第68話 パウリ城下街探索2

「つまり、紗妃さきさんたちキュウビ族の営む、通称『迷い宿マヨヒヤド』が東の森に出現したため森がダンジョン化しているということかわん?」

 ボクたちは場所を建物の中に移して玉緒たまおさんと紗妃さきさんから詳しい話を聞いていた。


「ええ、元々、私達の宿はエト獣族連邦国の北の方を彷徨っていたのです」


「へぇ、エト獣族連邦国の北……って、どこわん? この島には別な国はないって聞いたわん」


◆[こっちでも聞いたことのない国だよな?]

◯[獣族ということはケモミミの国!]

∴[ちょっと待って、彷徨ってたって転移してきたってこと?]


「おお、そう言えばお主らはあの辺りに宿を構えていたんだったな」

 ヒルメさんが湯呑を置いて懐かしそうな顔をした。


「ヒルメさん知ってるの? そのケモミミの国……じゃなかった、エト獣族連邦国って国」


「知っておるな。ただ、そんな大仰な名前じゃなく共同体のようなものだったがの」


◯[そもそも、エト獣族連邦国がどこにあるのかって話だよね]

◆[わん太の島じゃないとすると、こっちのどこかの可能性が微レ存]

∈[どこにゃ、どこにゃのにゃー!!]


「どこにあるかと言われると、この島ではないもっと大きな島じゃな。ああ、近くにルーダンの遺跡がある島があったり、ラナの民が隠れ住んでるところもあったな」


「ん? ルーダンってルーダン魔王国かわん?」


◆[!! ラナの民ってどう考えてもラナ王国なんじゃ?!]

∴[ルーダンが夏イベのだとすると……こっちにルーダン魔王国にエト獣族連邦国もある?]

∈[こうなるとワールドクエストとの絡みも考えられるにゃ]


「昔、ルーダンには魔王がおったがいつの間にか滅んでおってな……、ラナのとこから更に東側がエトの獣人たちが点在してたな。キュウビ族の宿は更に北の方じゃな」


「ええ、その当時は更に何もなかったと聞いています。今はエト獣族連邦国が大分大きくなって近くにも村や町ができてますけどね」


◎[えーと、つまり、エト獣族連邦国はラナ王国の東にあるおっきい国でいいの?]

◆[そうなると夏イベの島はそう遠くない、西にあると考えるべきか……]

∈[ワールドクエストは東がアタリだったかにゃぁ、ウチの店長クラマスとか西に向かったけどにゃ]


 つまるところ、エト獣族連邦国はラナ王国より東にある獣人族さんたちの国で、紗妃さきさんたちのお宿は元々その近くにあったという事だ。


「だけど、なんでまたこっちに来たわん? えーと、ここって大分遠いとこなんだよね?」


「それが、今までは宿が移動してもせいぜい隣の山とか、いわば歩いて移動できるぐらいの範囲でした。それが、少し前に完全に知らないところへ移動したと思ったらここの東の森だったんです」


「ふむ、龍脈の影響かも知れないな」


∴[龍脈! というと、この前クロセルさんとの話に出てたやつじゃない?]

◆[魔素エーテル流とも言われてたけど、それとどんな関係が……]


「そう言えばダンジョンと龍脈は関係あるようなことをクロセルさんも言ってたわん」


「ダンジョンが自然発生する場合、魔素溜まりにできるのじゃ。つまり、龍脈に沿ってできやすく、また、ダンジョンの力の源は龍脈であるとも言える」

 ヒルメさんはお茶を一口飲んで続けた。


「キュウビ族の迷い宿はダンジョンの一種であり、これまでは龍脈に沿ってうろうろしてたんだろう。それが龍脈の大変動の影響を受けてこっちに流れてきてしまったわけだ。偶然とはいえ難儀なことだな……」


「あ、ヒルメ様、勘違いしないでください。私達はこっちに移動した事自体には困ってませんし、むしろ喜ばしいと思ってますよ」

 ちょっと眉根を寄せたヒルメさんを見て紗妃さんが慌てたように言った。


「そうなのか? 龍脈の大変動であれば、ほれ、わん太にも責任があることだから何かあれば言うが良い」


「え!? ボクが何かしたかわん??」

 急に話の矛先が向かってきた。


「わん太よ、もう忘れたのか? フカルア山の龍脈が調整されたではないか。あれの影響はかなり大きいぞ、この島のダンジョンもかなり活性化したしのぉ」


◯[【悲報】わん太やらかしていた。遭難者複数名の模様]

◆[それはともかく、わん太のとことのファストトラベルの可能性が出てきたかも]


「あー、あれかぁ、ごめんなさいわん」

 不可抗力とはいえ、キュウビ族のみんなに迷惑を掛けてしまったようだ。ぺたんと耳も伏せる。


「あ、いえ、元々宿があった場所は何にもなくて……こっちに来たら街もあるし、色々都会でみんな喜んでますから問題ありません」

 どうやら怒ってないみたいでほっとした。その代わりと言ってはなんだが、近いうちに宿の方にも顔を出すということで話がまとまった。


「ふう。そんなわけで、近いうちに『迷い宿』訪問というか東の森ダンジョン探索配信を行います。あ、だけど、あと何回かは街の探索をするからね」

「わんた、おわったの?」「これおいしーよ」

 煎餅を頬張ったフェンとヴァンが寄ってきた。


「終わるとこわん。二人も一緒にお願いね。それでは、ばいばいわ~ん」

「ばいばいわーん?」「わーん!」


◯[おつー]

❤〚きゃわわー。ばいばいわーん〛

∪[ばいばいわーん]


―― 本日の配信は終了しました……

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