第66話 正式サービス開始2
ぽかぽかとした陽気ののどかな昼下がり。フェンやヴァンと一緒にパウリ城下町の広場の噴水の端にぼんやりと座っていた。
「だいぶ暖かくなってきたからか、こうやってのんびりしてると眠くなるわん」
「わふーっ」「わふわふ」
時折通る住人に声を掛けられたり撫でられたりしながら配信を垂れ流している。
❤〚きゃわきゃわ~〛
◯[連日のもふもふライブ配信たすかる]
◎[はっ! 思わずログインしてから延々と見てたんですけど、ここは何のチャンネル?]
「あ、初見さんかな? ボクはぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太わん。昨日から新規プレイヤーがログインすると聞いて待ってるとこわん!」
ちょっと立ち上がり、くるりと回ってポーズをとる。
◎[かわいぃぃ! 私、新規プレイヤーです! そこ、どこです? ここの広場とは違うみたいですけど?]
∪[
∈[行けるなら行きたいにゃ]
そう、今日も半日以上たったけど、この街には誰一人として新規プレイヤーが来ていないのだ。
「いや、わかってはいたけど一応、誰か来ないかなぁと待ってみてもいいとは思うわん……」
▽[www行けるなら行きたい]
∈[最初のログインはベータプレイヤーはログアウトした拠点近くの町等からで、新規プレイヤーは今のところ選択なしで王都ラナからにゃ]
∴[おかけで王都ラナは大混雑になってる]
「やっぱりみんな王都ラナからかぁ、ボクも行ってみたいわ……?!」
―― プレイヤーがワールドクエストのミッションを開始しました。
これによりワールドクエスト『精霊樹の復活』が開始されます。
「……ふぁっ? ワールドクエスト?!」
突然のワールドアナウンスに変な声が出た。
◆[おおっ?! ってわん太も聞こえてたか]
▽[これは……わん太がトリガーではなさそうだな。このタイミングだと
∈[気になる
『ワールドクエスト』とは正式サービス開始にあたって実装されると言われていた大規模なクエストのことである。
『
「ワールドクエスト『精霊樹の復活』かぁ。精霊樹って精霊と関係ありそうだけど、イナバくん知ってる?」
屋台のおじさんから余った人参っぽい何かを貰ってモキュモキュかじっていたイナバくんに聞いてみる。角のない角兎のようなイナバくんはこれでも実はボクと契約している精霊なのだ。
「きゅっきゅぅっ?」
キョトンと首をかしげ見上げるイナバくん。
「知らないみたいだわん?」
∈[関係ありそうだけどにゃ~]
∴[復活ってことは今はなかったりするのか、精霊樹?]
◆[流石に精霊樹と精霊は関係あるだろうな。けど、こっちで精霊みかけたって話すら聞かないのはどうしたら]
「精霊かぁ、ウチの周りには結構いるみたいだよ。夜とかホタルみたいに良く光ってるわん」
そう言いながら魔力を手に集めてみる。
―― ポワポワン
「きゅっ!」
◯[え?!]
◎[もしかして……、それが精霊?]
色とりどりの小さな光とイナバくんがボクの手の平に集めた魔力に寄ってきた。
「あ、やっぱりここらにも精霊さんが居るね。『魔力操作』で魔力を集めると精霊さんが集まってきて、魔力が濃いところだと見えるようにもなるらしいわん」
精霊さんについては
▽[鬼人のフレが種族スキルで『魔力操作』持ってるけど、魔力集めたりできないって言ってたぞ。わん太の熟練度高すぎないか?]
∪[魔人の『魔力操作』持ちも魔力は分からないって言ってた]
◆[現状、魔法っぽいのもだけど魔力操作も扱えてるのは結局プレイヤーではわん太だけってことだな]
アンメモは剣と魔法の世界を謳っているものの、未だに魔法が使えるプレイヤーは見つかっていないらしい。
「ボクのはイナバくんたちが使ってくれる精霊魔法と魔法陣だから魔法と言っても微妙?」
◯[そもそもわん太がプレイヤー扱いかどうかも微妙w]
∴[非公式NPCって言われたり、運営からもイレギュラー扱いされてそうだしね]
「えぇーっ、ボクってやっぱりそんな扱いなの? まあ、気を取り直して今日のメインコンテンツいくわん」
用意してきたフリップを出す。
◆ ◇ パウリ城下街探索 ◇ ◆
「「ぱうりじょーかまちたんさくー!!」」
人化していたフェンとヴァンがフリップと同じ内容をタイトルコールする。ばっちり打ち合わせ通りだ。
❤〚くぅーっ……〛
◎[え、えっ、かわっ。って、人化? え、人化したの?!]
∪[あ、なんだかとっても配信っぽい]
「ちょっ、配信っぽいって。ボク、一応公式配信者でもあるんですけど?!」
そう言えば企画めいた配信をしたことはなかった気がする。
◯[パウリの村からいつの間にか城下街にまで発展してたから、確かに街中はみたいかも]
◆[上から見た時かなり広かったよな]
∴[王都ラナよりは狭いかもしれないけど、コトの街よりは既に広かった気がする]
そう、あれよあれよと言う間に村から町、街へと発展していつの間にか城下街にまでなっていたため、ボクも街に何があるのか把握していないのだ。
「というわけで、今回の配信は案内役におおかみ族のフェンとヴァンと一緒に街の探索です!」
「たんさくです!」「しゅっぱーつ!」
意気揚々と歩き出した二人の後を追ってパウリ城下街探索が始まった。
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