第37話 ケンジ決死の行動・・・②
「は、はぁーーー!!!」
そして、そんな俺のお願いに最初にそう言って反応してきたのは、もともとこの行動を起こすきっかけとなったあゆみであった。
「お願いだみんな。こんなかわいそうな俺にぜひ救いの手を差し伸べてくれ!!」
そして俺は、加えてそうお願いすると、なぜか反応しているのはあゆみのみであり、
まわりはなぜか、ポカーンとした表情しか浮かべていない。
そして唯一反応したあゆみは、そのまま俺の方へと歩いてきたかと思うと、俺の目の前に立ち、
「なんだよ、今俺は重要な時なんだ、一切の邪魔はしないでくれ…って痛ったー!!」
ただ無言で俺の頭に強めチョップをたたき込んできた。
「何すんだよ!!今俺は人生最大の挑戦をしているんだぞ!応援するのならともかく、邪魔されるような覚えは…って痛い痛い!!引っ張らないで!!」
その上、あゆみは俺の首根っこをつかみ、無言のまま俺を教室の外へと連れ出そうとしてくる。
それに対し俺も全力の抵抗をするのだが、なぜかあゆみはそれ以上のバカ力で俺の行動を制してくる。
そして俺は成す術もなく、あゆみに廊下へと出されると、あゆみは教室全体に向かって、
「失礼しました、そのまま休み時間に入ってください」
そう言ってお辞儀をし、教室の扉を閉める。
そしてそのまま俺は隣の空き教室へと連れて行かれ、あゆみによるお説教が始まるのだった。
「ちょっとケンジ!!どうしてあんなことしたの!?」
「あんなことってなんだよ!俺はな、昨日言ってたあゆみのアドバイスをただただ実行したまでに過ぎないんだぞ」
「私はただ自分から同級生一人一人に話しかけていくのがいいって言っただけよ!なんで昨日の話の結果があれなのよ!?」
あゆみは俺の行動の意図が分からないのか、そんなことを聞いてくる。
そのため、俺も自分の真意を伝えようと、ありのままの意見をあゆみにぶつける。
「いいか、俺にそんなコミュ力が必要になりそうなこと、そう何度も実行できるわけないんだよ。だから今回一回限りで終わるようにと思ってあんなことしたのに…」
「何言ってるの!?さっきのことをする勇気があるなら、それくらいのこと簡単にできるでしょうに…」
しかしあゆみはそう言って深くため息をつく始末である。
「いいや、できないね。お前はまだ俺の性格というのを分かっていないようだな。こうなりゃとことん言わせてもらおう!」
あゆみの反応を見た俺はそう宣言し、そのまま俺とあゆみによる口論は、授業が始まるまで続くのだった。
「―――――今日、だ~れも俺に話しかけてこなかったな。せっかく朝あんなことしたのに…とんだ無駄足だったぜ」
そしてその日の放課後、俺はいつも通り空き教室にいると、ため息をつきながらそうつぶやいていた。
「当たり前でしょ、誰が朝にあんなことをした人のところにわざわざ話しかけに行く人がいるのよ」
そして席に座っている俺の隣で、同じく座っているあゆみがそうつぶやく。
「なんだよ、あれのどこがいけなかったって言うんだよ?」
俺は自分の良くなかったことが分からず、不貞腐れながらあゆみに向かってそう聞くと、
「何言ってるの…全部に決まってるじゃない」
「全部!?」
あゆみは俺の質問に、答えは決まっているかのようにキリっとそう言い返してくる。
「朝の行動がどれだけ影響を及ぼしたのか分かってるの?少なくともケンジは朝っぱらからクラスのみんなの前であんなことをお願いしてくる頭のおかしい人だって思ってるわよ」
「頭のおかしい!?どこが?」
「言われるまでもないでしょ!あなた今まで周りで友達作るためにあんなふうにお願いしてるところを見たことあるの?」
「いや、まぁそれは一度もないけどさ…」
「そう、分かったでしょ。それが答えよ」
「うん…まぁ…そうか」
あゆみはそう言ってくるが、俺は何とも納得しきることができず、何とも言えないような表情をしていると、
「もう、いい加減にしてよ。文句を言いたいのはむしろこっちの方なんだから!」
今度はあゆみの方が、俺に文句を言い始めてきた。
「なんだよあゆみ、急にどうした?」
「全然急じゃないわよ。あなたね、朝にあんなことしたせいで私にどれだけ迷惑がかかってると思ってるのよ。今日の間の休み時間の間だけでどれだけクラスの人にひそひそされたことか。私があなたの行動を止めたせいで、いつも話しかけてくれる人から変な目で見られるようになっちゃったのよ。どうしてくれるのよ!」
あゆみは俺の予想以上に怒り出し、俺にそう言って詰め寄ってくる。
そして俺としても、ここまであゆみに迷惑をかけているとは思わず、少し申し訳なくなってしまう。
「そ、そうか、それはほんとに申し訳ない。ここまであゆみを困らせる結果になっているなんて思ってもみなかった。そこは反省するよ」
俺は態度を変え、あゆみに精一杯の謝罪をすると、
「まぁ、分かればいいのよ。どうせ私も一緒に遊ぶような友達もいないわけだし。そこまで変化という変化はなかったから別にいいわよ」
あゆみも怒りもおさまったのか、そう言って俺のフォローをしてくれた。
「はぁ~、でも結局友達作りは失敗したわけだし、これからどうしよう」
「言っておくけど、少なくとも同じクラスの人とは友達になれる可能性はなくなったでしょうね。隣のクラスの人にでも話しかけに行ったら?」
とりあえず俺たちは今回のことはお互い水に流し、これからの俺のすべき行動について考えることにし、案を出し合うことにする。
するとそんな中、
「コンコンコン…」
空き教室で誰も用事のないはずのこの教室の扉から、ノックをする音が響き渡る。
今まで、俺たちの教室の隣とは言っても、誰もここに入ってくるなんてことはなかったため、俺たち以外のノック音はとても珍しい出来事だと言える。
「えっ、あ、どっ、どうぞ」
そして、急なノックにビビってしまった俺は、とても戸惑いながら、たった一言そう返事をする。
あゆみもそんなことは珍しいからか、大して俺と反応に大差はなく、状況を飲み込めていないらしい。
そして俺の返事に反応するように、教室の扉が開かれると、
「あっ、いたいた。確かケンジ君だったっけ?」
そこには、長くきれいな金髪に目が行ってしまうような、かわいい女の子が立っていた。
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