第十回 レッツ・勇気! ミズキちゃんの心に触れた時。


 ――廊下に倒れるミズキちゃん。痛々しい音も奏でながら。ウチは寄り添う、すぐに。



 するとミズキちゃんは、立ち上がろうとしている。身体は、ままならない様子だけど、


「ごめんね、君の気持ちを考えてなかったね、私……

 いきなり知らない世界に迷い込んで、いきなりこんな怪物と遭遇して戦えだなんて、無茶なお願いだったね。君にとっては、私の何百倍も怖い思いをしてきたんだね。元々住む世界が違ってたんだし。君は逃げて、振り返らずに。やっぱりこれは、私の問題だから」


 と……涙を浮かべていた。このまま逃げたら、またミズキちゃんは……


「そんなのダメ!」と、ウチは叫んだ。


千春ちはる……君?」「ウチは、守るんだ。難しいことはわかんないけど、ウチがミズキちゃんを守る。ウチは、ウチにとっては、ミズキちゃんは大切なお友達だから」


 その途端だ、ウチは広げた。


 白い翼を。それこそが天使の翼。そして、光り輝くステッキの先端。


 ピンク色。……感じるのだ。抑えきれない程の迸るもの。それが何かはわからないけれど、ステッキを構える。その先端は、三メートルの巨体……つまりサターンを狙う。


「俺に楯突くのか? 俺はつまりはお前だ。お前が持つネガティブな心を増幅した姿なんだ。だとすればどうだ? お前の思ってるお友達ってやらは、お前のことなんか便利な道具としか思っちゃいない。それが証拠に、お前一人に戦わそうとしてるだろ? 利用されてるだけなんだよ、所詮は」と低い声で、どす黒いイメージで言い放った。


 その直後に見るミズキちゃんの瞳……


「ミズキちゃんは今、変身できないから、ウチの力が必要なの。微力でも、ウチはミズキちゃんを守りたい。そうしないと、ウチはきっと後悔する、これから先ずっと……」


 蘇るミズキちゃんのママの言葉。


 ――敵を見誤るな。その答えがわかったような気がした。


 敵なんて、初めからいなかったんだ。これは、ウチが創り上げたものだから……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る