第29話 運命のテスト返却!!・・・①


あゆみとのデートがあった2日後の朝、俺とあゆみは当然学校があるわけで、俺はいつも通り学校に間に合うよう、8時前には家の玄関の扉を開ける。

そして、アパートの階段を降りると、


「あれ、まだ来てねぇのか?」


いつもはアパートの入り口にいるはずのあゆみが、今日はいないことを確認する。


そう、実を言うと俺とあゆみが隣同士であると分かってから、テスト後でも俺たち二人は一緒に登下校をしている。

まぁ、一応俺たちは付き合っているわけだし、この状況で逆に別々に登下校されては俺としても悲しいわけで…

よって、登校の際はあゆみが俺より早く玄関を出てアパートの入り口の前で待っているのが定番となっていたのだ。


「あれ~まだ出てねぇのか。俺もギリギリに出ているんだから、俺より遅いのは普通にやばいぞ」


こんな状況を不思議に思った俺はあたりを見回しながらそんなことをつぶやいていると、


「タン…タン…タン……」


上からとてもゆっくり階段を下りる足音が聞こえてくる。


「ケンジ~~」


そして降りてきたその人は、うなだれた様子を見せると、俺の姿を見るなりゆ~っくり俺の名をつぶやいてくる。


「なんだよあゆみ、そのテンションは。どうした、嫌なことでもあったのか?」

「違うよ~嫌なことはこれからあるんだよ~」

「これから?なんだ、今日の日直はお前だったか?」

「そんな小さなことなわけないじゃん!テスト返しだよ、テスト返し!」


足音の正体であるあゆみはそんなことをつぶやくと、より一層うなだれた様子を見せる。

確かに、先週テストを終えた今、返ってくるなら来週である今日からなのは間違いないだろう。

しかし俺から見ればどちらにしろ、うなだれる意味が分からない。


「いいじゃね~か。それのどこがいけないんだよ?」

「何言ってんの?今日の結果次第では、私の人生が変わるんだよ?こんなテンションになっても当然じゃん」

「お前こそ何言ってんだよ。結果はテストを受けた時点で決まってるじゃね~か。今の俺たちでどうこうできる問題じゃないだろ」

「それはそうだけどさ…でも、もし返ってくるテストがよくなかったらと思うと……」

「は?そんなわけないだろ、いいに決まってるじゃん」


すると、俺はあゆみの不安そうな表情を見て、思わずきっぱりとそうつぶやいた。


「え?」

「え?」


あゆみは俺の言葉に?を浮かべてはいるが、俺としては逆になんで悪いだなんて思っているのだと言いたい。


「さぁさぁそんなことはいいから、早く学校行くぞ。もう8時になりそうじゃね~か。テストよりまず遅刻を心配しろ」

「ちょ、待ってよケンジ~」


そして自分の腕時計を確認した俺は、あゆみのことは放っておいて、さっさと学校へと向かっていく。


そんな経緯を経たことにより、またギリギリという状態のなか、学校へと到着した俺たちは、多少息を切らしたまま教室へと入っていく。


「はい、それでは時間になったので、SHRをはじめます……」


そして入ってすぐ、八時二十分になるチャイムが鳴ると、もともと教壇に立っていた先生が、そうつぶやいて今日の学校の始まりを告げる。


「え~、おそらく今日にはそれぞれの教科のテストが返ってくると思いますが……」


そして先ほどのあゆみとの言い合いの時と同じようにテストの話題を、今回は先生の方から始める。


「……」


そしてその時、俺はあゆみの方をちらっと見ると、あゆみははたから見ても分かるくらいどんよりとした空気を放っている。


(おいおい、どんだけ不安なんだよ……)


あゆみの表情に俺はそんなことを考えていると、SHRはあっという間に終わってしまい、みんなは次の授業の準備を始める。

一時間目の授業は数学、あゆみが一番嫌がっていた科目だ。

一番嫌がっていたからなのか、俺はもう一度あゆみの方を見ると、先ほど以上にうなだれてしまっているあゆみを目撃する。


「あ~、これは一回自分の点数を見た方が早いか」


そんな姿を見た俺は、あゆみを元気づけるより、おそらく結果から知る方がいいと結論付けた俺は、そのままあゆみを放っておくことにする。

そして、それから数分経ち一時間目を知らせるチャイムが鳴ると、数学の先生が入ってきて、俺たちの予想通りのことがはじまる。


「は~い、採点終わったからテスト返すぞ~」


先生のそんな発言により、今度は今までなんともなさそうだったクラスのみんなまでもが急に様々な喜怒哀楽を見せ始める。

やはり、テスト返却というのは大きなイベントのようだ。

そして出席番号順に呼ばれていく俺たちは、採点されたテストの結果を続々と教壇の前で受け取っていく。


「うん、まぁまぁだな…」


そんなみんなに合わせてテストを受け取った俺はそうつぶやきながら自分の席へと帰っていく。

ちなみに結果はというと、俺の点数は九十二点。

高いと言えば高いのだろうが、高すぎだろ!!と叫ぶほどのレベルでもないので、俺は何でもないような表情を浮かべ、席に座っている。

まぁどちらにせよ俺のテストは別にどうでもいい。

今回においては俺よりあゆみの方だ。

よって俺は点数を確認すると、すぐさまあゆみの方に目をやり、あゆみの第一リアクションを注目する。


そして先生の口からあゆみの名前が呼ばれると、あゆみは先生からテストを受け取り、自分の結果を確認する。


「ん?あれ?」


しかしあゆみはというと、自分の点数を見ても、大したリアクションを取ることもなくほぼ真顔のまま席に座っている。


「え~、これじゃあよかったのか悪かったのか分からんな~」


外見からはあゆみの点数が分からなかった俺は、そのまま数学のテストの解説を黙々と聞き、その授業は終わりを迎えてしまう。

何とも言えないもやもやとした時間を過ごした俺は、そのあとの休憩時間ただただ机で黄昏ていると、


「ねぇケンジ……」


あゆみがゆっくりと俺の方に話しかけてくる。


「おう、来たか。それで、結果はどうだったんだ?」


流石にここまでくると、点数がよくなかったのではと思ってしまっていた俺は少し焦りながらあゆみにそう尋ねる。

しかし次の瞬間、あゆみは驚愕といったような表情を受かべ、こうつぶやいた。


「きゅ、九十点だったんだけど!!」














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