第八回 レッツ・わけあり。出発時の言葉は立派な伏線。


 ――敵を見誤るな。そうミズキちゃんのママは言っていた。それは出発ちょっと前。



 ウチだけに言った言葉……


 ミズキちゃんは、そのことを知らない……


「どうしたの?」と、ミズキちゃんは振り返り問う。ここはもう旧校舎。一階から探索を始めている。ウチは彼女の後ろを歩く。彼女が行く先を決めているの。手探りだから。


 敵を見誤るな?


 ウチは今頃になって、その言葉の意味を探っていた。何故ウチだけに言ったのか? ミズキちゃんのママはミズキちゃんを怪しんでいるのだろうか? ……まさか、と思う。


「ううん、何でもないよ?」と、ウチは答える。それでもって「ミズキちゃんは何故、サトちゃんを捜してるの? どうしてマジカルエンジェルになって戦ってるの?」と、何故そんなことを訊いたのか、ウチ自身もわからないけど、それでも、どうしても問うた。


 ニッコリ笑みを見せるミズキちゃん。


「約束……かな。実は、一度死んじゃってるんだ、私。サターンを道連れに自爆して。サトちゃんが蘇らせてくれたの、この身体も心もね。今度は私がサトちゃんを蘇らせる」


 その笑みの裏側を垣間見る。壮絶なイメージも。


 この物語が重くならないようにとミズキちゃんなりの配慮というか、精一杯の言葉。


 今が大事。今ウチらは生きている。


 同じ時を生きる仲間。そう思った時だ。窓の列から差し込む日差しが、色を変えた。薄紫から黒ずんだ背景へ。また現れた、三メートルの巨体。あの時と同じ……いや違う。


 今度はウチが……


 すると光り輝くポカポカとした、ウチの身体。えっ? 何? 何? 何?


千春ちはる君、叫んで、マジカルチェンジ・セットアップ!」と懸命なミズキちゃんの声。


「えっ、とだね……マジカルチェンジ・セットアップ!」と叫ぶ。これまでにない自分でもビックリするような大きな声。左の手の平が熱く……ステッキが手の平から現れた。



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