銀色の球体に阻まれて消えた。


「ふぇっ?! あのドローン、オートガードわん?」


「ウォーターアロー! ウィンドアロー!」


―― パシュッ、パシュッ


 少し曲がるように異なる方向からほぼ同時に着弾した魔法も三つある球体がそれぞれ防いだ。


「ふむ、うっすらと魔力の盾が見えましたな。しかし、これはかなり面倒ですな」


∪[ドローンすごいな、てか強すぎない?]

◆[あれは、科学なのか魔法なのか。魔力の盾ならハイブリッド?]

▽[それより今の攻撃で完全にこっちをロックオンされてないか]


―― ギュイン、ギュイン、ギュイーンッッ!


 若干前傾姿勢となったボスからは更に異様な回転音が聞こえ始めた。


▽[まてまてまてっ、ドリル、手がドリルになってるよ、いや、なんで!]

〓[機人族は手の先とかの形を自在に変えられるって言ってたよ]

∴[おお、両手ともドリル! これはロマン? ロマンなのか?]


「いや、いくら変えられるって言ったってガトリング砲がドリルには変わりすぎわんって、あっ、足元にガトリング砲が落ちてないかわん?」


 どうやらアタッチメント式での付け替え可能な腕らしい。


「わん太様、それがしはアレと戦いたくないのですがにゃぁ。流石にアレと打ち合うと刀が折れそうにゃぁ」

 勝魚かつおさんはそそくさと抜いていた刀を鞘に納めている。


◎[流石に両手ドリルとは切り合いたくないよなぁ。刀折れるだろ]

∪[両手にドリル、唸る踵の車輪とくれば……]

∈[間違いなく突撃して……きたにゃぁーーっ!!]


「キュッキュッ! キュキュキュッt! キュッキュゥーーッ!!」


―― ガガッ! ガッガガッ、がガガガッ!!


 イナバくんにより展開された土壁が突っ込んできたワールドエリアボスのドリルによって次々に破壊されていく。


「キュゥゥッ」

 低く唸るイナバくんの背中の毛がブワッと逆立つ。


❤〚イナバくんオコ? それはそれでかわいいけど〛

◯[これはオコだね。いつも、のほほんとしてるけど怒ることもあるんだ]

▽[作った土壁が簡単に壊されてるのが気に入らないんだろ、まあ、なんかわかる]


「ふぇっ、イナバくんオコわん? あ、なんだかイナバくんに力吸われてるぅ……」


「キュゥッ、キュキュキュゥ、キュキュキュキュゥーッ、キュルキュル、――」


 石壁を破壊して迫ってくるボスの足元に巨大な魔法陣が展開されていく。


「――キュッキュルキュッ!!」


 イナバくんの鋭い鳴き声に呼応して魔法陣が光り、地面から無数の杭が突き出された。


―― ガッ! ガガッ! ギュン、ギュ、ギューッン!


 下から突き上げられたワールドエリアボスは半分宙に浮いた状態となり、踵の車輪そして両腕のドリルも空回りする。

 ウォーターアローを防御した三つのドローンも足元から現れた土杭には対応できなかったらしくボスの頭上をくるくると回っている。


「おおぉっ、イナバくんナイスわん。けど、MP使うならそう言ってほしかったわん」

「キュゥ? キュッキュッ!」


 ドヤ顔のイナバくんが不思議そうに首を傾げた。普段はボクのMPを使用せずに魔法を使うイナバくんたちだが、おそらく使用可能な魔力量を超えたことで契約者であるボクから補充したのだろう。


◎[えーと、これ、モズの早贄だっけな]

∪[んー、操り人形っぽくもある]

▽[おーい、まだ倒してないからな、油断するなよ!]


「ともかく、今がチャンスわん。動き出さないようにしつつ攻撃してわん」


「よっしゃぁっ! これはオレたちの出番っす。解体は専門っす、いくぞー!!」

「おおぅ!」「俺のハンマーが唸るぜ」

 ドゥーエたちがでかい武器を抱えて集まってきた。


―― ドガッ! ガキッ! ガゴッ!


 ワールドエリアボス討伐も時間の問題だろう……

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