第26話 ミッション6、セカンド作戦会議
普通に話しても味気ないので、部屋の明かりを消して懐中電灯を三人の真ん中に突っ立ててみた。
うーん、なんか違う。
これじゃまるで怖い話をする時みたいじゃないか。
そういう話は俺は超がつくほど苦手と言っても過言じゃない。
昔修学旅行の時に同室のやつらがそういう話をした時は、ふとんの中にくるまっていたくらいだ。
セイランさんの顔に至っては青白くなっていて普通に怖い。
本人には言えないが、お化けにすら見える。
こころなしか、首筋が寒い。
腕を触ってみたら鳥肌も立っている。
よし、辞めた。
普通に明かりをつけ直そう。
「それ、なんで火がないのに光ってるの?」
「東洋の神秘だ」
めんどくさいから、誤魔化しておいた。
今からセイランさんに電気の説明をする時間はない。
そんなことをしていたら、作戦会議の時間がなくなる。
本末転倒してはいけない。
俺らの目的はあくまでアネラさんに会うことだ。
間違っても物理の授業をしに来たわけじゃない。
「明日の舞踏会だが、アネラさんも出るの?」
とりあえず、肝心なことについてセイランさんに聞いてみる。
話してみたらこの公爵令嬢は意外と気さくなので、俺は口調をいつものものに戻した。
よくよく考えたら、俺らは今ヒノモトという国の貴族なのだから、そんなに
逆に貴族らしく振る舞うためにも、ここは少し威厳を見せたほうがいい。
「おそろく出ないわ」
「ダメじゃないか!?」
「話は最後まで聞いてほしい」
そうだった。
女の子の話を最後まで聞かない男はモテないんだった。
俺としたことが、作戦前夜ということで熱くなりすぎた。
ここはクールダウンを兼ねて水を飲もう。
「ないじゃないか!?」
「落ち着け」
これで落ち着いてられるか!?
男子高校生の夜に渡した水はともかく、いつの間にか俺のペットボトルが空っぽになっている。
「まあまあだったわ」
なぜだか、無性にセイランさんのおっぱいを鷲掴みにしてやりたくなった。
人のH2Oを飲んどいてまあまあとはなんだ?
食べ物がないからと言って、飲み物でお腹を膨らませようというのは姑息すぎやしないか。
夜更かししてないで、さっさと自分の寝室に帰れ。
まじでどうしよう……。
このままだとほんとにこの世界の水を飲む羽目になるぞ。
男子高校生の夜はこの事態を察したのか、固く
その様子だと、俺に返す気はさらさらなさそうだ……。
「なぜ盗難があった時に舞踏会なんかが開かれるのか考えて欲しいわ」
悪びれもせず、セイランさんは潤った唇を軽く舐めてさっきの話を続けた。
分かるよ、ほんとは美味しかったんだね、
にしても、確かに考えていなかった。
言われてみれば妙だ。
「陛下は今回の事件は身内の犯行だと思っているわ」
おーーーい!!
めっちゃくちゃ当たってるんじゃないか!?
「どこかの貴族か王宮によく出入りする人物の犯行と踏んでいるわ」
おーーーい!!
なんでまた犯人から遠ざかってるんだ!!
王宮によく出入りする人物というか、王宮に籠っている人物だよ!!
ったく、なんで犯人を特定するあと一歩のところで足踏みしてるんだ、この国の王様は。
「アネラ様は陛下に溺愛されているから、その寝室の警備はすごく厳重なの。それなのに、あれだけの宝石類を人知れずに持ち出せたのは警備の状況をよく知っている者にしかできないわ」
警備の状況をよく知っている者というか、警備されている者だ、犯人は。
まあ、死んでも言わないが。
「そこで舞踏会で貴族、商人たちを集めて、ある者に犯人を探してもらうわけ」
「ある者?」
「天下の吟遊詩人、タケル・サイトウ」
おーーーい!!
あいつじゃないか!?
しかも、どう聞いても日本人の名前じゃん!!
なんで俺ら以外にもこの世界に渡ってきた地球人がいるんだよ……。
もしこの世界を直に見ていなければ、どこかのマッドサイエンティスト以下略。
あれ?
男子高校生の夜が発言しなくなった?
「寝るな!!」
セイランさんの話に夢中で、男子高校生の夜のほうを見ていなかったけど、彼はぐっすり眠っていた。
作戦会議の最中に寝るやつがどこにいる。
いや、男子高校生の夜は肝が据わっているとでも考えておこう。
そう考えたらだんだんと心強くなってきた。
「寝てた」
男子高校生の夜はおぼろげな目を手で擦り、姿勢を正す。
今は彼のここからの活躍に期待しよう。
「その吟遊詩人は賢いのか?」
あれ?
男子高校生の夜が聞いていなかったはずのことについて質問してるぞ?
「話聞いてたの?」
おずおずと男子高校生の夜に聞いてみる。
もしかしたら、寝ていたのはあくまでふりで、実は真剣に作戦を考えていた可能性も否めない。
「そんな夢見てた気がする」
おーーーい!!
夢の内容に頼って話に参加してくるんじゃない!!
おまけに気がするって、もはや現実に掠ってもいないじゃないか!!
奇跡的に夢と現実が繋がったな!!
「賢いなんてレベルじゃないわ……今まで聞いたこともない話をいっぱい語ってくれるすごい人だわ」
当たり前だ!!
あいつの頭には日本のクリエイター達の叡智が詰まっているからな!!
それをまるで自分が考えたように話したら誰でも尊敬するはずだ。
「陛下の計らいでそのタケル・サイトウが舞踏会で珍しい話をすることになっているけど、実は聴衆の反応を見て犯人を当てる手筈になっているわ」
つまり舞踏会は犯人を探すための罠ということか。
そんなところに俺ら
「俺らはいつアネラさんに会えばいい?」
男子高校生の夜はやけに核心をついてくるな。
ここは彼が動じていない証とでも捉えておこう。
「犯人が分かった瞬間、きっと会場がパニックになるから、その時に三人でアネラ様に会いに行くわよ」
どうしよう……。
言えない……。
犯人はその舞踏会に出ないなんて口が裂けても言えない……。
「その作戦で行こう」
男子高校生の夜は何も知らない。
アネラさんが自分で宝石類を持ち出したことを俺は男子高校生の夜に話していない。
だって、恥ずかしいじゃん!
俺がついていながら、アネラさんはオタクになっただけでなく、廃課金者にレベルアップしたなんて知られたら、俺は二度と男子高校生の夜のノートパソコンを借りる勇気が出ないだろう。
「異論はないのね」
俺が何も言えないまま、作戦はこうして決まってしまった。
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