第7話 どうやら、戸籍制度に興味があるらしい
「や、やめろ……!!」
「やめて差し上げません♡」
『くっ殺の姫騎士は恥辱の白〇液に塗れるまで〜III』のヒロインのランチェーラさんのように、俺の両手を上げて後ろ手に拘束したまま、アネラさんは俺の膝の上に座った。
淫靡な水音とともに、蛇が這うような感覚が俺の首筋を襲う。
アネラさんのフェロモンを
その発生源である彼女の銀色の髪は少し乱れていて、何筋かが俺の頬にかかった。
「やめろって言ってるんだ!!」
「いやんっ♡」
なんとか彼女の手を振りほどいて、
羞恥心と戦いながら『くっ殺の姫騎士は恥辱の白〇液に塗れるまで〜III』を音読してやったから、報酬はちゃんと払って欲しい。
日本は契約を重視する国だと、アネラさんのおっぱいに教えこんでやらないと。
「つ、ついに攻守交代ですか!?」
「野球みたいに言うな!!」
「ヤキュウ? って聞き返しませんよ!」
「性欲が知識欲を上回ってるぞ!!」
「いやんっ♡」
アネラさんが聞き返さなかったので、彼女のおっぱいに制裁を下した。
知らない言葉を聞き返されると呆れたりもするけど、聞き返されないとそれはそれでいらっとする。
「さすがしゅん! 私の見込んだ殿方ですね!」
「なにを基準に判断してるんだよ!?」
「いやんっ♡」
おっぱいを揉むだけのマシーンだと思われたみたいで、多めに制裁を下す。
いくら下しても足りないのだが。
「ところで、しゅんが言った『ムコセキシャ』ってなんですか?」
「急に知識欲が勝ったらそれはそれでムカつくぞ!!」
「いやんっ♡」
俺の首筋を舐めていたかと思えば、最初に俺が放った『無戸籍者』という言葉を聞いてくるあたり、ずいぶん器用な女の子だと思わざるを得ない。
性欲と知識欲を共存させるという高度なテクニックを、アネラさんは所持しているらしい。
いらっとしたので、以下略……。
「戸籍がない人のことだよ」
「コセキ?」
「ああ、国が国民を管理するための制度だ」
「詳しくお願いします!」
なぜだか、アネラさんは興味津々のようだ。
ムッツリドスケベ王女に知識欲があったことは、今までのやり取りで知ってはいたが、まさか部屋に女の子の香りを充満させるほど発情している状態で、学校の先生に授業で分からなかった箇所を聞くようなノリで質問してくるとは思わなかった。
「名前とか生年月日とか出身地とかを記録したやつだよ。お前の国にはないのか?」
「ありません……」
「それで、なにかあったら照合できるわけだ」
「なんて先進的な発想なんですか……!」
「お前の世界が500年以上遅れてるだけだがな!!」
「いやんっ♡」
聞き返された時点で、アネラさんの国では戸籍制度がないのはなんとなく分かっていた。
アネラさんの国の人口は分からないけど、大勢の人間のデータを記録するのは膨大な労力と金が必要だから、そもそもやろうとは思わないだろう。
戸籍制度のメリットを知らない限り、だけどね。
「戸籍を作れば、犯罪を犯した人間が身分を偽れなくなったり、他国の密偵が容易に活動できなくなると思うよ?」
「そんなことが……」
アネラさんらしくなく、何か考え込んでいる。
その間、俺は
「でも、もし最初から偽りの情報を提出されたらどうしましょう……?」
「そのままでいいんじゃない? 例えば、お前の国が戸籍制度を導入するとしたら、作成の段階は偽りの情報を自己申告されようが、それが真実になるわけだ。だって、その人の言ってることがほんとかどうかを判断するためのものがないから、登録されたものをこれから正しい情報とすればいいだけの話だよ?」
「凄い……しゅんってほんとは頭いいんですね……いやんっ♡」
俺はただのおっぱいマッサージマシーンだと思われていたのか……残念だ。
にしても、こういうふうにおっぱいを揉みながら、自分の知見を教えるのってすごい優雅な気分になれるんだな。
アニメとか漫画を見ながら、自分なりに色んなことを考えた甲斐があった。
「しゅん!」
「なんだ?」
「胸を触りながらでいいので、みんながコセキに登録したくなる方法を教えて欲しいです!」
「最初の一言は余計だ!!」
「いやんっ♡」
「普通にメリットを提示すればいいだけだ」
まあ、優雅な気分をもっと味わえるなら教えてやらんこともないしね。
最初の一言は余計だけど……。
「メリットをですか?」
「例えば、戸籍に登録されている者は税金二割減とかにしたら、みんなこぞって申告しに来ると思うよ?」
「それなら税収が減りませんか……いやんっ♡」
ムッツリドエム痴女のくせに、頭のいいこと聞いてくるのは違和感しかないから、とりあえずおっぱいを掴んでいる両手にもっと力を入れた。
「そもそも、お前の国は今まで戸籍がないのなら、実際の収入がどうなのか分からないだろう? 今より税金二割減の誘惑で戸籍に登録させたあとに、個人の収入もきちんと調査して本人の情報として記録したら、収入を誤魔化したり、少なく申告したりするのが難しくなって、税収も逆に増えると思うよ」
「……帰ります」
「え?」
少し考え込んで、アネラさんは急に立ち上がりベランダの方に向かう。
いきなりのことだから、寂しさを少し感じながらも、俺はぼんやりと眺めることしかできない。
「ありがとうね、しゅん」
そう言って、アネラさんは窓を開けて、向こう側へと消えていった。
なぜか、アネラさんをやっと帰すことが出来たのに、胸の奥によく分からない感情が
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☆が600を超えたので、第7話を書きました!!
それでは、☆が700を超えたタイミングで、またお会いしましょう!!
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