第43話 新たな学校生活・・・⑤


俺とあかりは晩御飯を食べ終わると、あかりの家へと向かうため廊下へと出ていく。


「それじゃああゆみ、あかりさん送ってくるから待っててくれ。なんなら食べ終わった食器なんかを洗ってくれてもかまわないぞ」

「はいはい、そんな遠回しに言わなくったってそれくらいはしときますよ~」


俺はあゆみにそう言い残すと、俺とあかりは玄関の扉を開けて外へと出る。


「うわっ、もう外真っ暗じゃね~か」


そして外に出た俺の第一声はそんなつぶやきである。

俺たちが学校を出た七時頃は、まだ夕日も出ており明るさを保っていたが、さすがに九時前ともなると、さすがにあたりは暗い空とともに、すっかり夜の雰囲気を醸し出していた。


「な、なぁ、もうこんなに暗くなってるけど、本当に大丈夫なのか?ほんとに親とか心配したりしてないのか?」


俺は夜の外を見て、思わずあかりにもう一度そう聞いてしまう。

あかり本人は大丈夫とは言ってはいたが、今まであかりがスマホなどで連絡を取っていたようなそぶりは見られなかった。

確かによそでは塾などで今より帰りが遅くなってしまう人もいるだろうが、だからといって大した理由もなく好き好んでこんな時間まで外を出歩くことを良しとする親はいないだろう。


「だから~大丈夫って言ってるじゃん。それよりもごめんね、送ってもらっちゃって。どうせなら別にこのまま一人で帰れるよ」


しかしあかりはそんな俺の心配をよそに、逆に一人で帰ると言い出す始末である。


「何言ってるんだよ、さすがに一人は危ないだろう。俺がいるんだし気にすんなって」

「う~ん、まぁわかったよ。ごめんね、ありがとう」


俺たちはそんな会話をしながらアパートの階段を降り、道路へと出る。


「それで、あかりさんの家はどこにあるんだ?」

「あ、えっと、ここからだとたぶん十分くらいだと思うよ。うちが先導するね」

「りょ~かい」


そして俺はあかりの誘導に従い、いつも通る道とは異なる道を進んでいく。

今年の四月にこの町に引っ越してきた俺にとって、あかりの先導する道はほぼ初めて通る道であり、この数十分の道のりも俺からすれば少し長く感じてしまう。


「こんな道もあったんだな~」


昔からここに住んでいるあかりだからなのか、俺たちは初めての人だとあまり通らないような、細い道や電灯のあまりない道など様々な道を通るため、その度俺は思わずそんなことをつぶやいてしまう。


「あっ、着いた。ここだここだ」


そしてそんな散歩を始めて十分ほど経ったとき、急にあかりはそう言いながら自分の住む家を指さした。


「お、着いたか……え~っと、あの、あそこに住んでるの?」

「そうだよ~」


あかりが指さした先は俺とあゆみの住むアパートより少し大きなアパート。

アパート自体は小さくなく、普通だとは思うのだが、窓の間隔からしてその一部屋一部屋が大きいとは思えない。

あのアパートより小さな部屋に住んでいる俺が言うのもなんだが、少し狭くはないかと思わせるような大きさだった。


「へぇ~、えっと、あの部屋に家族で住んでるの?一人暮らしじゃなくて?」

「あはは…やっぱり狭いよね~。でも一応家族で住んでるんだ」


そして俺はあかりの家が予想以上に小さかったため、思わずそんな失礼な質問をしてしまうが、あかりも自分の家の大きさを分かっているのか、慣れた感じで苦笑いをしながらそう返す。


「あっ、そういうことじゃ……えっと、ごめん」

「いいよいいよ自分でも分かってることだし。それじゃあね、送ってくれてありがとう。また明日ね」


そしてあかりは俺にそうつぶやくと、そのまま自分の住むアパートへと走っていった。


「あ~あ、ちょっと悪いことしちゃったな」


そんなあかりの対応に対し、俺はあかりの背中を見ながらそう後悔する。

しかし、俺としては目の前の事実を、そう簡単には受け入れがたい。

目の前にうつるアパートの大きさは、正直家族が住めるなんて大きさではない、せいぜい二人暮らしがいいところだろう。

あかりさんが何人暮らしなのかは知らないが、家族であのアパートでの生活は窮屈だといえる。

このあたりの家賃は高いのだろうか?

そして俺としてはあかりは家へと帰ったため、自分も家へと戻ろうとしたのだが、


「ん?あれ?」


急に俺は、自分の目の前にうつる光景に対し、思わず口を開け、目を細めながらその様子を見つめ始める。


「そ、そうだよな。あってるよな」


そして次に俺はそうつぶやきながら、そのままこの光景をじっと見つめ続ける。


「………」


目の前の光景に対し、しばらくの間俺はじっとしたまま無言の時間が流れてしまい、最終的にその状態が数十秒続いてしまう。


「……とりあえず、帰るか…」


そしてひとまず冷静になった俺は、最後にそう言って訝しげな表情をしながら、家へと帰ることにする。


「おかえり~、思ったより早かったわね。家近かったの?」


そして十数分後、家と帰った俺は、ちょうど廊下のキッチンで食器を洗い終えていたあゆみのそんな言葉に対し、何の反応もせずそのまま奥の部屋へと入っていく。

現在俺は、自分の頭の中でいろんな想像をしてしまっている最中なのだ。


「ん?どうしたの?なんか深刻そうな顔しちゃってさ?」


そして俺に続いて奥の部屋へと入ったあゆみはそんな俺の様子をくみ取ったのか、そんなことを聞いてくる。


「いや…まぁ大したことっちゃ大したことなんだけど」

「えっ、どういうこと?外で何かあったの?」


そんな俺の何ともはっきりしないそんな対応に、あゆみは急に焦った様子になり俺にそう問い詰めてくる。

いまだに俺は先ほどの光景に対し、想像を膨らませている最中なのだが、あゆみにもこの事実を知ってもらおうと、俺は先ほど見た光景をあゆみに話すのだった。


「あかりさんの家、こんな時間なのに部屋の窓に電気が一切ついてなかったんだけど……一人暮らしじゃなかったよな?」

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