第76話 迷い宿6

「むーっ、これはマッピングに意味があるのかわからなくなってくるわん」

 パーティを分けて探索を行った結果、四方に伸びた道の先には同じような安全地帯と四方向の道が続いていた。

 今日は二手に分かれて別方向に進み探索をしている。


▽[結局、碁盤の目のようなダンジョンっぽいよな]

◆[距離的にはループしててもおかしくないけど……正解の道を選ばないと駄目ななんらかのギミックがありそうだ]

∴[多分、順序通り進む必要があるんだと思う]


「順序って言ってもヒント、ヒントが必要わん!」


「右手沿いにぐるりと回って帰ってきたのに、ここはおそらく違う場所ですな」


 朝から延々と歩いてマッピングをしていたが結局分かったのはマッピングが役に立たないということだった。


「残したはずの書き置きも、木に付けた傷も見当たらへんなぁ。違う場所なのか、ダンジョンによって消されたんか」


 秋人あきんどさんが痕跡を探すもそれらしい跡が全くない。


「通常の森だったら精霊さんに案内してもらえるかもしれませんが、ここは完全にダンジョン化していてわからないみたいです」

 シルヴィアさんの周りをふよふよと小さな光が漂っているが、道案内はしてくれなさそうだ。


「歩いてて景色がほとんど変わらないのも困るよね」

 森の道に出てくるモンスターは主に四種類。

 サクラッキー、カエデッキー、モミノッキーにヒマワリン。


:――――――――――――――――:

名称:ヒマワリン

説明:向日葵ひまわりが変化した魔物モンスター

   火の粉と共に種を飛ばしてくる

:――――――――――――――――:


 ちなみにヒマワリンはこんな感じだ。


 スギッキーとかはレアモンスターで稀に出てくる。

 そして、現在はカエデッキーが出てくる道である。


◆[やっぱり道ごとに季節があるよな。ここはカエデに栗の木もあるから秋か]

∴[お約束として季節順、春夏秋冬で道を辿るのが正解かなー]

◯[すでに全部の季節を巡ってはいるよね。さっきはモミノッキーのいる冬だったけど]


「安全地帯の広場から道に入ってすぐは季節がわからないのが辛いとこわん」

 ある程度進んでから植生がはっきりしてくるため、広場からちょっと覗いただけでは次に進む道が決まらないのだ。


「これでは中々正解の順路を辿れませんが、キナが生えているので時間がかかっても最悪、食料にはなりますな」

 ゴルディさんがキナの実を見つけては袋に入れていく。


◎[キナって、そのイガ栗は食べられるの?]

∪[普通に栗で良いみたいだよ。あっちではキナのケーキがあるって……うらやま]

▽[ちょっと特殊な効果はあるけどな。ほら、きっと、わん太が見せてくれるw]


「えーっ、まあ、いいけど……、『キナーーーーーッ!』」

 キナの実をちょうど現れたカエデッキーに向かって投げる。


―― ドガァァーーーッン!! ドガガガッーーン!


 見事に命中して爆発するキナの実、そして周囲のキナの実に誘爆した。


「全員伏せろ! いや、退避ーーーっ!」

「わん太はん下がるで!」

 次々と爆発するキナの樹から慌てて離れる。


◎[なんという危険物。あれ本当に食べられるの?]

◯[誘爆は草www]

∴[いまので、ほとんどのカエデッキーも倒した模様]


「ふぇー、誘爆するとは思っても見なかったわん。こんな風に叫んで投げると爆発するのがキナの実わん」


「わーんーたーさーまー!! キナの実を投げるなら投げると言ってください。そもそも、キナの実が危険なのは子供でも知ってますよ。投げるときは一声かける、いいですか……」


 次の安全地帯までの間、延々とシルヴィアさんにキナの実の取り扱いなど森の中で気をつけることについて説きょ……御教授して頂いた。



 ◆ ◇ ◆



「今日はここまでにするわん……」


 何度目かの安全地帯となる十字路の広場で今日の探索は終了することにした。

 このダンジョンを抜けるには順序通りに進めば良いと推測はしているものの四分の一の確率を四回連続で引くことができていない。


「多分ちゃんとした攻略法がありそうな気がするんだけどなあ。なにか気づいたことはないかわん?」

 困った時のリスナー頼り。明日の探索までになにか方針は立てておきたい。


◯[多分、通路がランダムで入れ替わってるよね? 法則性もなし?]

∴[一応は四方向でそれぞれ異なる季節にはなるっぽいけど、次の日は入れ替わってた?]

◆[配信見直してたけど、人が残っている間は固定されたままに思える。日で変わったんじゃなくて全員が広場に戻ったため入れ替わった]


「ふむ、となると人海戦術で人数を残しつつ往復して正解の通路を探せば良いかも知れませんな」

「幸い人数もまだ居ますし、通路のモンスターもそれほど多くはありませんから危険も少ないのではないでしょうか」


 通路の季節が判明するまで進んでは戻ってくるのを繰り返す必要はあるがなんとかなりそうな気はしてきた。


「それじゃあ、明日にそなえて今日はこれで終わるわん。みんな朝から晩まで付き合ってくれてありがとわん! ではでは、おやすみわ~ん」


❤〚おやすみー〛

◯[おやすみわ~ん]

∪[おやすー、またあしたー]


―― 本日の配信は終了しました……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る