第40話 新たな学校生活・・・②
「はぁ~やってらんね~」
空き教室の窓から夕日に照らされる中、俺は大きくため息をつきながらそう答える。
「いや~ほんとごめんね~うちまで勉強教えてもらっちゃって」
「いや、あかりさんは別にいいんだよ…」
そんな俺のため息に先に反応したのはあかりの方であり、申し訳なさそうな表情をしてくれているが、あいにく文句を言いたいのはあかりの方ではない。
「ってか、あかりさんめっちゃ勉強できるじゃん。俺ほとんど教えるところなんてなかったよ」
そして今回、あかりの勉強を見てみて、あかりはこの学校の中では勉強ができる方であることが分かった。
ちゃんと復習もしているらしく、俺の教えるところはほとんどなく、ちょっとしたところをちょこちょこ教えるくらい。
正直、あかりのような人なら、何人いようが教えることに苦労することはないだろう。
ある一人の人間を教えることに比べたら…
「あ~あ、それに引き換え…」
そして俺はここまで言うと、俺が本当に文句を言いたかった方をじ~っと見つめる。
「えっ、何?私?」
しかし、当の本人は自分は予想外だという風にそう答える。
「私?じゃね~よ!お前だよお前。ふざけるんじゃね~よ!前教えたところを何度も聞いてきやがって!つい最近の中間テストの時の頭はどうしたんだよ!」
俺はあゆみのそんな発言に思いっきりツッコミを入れる。
どうやらあゆみは中間テストに出てきた内容をほとんど忘れてしまっているらしい。
せっかく四番という結果を残せたにもかかわらず、これでは意味がない。
やはり、短期間での勉強は頭に残らないものらしい。
しかしこのままだと、教えたことを何度も教えなければならないという、負のルートへと入ってしまう。
「あゆみ、これから俺が一回でも教えたところは、一人で勉強しろ!これじゃあキリがないからな」
「え~!いいじゃん何度も教えてくれたってさ」
「ふざけるんじゃねぇ、何度も教える側にもなってみろ。めんどくさくてしょうがない!」
流石に俺としては、ずっとこのままというわけにはいかないため、俺はあゆみにそうガツンと言ってやる。
「めんどくさいって何よ!勉強教えてくれるって約束してくれたんだから、ちゃんと教えてよ!」
「ものには限度ってもんがあるんだよ。さすがにやってられるか!」
「まぁまぁ二人とも、もう学校でなきゃいけない時間だから、とりあえずこのくらいにして、帰る準備をしようよ」
このままだと俺たちは、ずっと言い合いになってしまいそうであったため、ありがたいことにあかりの方から俺たちを止めてくれる。
やはり仲介役がいるというのはいいものだ。
そして俺たち二人もあかりの一言で冷静さを取り戻し、お互い帰る準備を済ませるとそのまま下校を始める。
「んー!疲れた~。今日は勉強するいい機会になったよ。ありがとう」
俺たちが学校を出ると、あかりは大きく背伸びをして俺たちにそうつぶやく。
「いいよいいよ隣にいる奴に比べたら、教えるのめっちゃ楽しかったからさ。これからもおいでよ」
「ねぇケンジ、隣にいる奴って誰のこと?」
「さぁ~誰のことだろうな?今俺の隣にいるのは一人しかいないはずだけどな~。分からないのかなぁ~?」
「さぁ~誰でしょうね~。まさか私なんてことはないでしょうしねぇ~」
「ね…ねぇ!二人はこれからどうするの?このまま家に帰る感じ?」
そしてまた俺の一言により、またあゆみとの言い合いになってしまいそうだったが、あかりが先にそれを察知したのか、先に間に入ってそう話題を変えてくれる。
「ん?まぁ俺はこのまま家に帰ろうかと思ったんだけど」
「そうそう、私もこのままケンジの家に行って勉強の続きでも見てもらおうと」
しかし、本当にあかりには申し訳ないのだが、またあゆみのそんな発言により、俺はまた反応してしまう。
「おい、お前、まだ勉強するつもりなのかよ。もういいだろ。今日は十分やったじゃねぇか」
「ケンジこそ、今日さんざん私に文句言ったくせにそのまま帰るわけないでしょ」
「ふざけるんじゃねぇ、俺のことなんだと思ってるんだよ!」
「まぁまぁまぁ、二人とも落ち着いて」
そして、またありがたいことに、あかりの手によりこの場は収まる。
これであかりに俺たちの言い合いを止めてもらうのは三回目。
正直普通にありがたい。
しかし、あかりとしてもこう何度も言い合いをしているところを見るのは嫌なようで…
「はぁ…ねぇいつも二人ってこんな感じなの?うちから言うのは何だけど、こんなことでいちいち言い合ってたらキリがないよ?」
「「はい、なんかほんと…すいません」」
俺たちにやさし~くそう言ってくれる。
友達になってくれたばかりだというのに…本当に申しわけない。
「…それで、じゃあ二人はこのままケンジ君の家に行く感じなのかな?」
そして俺たちの謝罪を聞いたあかりは、とりあえず納得したのか、話題を大きく変え、そんなことを聞いてくる。
「ん?まぁこのままだとそうなるだろうな」
そして俺も別に隠すようなことでもないため、正直にそう返事をすると、
「じゃあさ、うちもついて行ってもいいかな?」
そんなことを俺に聞いてきたのだった。
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