第48話 三人のほのぼのとした日常・・・①
「さっ、今回も遠慮せずにさ、上がってよ」
俺があかりに提案して数時間後、俺たち三人は昨日と同じく俺の家へと集まっている。
そして今日の俺は、あかりを歓迎するかのようにそうつぶやく。
「う、うん…お邪魔するね」
しかし、そんな俺の態度とは逆に、今回のあかりの態度は、よりよそよそしかった昨日よりも遠慮がちである。
俺が自分のアパートの扉を開けても、あかりはなかなか中へと入ろうとはしない。
「ん、どうした?気にせず入りなよ」
そんなあかりの態度に、俺はそうつぶやくのだが、
「それじゃ、遠慮なく。お邪魔しま~す」
「なぁあゆみ。お前は逆に遠慮というのを覚えてくれね~かな」
逆に気にせず部屋に入ってくるのはあゆみの方であり、いつもどおり家主の俺を差し置いて、ずかずか俺の部屋へと入っていく。
「まぁこんな奴もいるくらいだし。ほんと気にしなくていいから」
「う、うん。それは今実感したよ」
そして、そんなあかりの行動に従い、俺とあかりも中へと入る。
あかりの行動が、空気を和ませてくれたようである。
そして話は変わり、現在の時刻はもう夜七時。
昨日俺の家に来た時刻とほぼ変わらず、昨日の様子を思い出させるかのようである。
しかし昨日とは違い、今日はこんな時間になるほどの時間がたったというような実感はなく、自分の中で時差のような違和感を感じている。
それもそのはず、俺はそんな違和感を実感しながらじっと俺の部屋に荷物を置いているあゆみを見ながら小さくボソッと、
「俺とあゆみだけで二時間ぐらい引きこもってたことになるんだもんな。そんな無の時間を過ごしてたら、違和感を感じて当然か」
そんなことをつぶやく。
あの時の俺たちは、何を意地張ってトイレやロッカーなんかに引きこもってしまったのだろうか。
今になってやっとそのばかばかしさに気づく。
そしてそんな違和感を感じていたのは俺だけではなく、
「えっ、もう晩御飯時なの!?なんか昨日より時間が過ぎるの早くない?私今日ほとんど勉強してないんだけど!」
あゆみも壁に掛けられている時計を見ながらそんなことをつぶやいている。
「そんなことを言ってても、腹は減ってるだろ?とりあえず飯の準備するぞ。お前も手伝え」
俺は体内時計のずれに驚いているあゆみにそう言いながら、自分の冷蔵庫を漁り始める。
「あ~そういえば、昨日ので作っておいた惣菜全部食べちゃったんだった。スーパーで食材買ってこないとな」
しかし、俺は昨日の時点でおかずを食べきってしまったことを思い出し、冷蔵庫を閉め買い物へ出かけようと玄関の方へと向かう。
しかし、そんな俺の歩みに対し、皮肉にもあゆみが止めてくる。
「え~、今から食材買いに行くの~。それだと食べられるの二時間後くらいじゃない。私、お腹減っちゃったんですけど~」
「お前は時間が過ぎるのが早いと感じるのか遅いと感じるのかどっちなんだよ。早いというのなら、少しぐらい我慢しろよ」
「私の方が遅く感じても腹時計の方は正確なんです~。ねぇ、さすがにこの時間から買い出しってなったら食べ始めるの九時過ぎちゃうよ。考え直そうよ」
そして続けてあゆみはそう言って俺の行動を止めてくる。
まぁ確かに、俺としても九時ごろまでご飯をお預けするのは多少抵抗はあり、自分の中でさまざまな案が錯綜する。
「まぁお前の意見も一理あるか…。よし、じゃあ今日は外で弁当でも買ってくるか」
結局、俺は楽をしたいという欲に負け、最終的に近くにある弁当屋に行くことを提案する。
「おっ、いいねいいね~。私唐揚げ弁当がいい~」
そして、あゆみも俺のそんな提案に喜んで賛同しているようである。
「即断だな~お前は。それじゃあ、あかりさんもそれでいい?」
「あ、うん、うちは全然何でもいいよ。正直、楽しそうに話してる二人と食べたら何でもおいしくなりそうだし」
「ん?まぁそれはそれは誉め言葉として受け取っておくか」
俺はあかりが少し失礼なこと考えているように感じたが、とりあえず今回はスルーしておくことにする。
「じゃあ、時間も時間だし、さっさと弁当買いに行くとしますか」
そして俺は二人に向かってそう言うと、財布だけをもってさっそく弁当屋へと向かうのだった。
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