第79話 迷い宿9

―― スキル『狐憑啄木鳥グリフォン』を取得しました。


「ほえっ? グリフォン?」


∈[にゃにゃぁっ?! また精霊ゲットしたのかにゃ?!]

◯[わん太にだけ集まりすぎじゃないか?]

▽[わん太以外の精霊持ちは噂レベルだけだしな]


「精霊じゃないわん。スキル『狐憑啄木鳥グリフォン』ってのが手に入ったわん」


∈[スキル?? 何ができるのにゃ? グリフォンになれるとかかにゃ??]

◆[キツネもイヌ科だったかな。あ、タヌキもイヌ科かも]

∪[わん太も遂に犬を卒業かぁ、進化ってやつ……なのか?]


「いやいや、ボクはプリティーなわんこのままだから。で、このスキルだけど、説明するより使ったほうが早いかな。『狐憑啄木鳥グリフォン』!」


―― ぽふっ!


 コミカルな音と共に煙で覆われ、羽根と尻尾が生えた。


「はうっ?! えっ、なにこれ、コスプレすきるわん?」


❤〚きゃわきゃわー!〛

∴[黒いけど一応キツネの尻尾なのかな? 先っぽ茶色い]

◯[www 羽根も黒いな。飛べるん?]


 黒いカラスのような羽根に意識を集中する。

「あぁ、えーと、飛べないっぽいわん。ただ、ふんわりジャンプはできるみたいわん」


 軽くジャンプすると重力が小さくなったようにふんわりとゆっくり放物線を描いた。


◎[お、おおっ、なにそれ楽しそう]

▽[便利……なのか? 面白そうではあるが、ネタスキル?]

◯[一体いつから『狐憑啄木鳥グリフォン』という名前がネタでないと錯覚して……どう考えてもネタスキルだろ]


「ぴょーん、ぴょーん、と。なにこれめちゃくちゃたのしいわん!」

 ふわんふわんとジャンプすると月面を跳んでいるみたいだ。いや、月に行ったことはないけど。

 大きくなった尻尾が絶妙に良い感じでバランスをとっている。


「わん太様、わーん太さーまー!! 迷い宿の方がいらしています。遊んでないで戻ってきてくださーい!!」

 いつの間にかぴょんぴょんとかなり離れたところまできていたらしく、宿の前からシルヴィアさんが大声て呼んでいるのが聞こえた。



 ◆ ◇ ◆



「わん太様、ようこそ『迷い宿』へ」

 着物を着たキュウビ族の皆さんがずらりと門の前に並んでいた。


「改めましてご挨拶を。この宿の女将をしております、小薄こすきです。まあ、女将と言っても姉さん達に押し付けられたんですけど」


 宿の中には調査に入って未帰還だった冒険者パーティの一部も滞在していた。

 どうやら、あのガーディアンとは戦わなくても宿に逃げ込むことはできたらしい。しかし、入ることはできても出ることが出来ずに宿に籠城するような形となっていた。


「知ってるみたいだけど、ボクは調査チーム代表の猫乃わん太わん。今回は玉緒たまおさんからの要請を受けて東の森の調査と問題解決に来たわん」


―― ピコン!

   迷い宿マヨヒヤドに到着しました。

   ミッション:『迷い宿マヨヒヤドに行こう』が進行します。


 通知音と共にミッション進行通知が視界の端に流れる。

 どうやら解決するまではミッションクリアにはならないみたいだ。


「ところで、結局のところ迷い宿で何が起きたんだわん?」


 お宿の一室で小薄さんたちに異変についての詳細を聞くこととなった。


「まずは、この『迷い宿マヨヒヤド』とは何かですが、実は良く分かっていないのです。初代の作成した魔道具だとか、ダンジョンコアが変質した魔導具だとか伝わってはいるのですが詳細はわからないのです」


「ダンジョンではないわん?」


「いえ、おそらくダンジョンの一種だとは思われますがかなり特殊ですね。しかも、こちらに来て元々あったダンジョンに影響を受けたみたいで、迷い宿の管理権限にかなり制限がかかって困っているんです」


◆[ダンジョンの管理権限! ダンジョンの種類変えたりとかか?]

