第3話 どうやら、貴族でも週に2、3回だけらしい

「これが私から見た異世界―――恥丘ちきゅうなのですね!」

「俺までもが地球人に謝りたくなるような言い方はやめろ!!」


 アネラさんがなにげなく窓を閉めると、なぜかガラスを通して見えるベランダはいつものような穏やかな光景に戻った。

 それをアネラさんが振り返って見つめては、感嘆の吐息が漏れ出たわけだ。


 自分の退路を断つようで、実は俺の退路を塞ぐつもりであろう、背筋がぞっとするような行為をしたアネラさんは、艶かしい笑顔を浮かべる。

 その笑顔に、俺はごくりと喉を鳴らす。


 ついでだし、左手もアネラさんの余ってるほうの胸に添えておく。

 この瞬間ほど、手と胸の数が一致していることに感謝したことはない。


 いや、もうやめよう……やめるのはもちろん、胸を触ることではなく、おっぱいを胸と呼ぶことだ。

 なにも自分の思考の中でも紳士ぶる必要はない。俺は魅惑的でたわわなアネラさんのおっぱいを揉んで悟ったのだ。


「ふーん、色ボケお姫様だと思ったら、案外察しがいいんだね」

「その色ボケお姫様の胸を両手であまねく鷲掴みにしている殿方に言われたくありませんね♡」

「知ってるか? 日本ではことの発端を作ったほうが悪いんだよ?」

「私の国ではそれに甘んじるのは貴族ですわー」


 なぜだろう……『貴族』という言葉が悪口のように聞こえてしまう。

 いや、それはさすがにないだろう。このドスケベ淫乱むっつりさんがそんな皮肉を言えるわけがない。いや、あってほしくない。


 このお姫様は肝が据わっている。


 俺の知っている(アニメや漫画に登場している)姫様なら、間違いなくこの状況に涙目になっているはず。ましてや、自分から異世界に渡ってくるはずがない。

 それに対して、アネラさんはここが異世界を認識した上で、躊躇ちゅうちょなくベランダの境界線を超えたのだ。


 いや、もしかしたら、それは俺のただの勘違いかもしれない。

 それか、俺は自分が揉んでいるおっぱいの持ち主が真っ当な人間であって欲しいと思っているだけなのかもしれない……。


 アネラさんなら、男に飢えすぎているという可能性も捨てきれないしね。


「そういえばさ―――」

「はい、なんでしょう?」

「それ、俺が質問する度に言ってないか?」

「この状況で普通に質問してくるしゅんが悪いと思いますよ?」


 この子はほんとにバカなのか、賢いのか分からなくなってきた。


 ――ずっと優しく私の胸を揉みながら色々と話をしてくれていると思ったら、それも今こうやって私の注意を逸らして、激しく私を高潮させるためのフェイクですね!!


 そう言われた時、こいつは知能指数が著しく低下しているんじゃないかと正直に思った。

 いや、低下しているというのはもともと高いみたいになってしまうから、ここは低空飛行を維持している、と言ったほうが語弊がないだろう。


「それはさておき、お前がいる世界、というかお前の国はみんながどれくらいの頻度でお風呂に入ってるの?」


 自分にとって都合の悪いことをなかったことにしようとしてるわけじゃないよ?

 俺はただ、アネラさんをベランダの向こう側に帰せないのであれば、興味のあることを一通り聞いてみるつもりだ。


「みんなお風呂に入ってないですよ?」

「今すぐ帰れ!!」

「いや、私はちゃんと毎日入ってますよ!!」

「じゃ、あと少ししたら帰れ!!」

「明らかに態度変えるのやめて欲しいです!」

「普通な反応に文句を言われても困るんだよね……」


 良かった……私が揉んでいるおっぱいが綺麗なままで。

 今考えていることを誰かに知られたら、おっぱい星人と言われかねないけど、そんなエスパーはいないだろう。


「平民は週に何回か水かお湯で体を拭いてると聞いたことがあります」

「やはり中世みたいな世界だね―――お前の名も無き世界は」

「いや、ちゃんと名前はありますよ? じょせい―――」

「―――今度は最後まで言わせないぞ!!」


 ったく、油断も隙もない。

 こいつは隙あらば俺の心臓が飛び出しかねない下ネタをぶち込んでくる。


「貴族は週に2、3回自分の屋敷にある風呂場で体を清めていると思います」

「それなのに、お前は毎日お風呂に入ってるのか? 見栄張ってないか?」

「見栄を張る王族はどこにいましょうか?」

「そうですか……ちゃんと自分の身分に感謝しろよ? お前が姫様じゃなかったら、今すぐこの手を引っ込んだところだからね!」

「あら、私が殿方と接することを禁じられているお姫様じゃなかったら、しゅんはこの胸を触ることはなかったんですよ♡」

「―――すみませんでした!!」


 これ以上なにか失礼なことを言おうものなら、私の胸はもう触らせないぞと言わんばかりの圧力をかけられて、俺は脊髄反射のように平謝りしてしまった。

 もちろん土下座したくても、両手が貼り付けられているので、できそうもないのだが。


 この子、俺の足元を見てやがる……。

 最初は自分から俺におっぱいを触らせたのに、俺がちょっとだけ、それに甘んじて堪能しているのを察知したとたん、立場をさりげなく逆転させやがった。


 やり手だ……。

 でも、これくらいのしたたかさがなければ、王宮の中の権力闘争では生き残れないだろう。


 エメラルドリア王国はとんでもない怪物を生み出してしまったな……こんなに柔らかくて手が沈んでしまうようなおっぱいを……じゃなくて、影の権力者と言われても信じてしまうようなむっつりドスケベ敏腕王女。

 この手のひらに感じる果実の感触は一々俺の思考を撹乱ジャミングしてきて、鬱陶しい。


「今度は私から質問いいですか?」


 右手を挙げたアネラさんの脇があらわになった。

 もともとノースリーブのネグリジェを着ているから、手を少し動かすだけで、男心をくすぐる女の子の艶かしいところが目につく。


 新雪のような白い肌にうぶ毛は一本すらなく、きめ細かい肌は俺の目を奪った。

 銀色の髪の一筋が水色の瞳を遮って、ラベンダーの香りが怒涛のように押し寄せてくる。


「はい、なんでしょう?」

「しゅんのあそこはなぜ大きくなってるんですか♡」


 こいつ……。


 分かってるくせに。

 分かってやがるくせして……。


 わざと言ってるな……!!


―――――――――――――――――――――

まさか『ベランダ姫』がたった2話でフォロワー500人、☆100を突破するとも思いませんでした。


これなら、いっそみんなで一緒に『10話で☆1000を突破する伝説』を作りませんか!?

それは確実に☆を押した方々が作り上げ

た―――カクヨムを震撼させる伝説になると思いますよ!!

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