第2話 First/ 不手際

   2.First/ 不手際


 異世界に転移し、勇者になる……というのが定番、というか、王道のはず。

 それが、勇者の父親……だって?

 そんなボクの混乱をよそに、全裸のアルティはボクに飛びついてきた。きっと裸でいることが恥ずかしく、体の隙間を埋めて見られないようにしたのだ。

 でもその瞬間、グランシールはお風呂に入ったときのように、覆いを解いてボクも全裸となっており、直接彼女の柔肌を感じていた。

 彼女の温かさ、柔らかさ、そして弾力を感じて、ボクの脳は完全にショートしていた。むしろ色々なことが一遍に起きて、処理する能力を超えたので考える力を失っていた。

 はっきり言って、ボクは童貞である。それは十三歳、また両親から虐待をうけていたこともあって、異性に興味をもつ……といったことも憚られた。むしろ、学校でも仲間外れにされ、誰かと……なんて、想像もできなかった。それが今、アイドルかと見紛うばかりの美少女と、こうして裸で抱き合っているのだ。しかも、この先を意識しながら……。

 ボクはその体に腕をまわすことさえ躊躇い、むしろ体が硬直したように、身動きすらとれない。

 しかし、少し距離を開けるようにした彼女がそっと目を閉じ、ボクに唇をつきだしてきたとき、ボクの脳はスパークしていた。


 背はボクの方がやや高く、顔はほぼ同じ高さ。ボクは緊張で震えつつ、ゆっくりと彼女の唇に、ボクの唇を重ねる。柔らかい……でも、相手のそれはかさつき、また口を丸めようするため、皺も寄って硬さも感じる。それは彼女も初めてで緊張しているためのようだ。

 ボクはそれで逆に冷静になることができた。ボクがリードしなくちゃ……と。一度唇を放す。でもそれは、ボクが舌で自分に湿らすすため。そうしてふたたび彼女に押しつける。

 何度も、何度もキスを繰り返すうち、彼女の唇から、身体から緊張がほどけていくのが分かった。

 ボクにしがみつく、彼女の手が緩んで、体にすき間ができると、ボクはそこに手を滑りこませた。胸をさわりたい……。その欲望を抑えきれず、右手で彼女のそれを鷲掴みにする。

 あぁぁぁぁッ!

 グッと握りこむと、それをはね返す弾力の強さが、ボクを興奮させた。もう何度もそれを確認するように……、実際はそれが気持ちよくて、堪らなくて、何度も揉んでしまう。

 彼女は恥ずかしそうに頭を下げ、その不埒なふるまいに耐えている。ふり切ることもできるはずだけれど、ボクのするがままにさせている。ボクはそんな彼女に気づきつつも、その手を止めることができない。

 でも、徐々にアルティは腰がひけていき、そのせいで互いのバランスが崩れ、二人で倒れこむようにベッドに横になった。

 覆いかぶさる形となり、改めて彼女のことを見下ろす。潤んだ瞳……。真っ赤な顔をしていることでも分かる通り、ボクの前で裸でいることが、恥ずかしくて仕方ないのだ。先ほど重ねた唇も、今は潤っているようにみえるけれど、揉まれるのを耐えるため、唇を噛んでいたせいかもしれない。

 色白だけれど、鍛え上げられ、引き締まった体……。ぎゅっと絞ったからこそ、お肉がそこに集中し、あふれ出てきたような大きな胸……。その先端にある薄いピンクの突起……。

 どれもが魅力的で、うっすらとした灯りも、まるでグラビア撮影であるかのように幻想的だ。

 ボクはまるで夢の中にいるようなふわふわとした気持ちで、その突起へと口を寄せていった。


 唇でその先端をこするようにする。次に舌を伸ばして、周りから転がすようにして舐めてみる。そして咥えた。

 あぁ……。唇が、舌が、そこにふれる口全体が歓喜に充ちている……。

 幼少期の記憶? ――きっとボクに、それはない。虐待する両親がボクにそうしたとは思えない。でも生物として、本能として、そこを咥えることは至上の歓び、そう実感した。

 少し吸ってみる。勿論、何もでてこないけれど、彼女の口からは小さく「あ……」と言葉が漏れた。

 もっとそれを愉しみたいけれど、すでにボクの突出したところは大きくなり、爆発しそうだ。

 でも、やり方が分からない。彼女を下から覗きこむようにする。初めてみた……。そのスジに指を這わせ、上からすーっと滑らせる。

 彼女も「ひゃッ!」と驚いたように飛び起き、上半身を起こすと慌てて手でそこを隠そうとする。

「こ、ここです」

 彼女は自分でそこを開くようにすると、ボクを導くように手を添えてくれた。

 ボクもそのサポートで、一気に突き立てた。

 しかしアルティは痛かったのだろう。グッと背中を反らせ、手はシーツをギュッと握りしめた。

 ボクもきつく、締まりのあるそこに強引に捻じりこんだため、結構痛かった。でもつながった……。彼女と一体になれたことの歓びが痛みを凌駕して、気持ちを高揚させていた。

 このまま動かなくても……。ボクの脈動と彼女のそれが重なり、生命がそこで一つに結ばれていることに、ボクは満足していた。


 止まっているボクに、アルティも「大丈夫ですか?」と気遣ってくれる。彼女の方が痛いはずだ。その心遣いが嬉しかったし、何より彼女はボクに子種を求めていると思いだした。

