第十四回 汐見夏衛著 あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。

 どうも、外の暑さにビビってるうすしおです。生け花とTOEICを楽しみながら今日もやっていきましょう。今回紹介するのは汐見夏衛さんの「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」です。


 ライト文芸小説、そんで感動系の小説はたまに齧って読むんですけど、素直に面白いって思います。すごく面白かったです。

 

 中学二年生の夏休み前という中途半端な時期に転校した主人公・宮原涼くんがクラスメイトの加納百合と出会う。涼は百合に惹かれていくが、その女の子にはとある秘密があって……。という概要です。


 いや、序盤は恋する男子っていいねえひゅーひゅー!(肘つんつん)みたいな謎のテンションで読んでいたんですが、とある学校での行事で、涼と百合は図書館で特攻のことについて調べ物をすることになるんです。


 特攻と聞いて、思い浮かべるのはそう、戦争の事ですよね。なんとこの作品、第二次世界大戦の特攻兵、というのが一つテーマになっているんです。作中にも、戦時中の日本の歴史や、特攻兵の遺書についても描かれています。僕が読んだ中だと「永遠のゼロ」や「同志少女よ、敵を撃て」など、戦争に関する小説は結構あると思うんですけど、ライト文芸で戦争を扱っている作品はあんまり読んだことないなーって思いました。


 この戦争に関する描写が、この作品の登場人物の百合の言葉の重みを増していたと思います。自分たちは「死」なんて言葉を軽々しく使っちゃうときありますけど、戦争のことを知ると、自分がどれだけ有象無象の人間が何とか作り出した平和に依存してしまっているか、というのを認識させられちゃいますよね。中学を卒業しちゃったりすると、平和学習とかする時間が無くなっていっちゃうんですよ。僕なんてそういう時期でも普通に授業があって、試験返却にひーひー言ってましたし。


 でも、平和学習とかで「昔はこんなに酷いことが起こっていたけど、今はとても平和なので、今に生まれて良かったですはい句点」みたいに思っちゃうのって後ろめたさがあってすごく嫌だったんですよね。そういう気持ちを持った人にとって、凄く刺さる言葉があるんですよ。


 それは、涼君の言った言葉で、「恩送り」というものです。僕達は恩を受け取ったら返さなきゃ、って思うことあるじゃないですか。でも何かを理由にそれができないことがありますよね。そんな気持ちに寄り添ってくれるのが恩送りという言葉です。恩送りとは……って書こうとしたんですけど、これは読んでもらって確認していただいた方がいいですね。百合の心境の変化、選んだ道にもつながってくるので、あえて書かないでおきます。


 二人のラブストーリーとして見ても面白いです。最後はまさかの展開で、僕はとても面白かったです。でもちょっと突飛に思えたかな~ってなったんですけど、コレ続編なんですね。そりゃ突飛に感じる部分もあるか。でも、前作の「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」を読んでいなくても伏線回収的に読めて面白かったです。


 とにかく、様々な人たちの幸せを、そして感謝や人々の幸せの循環を願わずにはいられない、そんな作品です。


 ……あれ、凄い今日真面目……。


 次回の備忘録「小林泰三著 アリス殺し」


 


 

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