第80話 迷い宿10

―― プレイヤーがロコノア城下街に到達しました。

   これによりワールドクエスト『精霊樹の復活』が進行します。

   これによりエピッククエスト『大迷宮時代』が進行します。


―― フレンド:『ミラ』がオンラインになりました。


「おおい、多い、通知が多いわん。ここは……またボクなんかやっちゃいましたか? って言うとこ……あれっ? ロコノア城下街に到達ってボク関係ないわん」

 大量の通知があったので聞き逃したものがありそうだ。後でログを確認した方が良いかもしれない。


◯[え、『大迷宮時代』エピッククエスト、ワールドじゃなくてエピック?!]

∈[にゃにゃ、ロコノアも大変な感じになってるけど、エピッククエストはわん太がトリガーにゃ。にゃにゃにゃって『大迷宮時代』ってなんにゃ??]

※[ちょっ、エピッククエストって何よ、聞いてないんですけどぉ]


 リスナーのコメントも混乱、阿鼻叫喚気味になっている。


「えーと、とりあえず、増えた尻尾が邪魔になってきたから減らしてよいかわん?」

 もふもふふかふかの尻尾のクッションに埋もれつつあるので女将の小薄こすきさんを見るも、宙を見つめたまま固まっていた。


❤〚もふもふ~〛

∴[減らしても良いんじゃないかな、邪魔そうだし。で、その九尾がトリガーだったりしたのかな?]

◆[タイミング的にわん太がミッションクリアしたことは多分間違いないと思うけど……]


 ワールドクエスト等のアナウンスはプレイヤー全員に通知されるが個人のミッションは当然通知されていない。

 ダンジョン関連は公表しないほうが……


「わん太様! 迷い宿マヨヒヤドオーナー就任ありがとうございます!」


 小薄こすきを筆頭にずらりと並んだキュウビ族の皆さんが三つ指をついて頭を下げた。


「はい、どうやらわん太様は迷い宿マヨヒヤドのオーナーになったようです。おかげで私もここを離れることも可能になりました。それに、これまで制限がかかっていた迷い宿の機能も使用できるようになっています」


 称号を確認すると『迷い宿マヨヒヤドダンジョンマスター』に『迷い宿マヨヒヤドオーナー』が増えていた。


「ホントわん、称号に『迷い宿マヨヒヤドオーナー』があったけど、ボクに宿の経営はムリだよ?」

 これでも王様だったりと忙しい……かもしれないのだ。


「ああ、それに関しては私達が行いますのでわん太様は名前だけのオーナーで全くもって問題ありません。ただ、オーナーだけの設定もありますのでそちらの管理はお願いします」


「それなら大丈夫わん。じゃあ、これからよろしくわん」


 早速迷い宿マヨヒヤドダンジョンの管理メニューを確認する。


▽[お、もしかしなくてもオーナーってダンジョンマスターのことか]

◯[わん太ダンマス幾つ目? どう考えてもダンマスになった数が『大迷宮時代』に関連してるよね]

◆[雪山の祠のフカルア山ダンジョンに運営管理だったアンメモダンジョン、この迷い宿で三つ目かな。クエスト発動には十分過ぎる]


「やっぱり東の森全体がダンジョンになってるわん。それに、北と南の方にも暴走気味に侵食してるわん……」


 ダンジョン管理のログを見るとやはり迷い宿ダンジョンが東の森ダンジョンを取り込んだようで許容範囲を超えたダンジョンが暴走に近い状態になっていたようだ。

 迷い宿がモンスターのいない特殊なダンジョンだったおかけでスタンピードにならなかったのが幸いである。


「とりあえず、ダンジョンの範囲を通常の東の森だけに戻して……迷路状態も解除するわん。これでまだ迷っている人がいても帰れるはずわん」


∴[あ、やっぱりあの迷路は変更できるんだ。他には何ができるの?]

◆[森の開発とかできたりする? 果樹園とかにできると良さそう]

◯[さすがベテランダンマスw]


「んー、外はあんまりいじれないみたいわん。ただ、迷い宿自体は結構細かくいじれるみたいだからこれは小薄さんたちにやってもらおう」


 外の森部分は多少の植生と道をいじることはできるが、大きく環境を変えることはできず、例えば森をなくすような変更はできない。


「わん太はん、これで東の海へいけますね」


「あぁ、そうだよ、東の海! 元々あきんどさんが漁村から来たって言うから海に行こうとしてたんだったわん」

 あきんどさんに指摘されるまでまた忘れていた。


∪[すっかり忘れてたけどそうだったね。わん太の島の周りは完全に海だったっけ?]

◆[多分、外海だよな。こっちのルーダン魔王国は内海っぽいんだけど]

∴[実際のところ、わん太の島はどこにあるんだろう。行き来できればいいのに]


―― 皆様、夕飯の準備が出来ました。ささやかながらお酒なども用意してありますのでお集まりください。


「お、おぉー!」「飯だ飯、待ってました」

「このアナウンスは宿の機能ですかね?」


 迷い宿内専用のアナウンスによる夕飯の通知にだらっとしていた探索者の皆から歓声があがる。


「迷い宿の機能も完全掌握したから色々便利になるわん。それじゃあ、この後はこのまま飯テロ配信とするのでチャンネルはそのままでわん!」


◯[ちょっ、おま! また飯テロ配信www]

❤〚いいなぁー、わたしもたべたい〛

◎[この配信、見る度に宴会してる気がする……]





―― 本日の配信は終了しました……


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