第92話 ワールドエリアボス5
―― ガゴッ! ドガッ!
「しかし硬いっす。あ、絶対土杭は壊したらだめっすよ!」
「うぃーっ、ソコ、柱補強して固めてくださぁい!」
串刺しとなって宙に浮いているワールドエリアボスは何も出来ずにボコられて、いや、解体されていっている。
▽[……あー、いや、悪くはない、悪くはないよ。これボス戦だよな]
※[おそらく大規模レイドボス想定のボス戦ですけど、結果的にメタってますね。運営涙目です]
∈[同じ戦法が他のモンスターでも出来るかが肝心にゃけど、まだ魔法自体使えるプレイヤーがほとんどいないにゃ]
「あー、うん、ごめんなさいわん。ちなみに『メタる』とは特定の敵に対する専用の対策みたいなものわん。ボクもまさかこんな動きの封じ方があるとは思わなかったわん」
ガトリング砲を装備したままだったり、どちらかの手が自由でドリルを振り回せたら土杭の拘束からも簡単に抜け出せたのだろう。
なお、球体のドローンによる防御は足元からの攻撃には対応出来なかったみたいだ。
―― ガンッ、ガンッ、カランコロン
ボスの周囲に浮かんでいた球体ドローンの一つが力を失ったかのように転がってきた。
「この球体ドローン、意外と軽いわん。ところで、これって機械? それとも魔道具? あ、入った」
とりあえずドローンをインベントリに格納してみたら入ってしまった。
◇〚そもそも機械と魔道具の違いがなにかになるが、
∈[にゃ?! にゃにゃにゃっ! 今インベントリに入れたのかにゃ!?]
▽[いや、なにをそんなに……あぁっ! これって部位破壊アイテムを確保できる?]
「ふぇっ、あ、無意識にインベントリに入れてたわん。んー、名前が薄く表示になってて所有権はまだないっぽいわん。これはバトル終了後に期待かな。そう言えば、部位破壊した場合はドロップアイテムの種類やドロップ率に影響するわん」
トレント系のサクラッキーなんかも枝を落としてから倒した方がドロップアイテムが多くなるのだ。
◯[え、それで枝落とししてから倒してたのか……]
∴[これは検証クラン案件]
◎[土竜族のみなさんがこっちを見ている……]
ボクの声を聞いたドゥーエたちは大型のハンマーから小型のハンマーやノミに持ち替え始めた。
「とれるパーツは全部確保っす!」「ここらじゃ見ない金属を持ち帰らないと後でドヤされるぞ!」
落ちていたガトリング砲やよくわからない部品等もボクの前に積み上げられていく。
「ボスが哀れに思えてきたにゃぁ」
「うん、そうだね……」
ほとんどの武装、装甲パーツを剥がされたボスが静かに光となって消えた……
―― ワールドエリアボスが討伐されました。
これにより、南の島エリアへの通行が可能となります。
「ああぁっ、消えちまったぁ」
「まだ、剥がし終えてなかったっすよ!」
バトルフィールドを覆っていたドームが消え、暖かい日差しが差し込む。
◎[なんだろう、この、えも言われぬモヤッとした気持ちはどうしたらいいんだろう]
∪[あー、ほら、わ、ワールドエリアボス討伐を喜べば良いと思う、思うよ、きっと]
▽[今のところワールドエリアボスの再戦は確認されてないんだっけ。再戦あると周回されそうだな……]
―― ワールドエリアボス『古の機死人』が討伐されました。
これによりエピッククエスト『大迷宮時代』が進行します。
これによりポータル機能が開放されます。
更にワールドアナウンスが続いた。
「そう言えばボスの名前確認してなかったけど『古の機死人』って名前だったのかぁ。で、クエストも進行したと……って、ポータル? ポータルってあのポータルわん?!」
▽[あのポータルがどのポータルかはわからんが、ゲームのポータルならファストトラベルとか何らかの移動方法じゃないか? いや、そうあって欲しいが!]
※[えぇーっ、ポータル?! えっ、転移用の魔法陣じゃなくてポータル?]
◆[思い返せば転移魔法陣は夏イベであったな。同じなのか違うのか]
「ところで、このポータル機能は南の島への移動用で開放されたのか、それとも『大迷宮時代』の進行によるもののどっちだわん?」
ワールドアナウンス的にはどっちともとれる。
∴[両方な気がするね。南の島行きのポータルと
◆[あー、ありそう。本来は南の島行きでポータルが明らかにされて、エピッククエストが示唆されるとか]
∈[難しいことは置いといて、南の島へはどうやって行くのにゃ? ポータルがあるなら早速探すにゃ!]
「それが、ポータルどころかイナバくんの作った土壁や土杭もいつの間にかなくなったし、土竜族さんたちの構築した弾除けの土壁や塹壕もきれいさっぱり消えてしまってるわん」
ボスバトルが終わったことでバトルフィールドとなっていた空間もすっかり元通り、いや、それどころか元々見えていた遺跡跡っぽい瓦礫も含めて何も無いまっ平らなフィールドとなっていた。
「わん太様、此処って元の場所ですよね、既に南の島ってことはないですよね?」
「それは大丈夫みゃぁ、ほら、あっちの方には乗ってきた舟が見えてるにゃぁ」
見通しの良くなったおかげでこの小島に設置した攻略拠点のキャンプ地と共に海岸に並べられた小舟までしっかりと見えた。
「わん太さん、ポータルらしいブツも怪しいところも怪しいぐらいに何にもないッ――」
―― ガキッ、ガガッ……
走り寄るドゥーエたち土竜族が突如バランスを崩し、落ちた――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます