第四回 レッツ・お宿へ。とある温泉街と愉快なお泊り。


 ――宿泊前提。ミズキちゃんと共にウチは歩む。見渡せば旅館。



 民宿もチラチラと。ここは異世界……と、ミズキちゃんは言っていたけど、だったら初めて見る場所の筈だけど、この辺りで懐かしさを覚えるのは何故だろう? 幼き日の記憶が誘われそうな、とある温泉街。ここに住んでいたような気もしてきたの……


「もうすぐだよ、お婆ちゃんのお家。と言いながら、今は私のお家でもあるの」


 変身の解けたミズキちゃん。ボブはそのままの、ウチより少し大きくて……いやいや少し身長が高くて、やっぱりウチよりお姉ちゃんなのかな? と、思いつつも到着した。


 旅館というには小さいけど、情緒溢れる建物で、ウチは好きになれそう。そんな中をこだまする「たっだいま!」と、元気溢れるミズキちゃんの声。ウチは「こんにちは」と囁く程度の声……するとミズキちゃんは「こら元気ないよ、元気があれば何でもできる」


 ここは銭湯? 確かに暖簾のれんを潜った。


 銭湯なら頭にスーパーが付くか、温泉旅館とも言っても過言ではない程。そして何より対面……の筈だけど、お婆ちゃんは? 辺りを見渡すも、キョロキョロと。


「君、正面だよ、正面」と、ミズキちゃんは言う。でもでも正面には、とっても綺麗なお姉ちゃんが。ワンレンロングのスラッとした白衣の……「ミズキ、ちゃんと紹介しなさいね。私がこの子のお婆……って、こらミズキ、お母さんでしょ、お母さん」


「だって魔法少女のお家って、大抵がお婆ちゃんと二人暮らしという演出だから。それでね、この子お泊りさせてあげて欲しいの。さっきもサターンに襲われて危なかったの」


 と、いうことは、あの巨人の名前はサターンと言うの? と、質問しようにも、ミズキちゃんはお母さんとの会話に熱中。ママ友が集う井戸端会議にも似たような感じ。


「でもおかしいの。サターンは姿形がなくの弱い心、迷う心、あと悪い心の中に入って働きとして現れる筈なんだけど、黒い巨人になってて、有り得ない程の強さで……」


 と、ミズキちゃんは説明する、懸命に。お母さんに。或いはママかな。ミズキちゃんもお母さんのこと、ママと呼んでいるから。それにしてもあの時の、黒い巨人の正体は?



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