∴[つまりはダンマスのできる範囲に制限がかかってるというわけか]

◯[あれ、もしかして迷い宿の女将ってダンジョンマスター?]


「ダンジョンマスターってことなら、この東の森の迷路も解除できるわん?」

 迷路のままだとここから出るのも一苦労だし、迷い宿にきていない冒険者パーティもいる。解除できるならしておいたほうが良いだろう。


「いえ、私はこの宿に関する権限の一部しか使用できません。初代様はすべての機能を使用できたと聞いていますが、それ以降は力及ばず……」


「力及ばずって、さてはダンマスになるのに何か試練があったりするのかわん?」


「あ、いえ、試練といえば試練ですし、そうでないといえばそうでないです。ところでわん太様は犬の獣人と聞いていたのですが、実は狐獣人だったのですか?」


 小薄さんの目がパタパタと揺れるもふもふと太いボクの尻尾を見つめている。


「これはさっき手に入れた『狐憑啄木鳥グリフォン』っていうスキルわん。使うと鳥の羽と狐の尻尾が生えるわん」

 そう言って消していた羽を再度生やす。びっくりしたのか小薄さんの尻尾がブワッと膨らんだ。


「も、もしかして、その尻尾、増えたりしますか?」


 小薄さんの尻尾は三本だし、キュウビ族にとっては尻尾の数は重要なのかもしれない。


「小薄さんみたいにですか……えーと、お、こうかな?」


―― ぽふっ!


❤〚ふ、ふえたー!〛

∪[1、2、3本か。小薄さんと一緒だな]

◆[やっぱり九本ぐらいまで増やせるのか? それともいくらでも増える?]


「まだ、増やせそうではあるわん。増やすごとにMPを消費するけど……」


 どうしようかと小薄さんを見る。キュウビ族が尻尾の数にこだわってたりするとあんまりあっさり増やしても良くないかもしれない。


「こ、これは……わん太様、ぜひ、ぜひとも尻尾を増やして見てください。我ら姉妹でも姉の玉緒たまおで五尾、祖母でも六尾までなのです。初代様は九尾であったといいます。キュウビ族としては形だけであったとしても九尾は見たいものなのです!!」


 小薄さんだけでなく後ろに控えていた他の皆さんもうんうんと大きく頷いている。


「それじゃあ、増やしてみるわん。えーと……」


◯[四本、五本、おお、まじ増えるな]

◎[六本、七本、ってもはや本体が尻尾なのでは?]

∪[八本……確かに、わん太が尻尾に埋まっていっている]


「普段からこの本数だと結構大変な気がするわん。これで最後の九本目……」


―― 条件を満たしました。

   迷い宿マヨヒヤド管理権限が与えられます。

   上位管理権限を確認……


―― 迷い宿マヨヒヤドダンジョンマスターに就任しました


―― スキル『迷い宿マヨヒヤド』を取得しました。

   スキル『迷い宿マヨヒヤド』はゴヲ溗ダ桀『郮屑酓俧ㄆュヰ』ょぢぞゕ絺向ぴ。


―― シークレットミッション:迷宮の支配者★5

  * 初めてのダンジョンマスター CLEAR

  * ダンジョンの階層を改装する CLEAR

  * 2つのダンジョンを支配する CLEAR

  * ダンジョンを配下の支配下に CLEAR

  * 3つのダンジョンを支配する CLEAR

  * 4つのダンジョンを支配する CLEAR

  * 5つのダンジョンを支配する CLEAR

   ミッションをクリアしました。


―― プレイヤーがエピッククエストのミッションをクリアしました。

   これによりエピッククエスト『大迷宮時代』が開始されます。


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