第九回 レッツ・マジカル。ウチはついに変身を遂げる。
――ウチの手の平から現れたステッキは、魔法のアイテム。今しっかりと握った。
そこからはどお? 変身の仕方なんて教わってないのに、脳が体が勝手に動くの。ウチの身体から広がる桃色の光は、着ているものを弾き、一糸まとわぬの天使に……そこから装着されるコスチューム。白と桃の二色がコラボ。ジャケットに……スカート? どう見ても魔法少女……って、ウチ男の子だけど。と思いつつ、チラッと見ると、
ミズキちゃんはウンウンと頷いているの。「似合ってるよ」との台詞も付けて……なので、あとはノリ。回すステッキ。左手で回している。
思えば、ミズキちゃんも左手でステッキを回していた。ウチと同じ左利きなの? すると、ミズキちゃんが「あとは名乗りだよ。ヒーローは元気よく挨拶からだよ」と言った。
「あ、あの……ウチは、ウチは、『マジカルエンジェル・チハル参上!』……です」
と、自分なりに。目の当たりにはあの、三メートルの巨体が立ちはだかっている。足元がガクガク震えている。ステッキを両手で構えるも、身体はカチコチに硬直で……
するとミズキちゃんは言う。少し怒鳴った感じで。
「怖いのはわかる。でも負けちゃダメ。逃げちゃダメなんだよ、ヒーローは」
「で、でも、どうしたらいいの? ウチは……」と、涙が零れてきて。それに乗じたように三メートルの巨体もニヤリと「どうもしなくても、お前は弱虫なんだよ。生意気にも俺に喧嘩売ろうなんて百万光年早いんだよ。ほらほら、何泣いてんだよ? 泣き虫め」
と言うから……
「そうだね、やっぱりウチには……」と、涙を拭くも、
「何言ってるの? 君は男の子でしょ? ガツンと一発かましてやんなよ」と、完全に怒鳴り声になるミズキちゃん。「……怒ってるの?」と、ウチが言うと……
「当たり前でしょ、そんな奴に負けちゃダメなんだよ、君は。……君はもっと強いはずだよ。そんな奴より百万光年倍も。私を守ってくれたじゃない。君は自信をもったら」
ブン! と振り下ろされる腕。その腕はミズキちゃんを叩いた。直撃だった……
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