第3話

 もう、アイツとソイツの音楽は最高だった。

 中毒者のように、アイツとソイツのCDが出たら買った。

 初のツアーにも参加した。

 席はひどかったが、ソイツの生歌が聴けた。

 それだけでも貴重だった。

 来れなかった人も多くいたはずだから。

 生歌は放心ものだった。

 ライブが終わってもしばらくその場から動けずにいた。

「大丈夫ですか?」

 そんな時、声をかけられた。

 私は我に返り、振り返った。

 可愛らしい女性がいた。

 見ず知らずの女性だった。

 最初、なんで声をかけられたのか、分からなかった。

 時間が経つにつれ、状況を理解して行く。

 ああ、そう言うことか。私がずっと放心していたので、心配して声をかけてくれたのだ。

「すみません。大丈夫です。余韻に浸っていただけなので」

「そうだったんですね。すみません」

「いいえ。心配してくださってありがとうございます」

 そうして私は、ライブ会場をあとにするのだった。

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