第8話 どうやら、私の見込んだ殿方は凄いらしい

おっぱいを揉まれている場合ではありません!」


 じっとしていられなくなって、窓を通して、自分の寝室に戻りました。

 早くコセキ制度をお父様に伝えなければ。


 今しゅんがいないから、おっぱいを胸と言う必要はないのですね。

 人のいないところまでお姫様らしく振る舞う必要はありませんよね!


 まさか、しゅんはあんなにすごいことを考えていたなんて……やはり、私の見込んだ殿方ですね♡




「コセキセイド?」

「はい、お父様、コセキ制度です」


 自分の寝室でしゅんから聞いた内容をまとめて、衛兵にお父様と朝すぐ会いたい旨を取り次いで頂きました。

 お父様は私に甘いから、どんなに忙しくても、会いたいって言ったら時間を作ってくれます。


 ただ、それで殿方が私に近づくのを禁止したから、やるせない気持ちです……。

 私だって公爵家のセイランさんみたいにパーティーにいっぱい出たいのに……。


 でも、今の私にはしゅんがいます!


「コセキ性〇?」

「いいえ、コセキ制度です」


 お父様ったら、国王なのに、下品な言葉を使いますね……。

 誰に似たのでしょうか。


「この国の財政を建て直せるというのはほんとか?」

「はい、財政どころか治安も良くなります」

「そんな馬鹿げた話はにわかに信じられないね……」

「お父様は私の言ったことを信じてくれないのですか……?」

「ち、違う! アネラの言うことは全て正しい!!」


 はい、落ちましたね。

 お父様は私の涙に脆いから、これで今までどれだけ私の主張を通したことでしょう。


 ただ、どれだけ泣いたふりして、殿方と会いたいと言っても、『自分の娘が淫乱になったとは思いたくないが……』とため息をつかれて終わりなんですよね。

 でも、大丈夫、今の私にはしゅんがいますから!


「ただ、偽りの情報を申告されたら……」

「いいえ、問題ありません。この国でコセキ制度を導入する際に、作成の段階は偽りの情報を自己申告されても、それが真実になるのです。だって、その方の言ってることがほんとかどうかを判断するためのものがないから、登録されたものをこれから正しい情報とすればいいだけの話です」


 と、しゅんが言ってたから、間違いありません!

 しゅんに言われた時は、胸に矢が刺さったような感覚すらしましたもん。


「確かに……ただ、民はみんな忙しい……仕事を放ってまで登録しにくるとは思えない」

「メリットを提示すればいいのです」

「ほう?」

「コセキに登録されている者は税金二割減にすれば、皆様は申告しに来ると思いますよ?」

「それなら、税収は減らないか?」

「いいえ、この国は今までコセキ制度がないから、民の収入はほんとのところ、どうなっているか分っていません。今より税金二割減という甘い蜜でコセキに登録させたあとに、皆様の収入もきちんと調査してその方の情報として記録したら、収入を誤魔化したり、少なく申告したりするのが難しくなって、税収はかえって増えると思います」

「ア、アネラ、これはほんとに、全部お前が考えたやつなのか……」

「はい、コセキ制度という名前まで私が考えたのです」


 今はまだしゅんのことを話してはいけません。

 私の寝室のベランダが異世界の殿方の部屋に繋がっているなんて、お父様に話したらまず部屋を変えられるでしょう。


 しゅんに会えなくなるのは耐えられません!

 しゅんのおっぱいを揉む手つきが凄くいやらしくて気持ちいいと思ったら、こんなにも賢くもあるなんて、さすが私の見込んだ殿方です。


「では、さっそくコセキ制度とやらを実行に移そう」

「『とやら』ではありません。『コセキ制度』です」

「あ、はい……すまない」

「分かってくれたら問題ありません」


 ほんと、人の言ってる言葉をちゃんと覚えられないなんて、お父様も歳ですね。

 でも、謝ってくれたから、許しますが。


 これで、この国をむしばんでいる慢性的な財政難を解決できるといいのですが……。




「「「税収二割減!! 税収二割減!! 税収二割減!!」」」

「これは一体なんなのでしょう……」


 自分の寝室のベッドで寝ていたら、轟音が響いたから、急いでベランダに赴きました。

 すると、城下町は『税収二割減!! 税収二割減!! 税収二割減!!』と大声で復唱する人々でごった返しになっています。


 お父様に提案して、コセキ制度に登録する方が現れるまでしゅんに会うのを我慢して、見守るつもりでいたのに、まさか三日目にしてこの光景です……。

 『税収二割減!! 税収二割減!! 税収二割減!!』と唱えながら行進する人々の行列は少し狂気じみていて恐怖を感じます……。


 これがしゅんの力なのですね……。

 人々を狂わせるほどの力を、しゅんは持っているのですね!


 これなら、コセキ制度が軌道に乗るのは時間の問題です。

 もう徹夜して、お父様とコセキ制度について議論する必要はないですね。


 コセキ制度について話すという名目だから断れないけど、お父様はたまに『わしのこと好きか?』と聞いてきて、返答に困ります。

 これでやっと、また夜にしゅんに会いに行けますね!


 私の見込んだ殿方はやはり凄いです。

 この国は今、『税収二割減!! 税収二割減!! 税収二割減!!』という呼び声とともに、変わろうとしています。


 それもこれもしゅんの知恵によるものです。

 離してさしあげるものですか! 


 恥丘人の優しい顔立ちは私の好みのど真ん中ですし、なんだかんだで性格も優しいしゅんは私の運命の殿方としか思えません。

 なにより、一緒にいてすごく楽しいです。


 しゅん、あなたのような素敵な殿方は一生離してさしあげません♡


―――――――――――――――――――――

☆が700を超えたので、第8話を書きました!!


それでは、☆が800を超えたタイミングで、またお会いしましょう!!

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