第39話 新たな学校生活・・・①
あかりと友達になった次の日、授業を終えた俺はいつも通り隣の空き教室に向かおうと自分の席で荷物をまとめ始める。
正直、テストが終わってまだ数日しか経っておらず、勉強する気も起きていないためそのまま家に帰ればいいのだが、体が空き教室に向かうようになってしまった。
まぁどちらにしろ特に何かをするわけでもないため、行かない理由もないのだ。
「ケンジく~ん」
すると、同じクラスのあかりが俺の席の前に来て俺の名前を呼んできた。
「おうおうおうあかりさんや、さすがのコミュ力ですね」
そんな行動に、俺はあゆみの顔を見るなりそう答える。
俺は放課後のあかりの様子をずっと見ていたが、同じクラスの人たちと分け隔てなく話しかけている様子しか見ていない。
このようなコミュ力があるからこそ、俺みたいな人とも友達になってくれているのだろう。
「ケンジ君はこれからどうするの?」
「まぁいつも通り隣の空き教室にでも行こうかなって思ってるけど」
「そうなんだ。ねぇうちも一緒に行ってもいいかな?」
「そりゃ構わないけど、お前部活とか入ってないのか?」
「うん、うちは入ってないんだ。でもやっぱり、みんなは何かしらの部活には入ってるらしくてさ。放課後になると私一人ぼっちになっちゃうんだ」
するとあかりは寂しそうにそう答える。
そしてその表情からしてやはり、寂しがり屋というのは本当らしい。
しかし、あれほどのコミュ力があるのだ、そこまで問題はないだろう。
「なるほどそういうことか、俺は別にいいぞ。空き教室に行ったって別にすることはないからな。まぁ適当に駄弁ろうや」
「ほんと!ありがとう。じゃあ一緒に行こう!」
あかりがそう言うと、俺はさっと荷物をまとめ、俺たち二人は隣の空き教室へと一緒に歩いていく。
そして俺は教室の扉を開けるとそこには、一足先にあゆみが席に座っていた。
「遅かったじゃない。あら、あかりさんも一緒?部活とかは大丈夫なの?」
「あ~うん、ケンジ君にも言ったんだけど、私何の部活にも入ってなくてさ、放課後は暇なんだよね~」
あかりはそんな二回目の質問に少しめんどくさそうにそう答えると、今度はあゆみがとんでもない提案をしてきた。
「あら、そうなの。じゃああかりさんもここでケンジに勉強でも見てもらえば?ケンジこう見えて勉強教えるのうまいんだから」
「ちょ!おまっ!!何言ってんだよ!!」
俺はそんなあゆみの発言に思わず声を荒げながらそう答える。
「えっ、ケンジ君って頭いいの?」
「そうそう、二週間くらい勉強を教えてもらってたんだけど、それがすごく教え方が上手なの。そのくせ自分はちゃっかり一位なんか取っちゃったりしてさ」
「おいあゆみ、余計なことを言うなって!」
その上あゆみによる、俺にとってはとんでもないカミングアウトによって俺は大声であゆみの口を遮る。
「あら、いけなかった?」
しかし当の本人であるあゆみはというと、そう言って私何か悪いことでもしたの?といった態度で、まったく悪びれるそぶりもない。
「うそ!ケンジ君。前回の中間テスト一位だったの!?」
「う、うん、まぁそうだよ」
その上、あかりも俺に向かってそう問い詰める始末である。
俺はあかりの反応に驚きつつ、戸惑いながらそう答えると、
「へぇ~すごいな~。ねぇ、私にも勉強教えてくれちゃったり、する?」
あかりは少し申し訳なさそうにしつつも、両手を合わせながらそうつぶやく。
「ま、まぁ教える奴が一人だろうが二人だろうが別にかまわないんだが…」
俺はこのような状況に戸惑いながらそう答えると、顔をあゆみの方へと向け、
「おい、まさかもう勉強始めるつもりなのか?期末テストまでまだ何週間もあるんだが…」
あゆみにそんな確認を行う。
そう、あかりに勉強を教えることよりも、問題はここだった。
俺としては中間テストが終わってまだ数日しか経っていないため、まだゆっくりと勉強以外の高校生活を楽しみたいのだ。
しかし、そんな俺の願いは叶わず…
「え、もう十分休んだじゃない、もういいでしょ。それにまた直前に追い込みをかけるの嫌なんだけど」
あゆみはそんなことを言い出してきた。
「おいおい、マジかよ…」
「はいはい、そんなこと言わないで、私もそこまでガチで勉強するつもりもないんだから、さっさと勉強始めましょうよ」
そしてあゆみはそう言うと、カバンの中から勉強道具を取り出してきた。
またこの教室は、勉強部屋へと変わってしまうのだろうか。
しかし、この流れからもう逃げることは不可能だろう。
「もう~、勘弁してくれよ~!」
俺はこのようの状況にため息をつきながらそうつぶやく。
俺のテスト終わりの休みはもう、終わってしまったのだ。
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