第六回 レッツ・変身! ついにその時が来たようなの。
――その前に整える必要がある。今はまだ貸し切りの露天風呂。二人だけの王国。
いつしか男女の境も、恥ずかしいという基準もなくなって、もう固有名詞の間柄。ウチとミズキちゃんという固有名詞。姉弟のような関係。ミズキちゃんから見たら、ウチは弟のような存在で。……でも、もうウチは、ボッチではないという実感が沸々と……
すると唐突に、
「明日から、一緒にサトちゃんを捜すの、手伝って欲しいの」
「ウチでいいの? ウチ、何の取柄もないし。きっと迷惑になるよ……」
ミズキちゃんは、ブーッと唸った。
「そういうのはナシ。ヒーローは、そんなこと言わない」
「でも……」
「それもナシ。
震えている? いくらマジカルエンジェルでも、怖いものは怖い。
ミズキちゃんは、やっぱり女の子。……ホッと安心に似たような感覚。こういうのを親近感と言うのかな? 或いは等身大とも言えそうで……
「うん、ウチで良かったら」
「ありがと、千春君」と、ギュッと背中から、ウチを抱いたミズキちゃん。
明日から、
RPGのような冒険の日々が始まる……それとも、スーパーモリオのような感じのアクションゲームのような? それにしてもブクブクと、気持ちよすぎるウチを背中から抱くミズキちゃんの柔らかい裸と、お湯の心地よい温度。「千春君……」とウチを呼ぶ、ミズキちゃんの声も遠くなって、そのまま、そのまま……真っ白になって夢現? ウチは叫んでいた。「レッツ・変身!」との掛け声とともに、コスチュームを纏うの。ちょうどその時だ。目の前にミズキちゃんと、お母さんも。ウチはいつの間にか運ばれていたの。
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