第70話 パウリ城下街探索4

「こちらの部屋は主に寄贈された本が並んでいます」


「えーと、魔法の本はないのかわん?」


◯[それそれ、是非魔法は知りたい。魔法自体は有るんだよね]

∈[わん太以外のプレイヤーで魔法っぽいのを使えたのも確認したけど、そっちもよくわからない魔法なのにゃ]

∴[え、わん太以外で魔法使えるの聞いたことないんですけど?!]


「魔法ですと……所謂『詠唱魔法』ですかね。この街は獣人が多いですから使用するのはほとんど『精霊魔法』ですので書物はほぼなかったかと思います」


「『詠唱魔法』? 『精霊魔法』とは違うわん?」


∴[そういや魔法には何種類かあるって猫妖精ケットシーのお嬢さんが言ってたね]

▽[あー、精霊魔法の詠唱は詠唱じゃないとかなんとか]

◎[ということは、詠唱魔法はホントに詠唱する魔法?]


「そうですね、『詠唱魔法』は人族や魔人族が使用する魔法で、体内の魔力を詠唱を用いて魔法として発動できるようにしたものです」


「詠唱を覚えればボクでも使えるわん?」

 ボクが使ってるのは魔法陣であって魔法ではない。イナバくんたちが使ってるのは精霊魔法だが、あれは勝手に使ってるからボクが使ってる気がしないんだよね。


「『精霊魔法』が使用できるので必要性はないかもしれませんが適切な詠唱を学ぶかすればここでなら使うことはできるはずです」

 クロセルさんが若干言葉を選ぶように肯定する。


「ここでなら? って何か条件があるのかわん? ともかく、クロセルさんに教えてもらうことはできるわん?」

 そういえば、クロセルさんは無詠唱で火を着けたり水を出したりしてお茶を用意したりしていた。


「私の使用する魔法は……『詠唱魔法』とは違う、いや、違わないのかも知れませんが、龍族以外が覚えられるかは……」

 何やら考え込むクロセルさん。



―― プレイヤーによる自力での魔法行使が確認されました。

   これによりワールドクエスト『精霊樹の復活』が進行します。


―― ワールドエリアボスが出現しました。



「ふぇっ?!」


▽[えっ?! ワールドアナウンス? ってか、ワールドエリアボスってなんだ?!]

∈[プレイヤーの魔法行使?? あ、ちょっと確認するにゃ]

◆[今、ワールドクエストが進んだってアナウンスされたよな]


 突然のワールドアナウンスだ。


「えーと、ワールドクエストが進行したって、みんなも聞こえたわん?」


∴[『精霊樹の復活』というと、この前始まったワールドクエストだね]

◯[わん太関係なく進むワールドクエスト。けど、精霊樹とかは関係しそう]

◎[ワールドエリアボスはエリアボスと違うの?]


「おお、今のは神の声ワールドアナウンスですか! ワールドエリアボスとは珍しいですね」


「クロセルさん、ワールドエリアボスって知ってるの?」


「ええ、簡単に言うと国を跨ぐような場合に出現するエリアボスですね。倒すことで行き来が可能になったり、ギミック的な通路が開いたりします。それと、外部からこの島に入ろうとする場合『氷龍クロセル』である私がワールドエリアボスとして対処するかもしれません」


▽[ちょっ、名前からしてやばそう、戦いたくねぇ]

❤〚わん太くんを乗せて飛んでたドラゴンさんだよね。強そう〛

∪[え、空中からのブレス攻撃とか蹂躙される未来しか見えないwww]


「クロセルさんが出るなら、この島も安泰……って、別に攻め込まれる話じゃないよね。まあ、もし負けたら、『奴は四天王の中で最弱』って言うわん」

 ほら、いつかは言ってみたいセリフというやつ。


◯[草w けど、言ってみたい]

▽[それだと、わん太が魔王ポジションになるな]

∴[残りの三人はだれだろう]


「ふむ、この島で言えば私よりも強い方もいらっしゃいますので四天王最弱も嘘では無いかもしれませんね。いえ、四天王じゃないですけど」


「え、そうなの。クロセルさんより強い人いるわん?」

 ちょっと信じられないけど、冗談を言っている風でもない。


「ええ、わん太様が知っている方の中にも私より遥かに格上の方もいらっしゃいます。言うと怒られそうですので内緒にさせていただきますがね」

 ニヤリと微笑むクロセルさんだが、目の奥にちょっとだけ怯えが見えた気がした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る