第67話 パウリ城下街探索
「にーく、にくにく!」「にくにくにーく!」
ふさふさの尻尾がご機嫌に揺れている後ろをぼてぼてと着いていく。
時々屋台のみんなから食べ物や飲み物を貰ったり買ったりして両手ともいっぱいになってきた。
❤〚フェンちゃんとヴァンくんきゃわわぁ〛
◯[にくにくにーく!]
◎[にーくにくにく! ってずっと同じとこ回ってない?]
丸い広場の周りに配置された屋台を回っているだけなのでいつまで経っても屋台巡りは終わることはないのは当然だ。
ごきげんなフェンとヴァンを先頭にボクの後ろにもいつの間にか子供たちの列が出来ていた。
持ちきれなくなってきた果物等を子供たちにも配っていく。
「ところでいつまで屋台巡りわん?」
「わふっ? やたいのはしまでぇ?」
ヴァンが燻製肉を齧りながら首をかしげる。
「ヴァンよ、そろそろ三周目だぞ。面白く眺めていたが妾も流石に飽きてきたわ」
「ヒルねぇ!」
◯[ヒルメお姉様きたー!! ふさふさ!]
◎[ヒルメさんって狼獣人? 狼獣人って選択になかったよね]
◆[獣人なのかな? おおかみ族と言ってはいたけど、狼形態に変化できるから獣人のくくりかどうかはわからない]
フェンたちは普段は子狼の姿をしているのと同じく、ヒルメさんも巨大な狼の姿になることができる。とは言ってもその姿を見たことは殆どないのだが。
「ところで、わん太よ、お主達はなにをやってるのだ?」
どうやら僕たちがグルグル屋台を巡っていたのしか見ていなかったらしい。
「パウリ城下街の探索? ほら、いつの間にか街が大きくなっててボクもどこに何があるか知らないんだわん」
「なるほど、確かにこの街はわん太の居ない間に拡張されまくっているからな。それこそ旧市街の外側は知らないだろう」
「旧市街?」
「うむ、旧というほど古くも歴史も無いが元々の村から町になった時の石塀の内側を旧市街と呼んでるな」
この広場はギリギリ旧市街に含まれ、現在は石塀沿いに丘を囲むように道が出来ているらしい。
ヒルメさんも一緒に、まずはこの道沿いにパウリ城下街を回ることになった。
▽[中世欧風の街並みに見上げると和風の城の天守閣が見えるのはやっぱり笑える]
∪[アンメモは剣と魔法の世界を謳ってるけど和風建築はあるのね]
∈[刀関連のスキルはあるけど肝心の刀がないらしいにゃ]
「あれ? 刀を持ったお侍さんな猫獣人は見かけたことがあるような……?」
「うむ、特に最近は着物を着た者を見かけることが増えたな。お、丁度そこにも着物を着た者たちがおるぞ」
ヒルメさんが指差す先には大きな建物の前で話し込む狐獣人さんたちと町長のヒャルメンさんが居た。
「ヒャルメンさーん!」
「ヒャルじぃ!」「じぃじ!」
「おや、わん太様じゃないですか。それにフェンとヴァンにヒルメ様、どうしてこちらに?」
「「ぱうりじょーかまちたんさくー!!」」
「いつの間にか街も大きくなっちゃってるんでボクも把握しようと思って探索だわん。ところで、こちらの方は?」
着物を着た二人の狐獣人さんだ。
「噂のわん太様ですか、キュウビ族の
「
「そうじゃが、妾の事を知っておるのか? 会ったことはないと思うのだが……?」
ヒルメさんが不思議そうに首をかしげる。
「あ、はい、お初にお目にかかります。うちの祖母の
「……おぉ、もしや宿を営んでいる一族か! そう言えばキュウビ族だったな。ということは、今はここらに来ているのか」
「ええ、もっとも本家の宿の方は妹に任せていますので、私達はこの街で宿を開こうかと物件を見せてもらっていたところです」
聞くと大昔にヒルメさんがその宿に泊った事があるそうで、その際大変世話になったとのことだ。
❤〚もふもふふわふわの狐尻尾……〛
▽[大昔ってことはヒルメさんの年れ……error]
◆[あ……、触らぬ神に祟り無しかな]
「ところで珠緒さん、開くとしたら和風のお宿わん?」
「そうですね、本家の宿は割りとこじんまりとした民宿のようなものですが、この建物なら旅館として大々的にやって行けそうです」
「それでは、内装とかをどのようにするか打ち合わせますかな」
町長さんと狐獣人さんたちは細かく条件を詰めるらしい。
「それではわん太様にヒルメ様、今後とも宜しくお願いいたします。あ、本家の宿は現在東の森の中で営業してますのでできれば寄っていただけないでしょうか?」
「東の森ってダンジョンの町(仮)の先の森のことかわん?」
「この前わん太達が遊びに行ってた森じゃな。ダンジョン化してる可能性があるとか言ってた……」
◯[紅葉狩りでモミノッキーを乱獲してた森かぁ]
∪[そう言えば
「ん?
「あ、あのー、森のダンジョン化はもしかしたらウチの宿のせいかもしれません」
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