「動く……よ」

 ボクも恐る恐る腰を引いて、前へと押しだす。締まりがきつく、彼女の体まで一緒に動いてしまう。彼女は自分の体が動かないよう自らヘッドボードをにぎり、ボクの動きをサポートしてくれる。

 でも、互いにぎこちなくて、リズムがうまくとれない。でも、ボクはふと見下ろした先で、彼女のふくらみがたゆん、たゆんと揺れるのをみて、脳内にぎゅーっと血が集まってくるのを感じ、それが頭頂に達すると、その瞬間に全身がジンと痺れるのを感じた。

 それと同時に、何かがボクのそれから、彼女へと流れこんでいった。

「あ……」

 彼女もそれに気づいたのだろう。目を開けると、自分の下腹部を見つめる。そしてその瞳からは、大粒の涙がこぼれ落ちていた。

「大丈夫?」

 ボクが心配になって、そう尋ねる。すると、彼女は小さく首を横にふった。

「私の中に、いっぱいだしてくれて嬉しいんです」

 彼女は無理して笑みを浮かべている。それは、ボクが下手くそだから。きっと彼女は満足していない。それでも、そういうことでボクを気遣ってくれているのだ。それが分かるから、またつらい。

「も、もう一回行くよ」

「は……はいッ!」

 ボクはもう一度動きだす。彼女を、それこそ溢れるぐらいにいっぱいしてあげるために……。そうして夜が更けていった。


 ふと目覚めると、マンションの一室だった。

 夢……? 艶夢というものがあって、エッチな夢をそう呼ぶそうだ。脱衣所からそんな、変な夢の世界に……。

 でもこの手には、あの大きな胸の感触がのこっている。何度も、何度もアルティに出し入れしたボクのそこは、ひりつくような痛みを感じている。

 起き上がって、全裸であることに気づく。いつも寝るときはパジャマなのに……。そう思いつつ、ベッドから立ち上がろうとしたとき、いきなりバンッと寝室のドアが開いた。

 そこには脱衣所に入ってきた、あの女性が立っていた。

「起きましたか……。食事ができました。食べますか?」

 冷たくそう言い放たれて、ボクは前を隠すのも忘れ、ただ頷く。女性が立ち去ったことで、初めて全裸であることを思い出し、慌てて引きだしからパジャマをとりだすと、ダイニングに向かう。

 テーブルには豪勢な食事が並んでいた。自炊をはじめたばかりで、朝なんて軽くしか摂っていなかったけれど、ディナーばりの豪華さだ。

 このとき初めて、顔立ちのはっきりとした、件の女性がメイド服を着ていることに気づく。

「た、食べていいの?」

「勿論食べて下さい。あなたのために作ったのですから」

 女性の真意をはかりかね、ボクも椅子にすわる。朝からお肉はきついけれど、それが健康にはいい、と聞いたこともある。まさか毒は入っていないよね……と考えていたら、それより強い毒が飛んできた。

「精をつけて、また体力、筋力をつけて、エッチが上手くなってもらわねば困りますから」


 ボクも愕然とする。「見ていたの……?」

「私はあなたの鎧です。見ていたし、むしろ感じていました。何ですか、あのエッチは⁉ 最低です! アルティオーラさんが可哀想です!」

 ヒリつく股間以上にその言葉は痛い……。自分だって分かっている。下手くそ過ぎたって……。

「勇者の父親になるために、そんなことではいけません」

「そうそう、それだよ、ボクが勇者の父親って、どういうこと?」

「あなたは勇者の父親になる資質がある……と神託がでたのです。それで私が、この世界にお迎えにうかがいました」

 神託……? 何をもってボクが勇者の父親になれるというのか? これほど曖昧な理由もない。

「じゃあ、アルティとボクが出会ったのも……?」

「彼女は勇者の母親候補です。でも、誰とそうすれば勇者が生まれるのか? それは分かりません。だから私がアナタを異世界へと導き、その身を守り、勇者が生まれるまでサポートします」

 ボクは異世界に行っても、冒険したり、スローライフをしたり……ではなく、勇者を生むための子づくりをするのか……。

 がっかりするやら、嬉しいやら……。

「でも、あんなエッチでは、これから紹介する女性もきっと不満足でしょう。なので私がトレーニングします!」

 そういって仁王立ちするグランシールに、ボクも怯えるしかなかった。

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