気付くな危険
亮兵衛
とある参加者の
考えるな。
何も考えるな頭を働かせてはいけない。
考え至ってしまえばあの男のような末路を辿ってしまう。
しかし考えないようにと念じれば念じるほどに頭の中ではしっかりとイメージが浮かび上がっていく。
どつぼにハマるとはこういうことなのか。
違う、頭を空っぽになど意識的にできることじゃない。
もっと別のことを考えるんだ。
楽しいことを思い浮かべよう。
そういえば明日から期待していた今期の新アニメが放送されるじゃないか。
前々からチェックしていた作品だ。
原作の頃から追いかけていた作品が映像化されるなんておれの目も捨てたもんじゃないな。
監督は誰だっけ?
制作会社はどこだった?
散々前情報を漁っていたはずなのにド忘れしてしまった。
だが初めてその情報に触れたとき期待に胸が膨らんだことを覚えているので、きっと名の売れた実績ある制作陣のはずだ。
これは人気作になるぞ。
飛ぶように売れるだろうからグッズ展開にも期待できる。
ファンとしては資金をたくさん用意しておかなくては。
そう、軍資金が必要なのだ。
そのためにはもっと稼ぎのいいバイトを見つける必要があったんだ。
貯め込んで一ファンとして作品の売り上げに貢献するんだ。
それだけのはずだったのに、どうしてこんなことに。
高額バイトには裏がある。
そんな話などごまんと流れていてわかりきっていたはずだ。
自分は大丈夫。
自分はひっかからない。
そんな根拠のない思い上がりが自分の思考能力を麻痺させていた。
どうせなら今この瞬間も麻痺させてほしい。
そうすればこんなクソみたいな思い悩みをすることもない。
この状況を救ってくれ。
・・・違う!また考えてしまっていた。
油断するとすぐ思考が軌道修正してしまう。
他のことを考えろ他のことを考えろ他のことを考えろ。
そうだ監督だ、あのアニメの制作陣のことを考えよう。
どうしてこんなに期待していたのに、そんな大事な情報を忘れてしまったんだ。
・・・あれ、おれが忘れていた記憶って——————。
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