第五回 レッツ・カッポ―ン……整いましたとミズッチ。


 ――カッポ―ンという効果音から連想されること。それは、大きなお風呂。



 とある温泉街ならではの、大きなお風呂だ。ウチは今、気持ちよく浸っている。ここはサウナも完備で露天風呂もある、やはりスーパー銭湯ともいえる施設。実は民宿。


 お風呂へは、ミズキちゃんのママが案内してくれた。ここだと言って……


 大自然を連想する露天風呂。見上げれば、綺麗な夕陽。夕焼けのお空……


「ホントだね、一緒に入ろ」と、聞き覚えのある声。まさかと思って振り向くも、


「ミ、ミズキちゃん?」と、驚きの声。湯煙の中で、はだかんぼ。そりゃそうだ。ここはお風呂なんだから当たり前だけど。でもミズキちゃんは女の子で、あ、あの……


「恥ずかしがらないの、女の子同士なんだから。……って、あれ?」


 近づいてくるから、ウチだって勿論はだかんぼだから。いくら湯煙の中でもね、


「……男の子だったの? 君」


「やっぱりウチのこと、女の子と思ってたんだ、ミズキちゃん……」


 全部見られたことに対する恥ずかしさをも通り越して、シクシクと泣き出す程のコンプレックス。女の子と思われたことがショックで、でも事実そうだし、と思いつつも……


「ごめんね、ちょっと驚いちゃっただけだから、気にしないで」


 と、ミズキちゃんは慰めようと、精一杯の声を掛けてくれる。「それにほら」と、後ろから身を寄せるように、ウチを包んでくれた、湯の中で。背中に感じるミズキちゃんの裸の感触。「こうすれば、お互い見えないでしょ」とは言うものの、耳元の息遣いが……


 少し治まった時には、とても心地よく。懐かしさを感じる幼少期に戻った感覚。少しお姉ちゃんと一緒にお風呂に入った感覚になってきた。すると……


「まだ訊いてなかったね、君の名前」


千春ちはる松崎まつざき千春。この春から小学六年生になったの」と答える。年齢的なことも含め。


「千春君か、いい名前だね。それに、やっぱり私が少しお姉ちゃんね。この春から中学生……になったから。実はね、私、幼馴染を捜してるんだ。さとちゃんっていう子なの」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る