第19話 作戦指令9、ナースコールを鳴らせ!
「さすがしゅん!」
「走ってる時に話しかけるな!!」
「さっきからずっとビビっていたふりをしたのも、こうやって薄暗い中で私を油断させ高潮させるためのフェイクですね!!」
「そんな高度な心理戦やってないわ!!」
「いやんっ♡」
パニクって久しぶりにアネラさんのおっぱいを触ったら、思わずいらっとする懐かしい言葉をかけられた。
なんなら、さっきのゾンビまでもが俺の
俺が探偵だとしても、ゾンビを助手にしたりはしない。
どう考えてもやつが犯人だ。
「あそこに明かりがあります!」
「こら、実況すんな……!」
片目だけ開けて、アネラさんの指さしてるところを覗いてみると、中が電気に薄く照らされているこの
にしても、この
まるで
どれだけ内部構造がおかしいかというと、
きっとこの病院が廃れたのは患者に不親切なこういう設計が原因なのだろう。
体調が悪いのに、病院に入ってからいつまで経っても受付に辿り着けないようなら、そりゃ転院するわな。
俺だってそうする。
「いや、違うかも……」
「しゅん!」
とりあえずその名探偵が意味深な言葉を言い出した時に、そいつに向けるような視線はやめろ。
独り言が恥ずかして言えなくなるから。
いや、俺が言いたいのは、もしかしたらここは
お化け屋敷の入口の受付とは同じ受付であっても、対象は
覗いてみる価値はある……。
「あの……すみません……」
「……」
フロントデスクに手を置いて、恐る恐る声かけてみたが、誰も返事してこない。
ちょっと寂しい。
「しゅん!」
「今は話しかけるな!
「ど……しま……したか……」
「だから
アネラさんがしつこく話しかけてきたと思って振り向いたら、ナース服を着たなにかが立っていた。
肌が酷く爛れて以下略!!
「逃げるぞ!!」
「しゅん、手が……」
「まだそんなことを論じているのか!?」
急いでアネラさんの手を掴んで、全速力で走り出す。
後ろのナースのゾンビが執拗に「ナース……コール……ですか?」と言っていたが無視だ。
彼女は生前ナースコールを鳴らされすぎて過労死したに違いない。
おかげで、受付まで来たやつがナースコールを鳴らすわけがないことに気づいてないようだ。
いや、そういう可能性もあるかも。
ずっとナースコールを鳴らしても誰も来ないから仕方なく受付まで来たというパターンも有り得る。
それはきっとこの病院が廃れた理由の一つだ。
経営悪化によりナースの人員不足が深刻化し、それが廃院に直結したに違いない。
「なんだここは……」
『宿直室』と書いてあるプレートの下のドアを走り抜けたら、とんでもない光景が目の前に広がっていた。
「ナ……ス……コール……でしょうか……」
「ナースぅ……コ……ルぅ……」
「なす……コール……ですか……」
とんでもない数のナースがいた。
そのどれもが肌が酷く爛れて緑色になって以下略。
目玉がくり抜かれているやつまでいる……。
ナースの数足りてんじゃないか!?
だったら患者が受付まで来る前にナースコールに気づいてあげて!?
「しゅん!」
ダメだ……怖すぎて、体が動かない……。
「気が付きました?」
頬に冷たい感触がして目覚めたら、アネラさんの顔が見えた。
水色の瞳が潤んで、華奢な唇が少し輝いてる。
まるで
どうやら、俺はその後気を失って、こうやってアネラさんの膝枕で寝かせてもらっていたみたい。
「ソフトクリーム食べますか?」
アネラさんは左手に持っているソフトクリームを舐めながら、右手に持っているソフトクリームを俺に差し出す。
彼女の唇が輝いてるのは、きっと溶けたソフトクリームが光を反射しているからだろう。
そして、俺に差し出すほうのソフトクリームも溶けかけて、盛大に俺の顔にその雫をばらまいている。
アネラさんがソフトクリームを知っているということは、きっと俺に黙ってコンビニで買ったことがあるからだろう。
それも、俺の部屋に戻る前に食べきっているに違いない。
だが、俺が気になっているのはそっちではなく―――
「どうやってそれを買った……?」
「王宮にあるルビーのアクセサリーを両替しときました!」
なるほど……アネラさんは今まで換金していた金を全部『グランドオブガン』に注ぎ込んでいたから、ソフトクリームを買う金があるのはおかしいと思ったら、
そろそろ王宮の宝石類が尽きるのではないだろうか。
「とりあえず貰っとく」
体を起こして、アネラさんからソフトクリームを受け取り、一口舐めてみる。
すると、口の中いっぱいに広がるバニラの濃厚な香りが脳を刺激する。
この瞬間、俺は理解した。
アネラさんは凄く機嫌がいい。
さもないと、こんな美味しいものを俺に分けてくれるわけがない。
お化け屋敷で失神したけど、アネラさんに外の楽しさを知ってもらえたみたいで良かった。
「しゅん!」
「ああ、ちゃんと美味しいよ」
だから、まだ体調が悪くて味覚がおかしくなっているのか!? というふうに心配そうに俺を見るんじゃない。
お前の太っ腹ぶりに驚いてただけだから。
「次は何乗る?」
「しゅんは、大丈夫ですか?」
「お前に楽しんでもらうために来たんだから、これくらいで帰らないよ」
俺の返事を聞いてアネラさんは目に見えて嬉しそうにしている。
ソフトクリームを食べる速度が三倍になったのが何よりの証拠だ。
「その前に……」
「なんですか! しゅん!」
「ハンカチ取ってくれ……」
さっきから溶けたソフトクリームが顔についてて気持ち悪いから拭いておきたい。
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