第69話 パウリ城下街探索3
「わん太様、これ、私もするんですか?」
クロセルさんが珍しく動揺したような声をあげた。
本日は前回に引き続きパウリ城下街の探索をする予定である。
若干渋い表情のクロセルさんを尻目に配信を開始した。
「こんにちわ~ん! ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太わん」
◯[こんにちわん、あれ、クロセルさん?]
❤〚こんにちわーん!〛
∪[イケオジ執事さんきたー!!]
氷龍のクロセルさんは元々はフカルア山のダンジョンを管理していたが……いや、今も管理はしてもらっているのだが、現在は執事としてボクの拠点で暮らしている。
「さて、今日も前回に引き続き、これです。じゃじゃーん!」
用意してきたフリップを出す。
◆ ◇ パウリ城下街探索 ◇ ◆
「パウリ城下町探索ー!」
「パウリ城下街探索ですな」
「あー、クロセルさん、元気よくって打ち合わせしたのに照れがあるわん」
◯[草w 執事さんに無理を言ってるwww]
◎[今日は子狼の双子たちじゃないんだ]
◆[それで、今日はどこらへんを探索するの?]
今日の探索にクロセルさんが着いてきたのはフェンとヴァンがお昼寝してただけではなく、ちょっとは理由がある。
「今日は新しく出来た施設とかをクロセルさんに案内してもらうわん。といってもどこに行くかは知らないんだけどね。実際、どこに行くわん?」
「わん太様が居ない間に建設された図書館ですな。小規模ながらも『わん太王国王立図書館』となります」
どうやら、丘の上から見えていた少し大き目の建物は図書館だったらしい。
◆[図書館! わん太のところにも図書館が出来てたのか]
※[ある程度以上の規模の街には図書館や類似施設があって情報が得られるような仕組みですね]
∴[早くいきましょう、早く。ラナと違う本があったりしますよね?!]
思った以上にリスナーの食いつきが良い。みんな情報には飢えてるみたいだ。
「そういえば王都ラナにも王立図書館があるんっだったね。ちなみにどんな本が置いてあるわん?」
∴[ラナ王立図書館は王家主導で作られたこともあり、王家の成り立ちや貴族関連の本がほとんどですね。我々プレイヤー関連の情報はまだまだ検証中です]
◎[そもそも紹介が無いと入れなくて、入ってるのって上位クランの一部くらい?]
∈[ウチとか検証クラン『ライブラリ』ぐらいにゃ。ライブラリは入り浸ってるけどにゃ]
「ほぇー、図書館に入るのも結構大変なんだわん。ボク、いれて貰えるかな?」
「わん太様、この街で一番偉い人が話をすれば入れないところはありませんよ。ちなみに国で一番偉い人の事を王様と言って、この国では『猫乃わん太』様ですがね」
「あっ、ハイ……」
クロセルさんにジト目で見られた……
◯[草w 実際のところ入場制限はあるん?]
◆[どんな本があるかにもよるんじゃないか? 禁書庫とかあこがれる]
▽[わん太のとこだと魔法系の本があってもおかしくないよな、いや、あって欲しい]
「図書館は住民には無料で開放されています。蔵書は私が収集していた本に加え、住民の皆さんからの寄贈された本が主ですね。あとは行商人からも珍しい本を買い取っています」
「そうなると知らない国の本とかもあるかな。とっても楽しみだわん!」
足取りも軽く出来たてほやほやの図書館に入る。
中には読書や調べ物をしている人たちがちらほら見えた。
「あら、クロセル様いらっしゃいませ……ってわん太様も。今日は視察ですか? それとも何か調べ物を?」
「今日はわん太様に最近出来た施設の案内をしている。あぁ、勝手に見るので仕事を続けてください」
半分くらいはクロセルさんが持ってた本らしいので案内をお願いする。
「色んな本があるわん。あ、『
ラナ王国と言えばプレイヤーの初期地点の国の名前だ。
「それは行商人から譲り受けた本ですね」
「『
キャンプやサバイバル系の本も多そうだ。
「それらは皆さんからの寄贈本ですな。皆、この街に落ち着くまでは各地を転々としていたのでそのためでしょう」
この街にはそれまで流浪の民だったり、魔物に追われて逃げ込んで来た人たちが多い。また、キュウビ族のようにいつの間にかこの辺りにいた人たちもいる。
▽[みんな大変だったんだな……って、それより、本が読めないんだが??]
◯[良く分からない文字で書いてある。やっぱり場所の差?]
∴[あー、言っていいのかな? いや、そもそもそれだと読めてるのがおかしい?!]
「ん? あ、そっか。アンメモの本って凄いよね。ちゃんと書いてあって読みづらいのも多かったりするし。『
アンメモ世界での本の扱いは実際にすべて読めるのだ。ここの本を見てわかったけど、言語も複数あるっぽい。
∴[いえ、そうではなく。ああ、もう、言語アシスト機能の設定はどうなってます?]
※[配信はプレイヤーの設定に依存するから、こっちで読めないってことはオフ?! え?]
∪[そもそも言語アシスト機能の設定ってなに?]
「言語アシスト? あ、そういえばあったわん。最初に本を読んだときになんだかブレて見えるし、微妙に意味がおかしいとこがあったから速攻オフにした設定だわん」
◎[へー、そんな設定あったんだ]
※[え、ブレてるとか意味がおかしいとかって……バグ?! すみませんバグ報告入れてください]
∴[オフ?! え、オフで読んでる?? は?!]
「あ、大丈夫、しっかり設定はオフになってるわん。ほら、今どきの配信者は多言語対応スキルも充実してるわん。ってことで面白そうな本を探しに次の部屋行ってみよう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます